27話
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スラムに着き、事情を説明して滞在させてもらう。
中央の情報を集めつつ、“約束の日”とやらを息を潜めて静かに待つ。
「サヤは薬学の知識を持ってるんだね」
『シンにいた時、私の一族の得意分野だったんです。母が錬丹術と一緒に教えてくれました。』
北のスラム・アスベックにいた時のようにサヤは薬の調合をしてスラムの人達の手助けをして過ごしていた。
今回はマルコーさんの指示がない分、段取りが少したどたどしい。
ホーエンハイムさんが思い出すように言った。
「薬学に秀でた一族か…、たしかマオ家が医学に詳しいと聞いたことがある。」
『!、ホーエンハイムさんはシンの一族に詳しいんですか?』
そういえばシンに伝わる“西の賢者”の正体は実はホーエンハイムさんだということをつい最近知ったばかり。
ならシンの一族に詳しくても不思議ではない。
「詳しいといってもシンにいたのはもう60年以上も前の話だけどね。」
『たしかにマオ家は医学や薬学に秀でた一族でした。皇帝陛下直属の宮廷医師を務めた者もいたといいます。…ですが今はもうマオ族を名乗る者は誰もいません。』
「いない…?」
いない、という言葉の意味が何を指すのか。ホーエンハイムには直ぐに理解できなかった。
遠くを見つめるようなサヤの表情を見て、まさかと想像する。
それはまるで遠い過去を見るような視線。決して色褪せることのない、心に焼き付いた恐怖。
「滅んだ…のか、」
『滅ぼされたんです。』
誰に、なんて言わなくてもわかる。
マオ族の存在を疎ましく思う者達。同じ国の他の一族の者の手によってサヤの一族は滅ぼされた。
『…よくある話でしょう?シンでは。』
「……。」
本人がケロリと言ってしまうものだから、どう反応すればいいのか。
「つらかったね…。」
『…別に。…ただ、その過去があるおかげで今こうして私はここにいる。…案外嫌いじゃないんです。この国での生活も…。』
やりたいこともあるし、と言った彼女の顔は清々しかった。嫌いじゃない、といったその言葉に嘘偽りはないようで。
少し安心するホーエンハイムだった。
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