27話
夢小説設定
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昼間だった時間がいつしか夜へと変わり。
ホーエンハイムさんの話もそろそろ終わってるだろうか、なんて考えながら薬作りをやめたサヤが焚き火に当たりながらぼんやり考えていた。
もうすぐだ。
もうすぐで全てが終わる。
全てが終わった時、いったい私はどうなっているのだろう。生きてるかな?さすがに死にはしないか。一応ホムンクルスだし。
『早く会いたいな…』
…スカー。
今どこにいるのだろう?
すぐ近くまで来ているのかな。もうどのくらい会ってないんだろう。
気づけばそんなことばかり考えていて。
我ながら女々しい女だと思う。
シンではリンのことは政略結婚の相手だったけどお互い大切に思いやれたらいいな、とは思っていた。
でも今のこの気持ちはまるで違う。
足がふわふわして、心がドキドキする。
でもそれが心地よくて。
そんな妄想に浸っていた時だった。
『…なにか用か。』
「“俺”じゃなくて“こいつ”が、だがな」
暗闇から現れたのはリンこと“グリード”だった。
エドと一緒にホーエンハイムさんの話を聞いてたんじゃなかったのか。
やっぱりこのグリードはどうも苦手だ。
一緒に居たくなくて、すぐさま立ち上がり去ろうとするサヤ。
「おい、まてまて」
『お前に用があっても私には無い。失せろ。』
相変わらずの口調でグリードを邪険にする。
早足で去るサヤの後を、余裕で付いてくるグリード。それがまた腹が立って。
歩き出したはいいものの、行く先など全く考えず歩いた結果目と鼻の先は森。
「いい加減待てっつってんだろ」
『!…、はなせ』
これ以上先に進むのは危険と感じたグリードはサヤの腕を掴んで止めた。
ぐっと握られた腕を振りほどこうとするも離れなくて。まともにグリードの顔すら見えないサヤは諦め、俯いて大人しくなった。
「感謝しろよ。わざわざ“こいつ”と交代してやるんだからな」
『しなくていい!一生そのままでいろ、』
サヤの言葉を最後まで聞かなかったのか、グリードだった気配がガラリと変わって懐かしいリンのものになった。
あまりの懐かしさに思わず涙か出そうになった。でもやっぱり顔は見ることが出来なくて。
「顔…」
『…!』
「顔を、見せてくれないカ?」
訛りの取れない言葉。
少し痛いくらいだった腕を掴む力が緩む。
ゆっくりと顔を上げた。
再会してから今、ようやくお互いの顔を見た。昔の面影はあるものの大人になったとつくづく思った。
『リン…』
「元気そうでなによりダ…」
『……。』
気まづさからなのか、緊張からなのか。会話が続かない。
けど、リンを目の前にして以前ほど憎いだとか、殺したいとか思わなくなった自分に戸惑いを隠せない。
『(不思議…。あれほど憎かったのに…)』
「会えてよかっタ。ずっと探してたんダ。」
『…、なんのために?』
「…謝りたかっタ。約束守れなかった事。言い訳はしなイ。あの時俺に力がなかったからお前を守ることが出来なかっタ…。」
『……。』
それは遠い昔の約束。
その約束が今も互いを縛り付け、苦しめている。
お前の事は一生俺が守る、とリンが約束してくれたのだ。
私もそれを心から信じた。
…だから、一族が殺され私一人が追放される時、助けてと叫んだのにリンは私から目を逸らしたのだ。
『…辛かった。助けに来てくれると信じていたから余計に苦しかった…。』
「……。」
『憎かった…。全て消えて無くなれと願う程に…。』
「…すまなかっタ…。」
『……。』
ほんとうは分かっていた。
あの時サヤを助けようとすればヤオ家の者たちにも少なからず害が及ぶことも。
それではマオ家の二の舞になってしまうし、嵌めた者達の思うツボだ。
頭ではそう分かっていても心がそれを受け入れられなかった。
許さなかった。
憎いと叫んでいた。シンなど滅んでしまえばいい、と。
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