24話
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「メイ。」
「はイ?」
「おまえはどのルートからこの国に入った?」
脈絡のないスカーからの質問であったが、メイはすんなりとユースウェル炭鉱から入ったと答えた。
ユースウェル炭鉱はエドとアルの故郷リゼンブールよりさらに東の果て、終わりの街とも言われている最東端の街だ。
「ユースウェルか…」
そう呟いたスカー。
T字路に差し掛かった時、突然スカーがエンヴィーを閉じ込めているビンをメイに差し出した。
「これを持って国に帰れ」
「……エ…。」
「ちょっと旦那!?」
突然の申し出にメイは驚く。
「不老不死には程遠いが殺しても殺しても死なない人造人間の成れの果てだ。」
これで一族が助かるかもしれん。とスカー。
しかしメイは今帰ることに抵抗があるのか返事を渋った。
「でも私が帰ったラ…、錬丹術ハ…!」
「そうだよ!せっかく研究書の解読が進んでどうやら錬丹術が必要とわかってきたのに….」
ある意味今ここにメイがいる事は奇跡か、偶然か。
この国をひっくり返そうとしている奴らに対抗する術が錬丹術だとわかった今。1人でも多く術師が必要なのだ。
メイが帰れば錬丹術の使い手はサヤ一人だけになる。
しかしぐずる彼女にスカーが珍しく喝を入れた。
「他人の国にかまってる場合か」
「…!」
「そんな半端な覚悟でこの国に来たのか?もし権力争いに負けたら、おまえに命運を託した者達に"よその国のゴタゴタにかまっていて助けられなかった"と言い訳するのか?」
スカーの説得にメイは何も言えなかった。
改めて痛感する。たしかに今、この国はピンチに陥っている。しかし自分の一族の存続にも危機が迫っているのだ。
こうしている間にも国の一族がどうなっていることか。この国に来てからもうずいぶん経つ。
行くなら今しかない。
この先はもっと帰りづらくなるだろう。そう考えてのタイミングなのだろうか。
「ここから東に行けばユースウェルに近い。」
『メイ。』
「姉様…」
「行け。この国のことはこの国の人間でなんとかする」
「…ありがとウ、ございましタ…!」
決心が付いたのか、涙を堪え深々と頭を下げるメイ。
錬丹術理解出来なかったけど教えてくれてありがとう、とアルも別れの言葉を告げる。
そんな時、メイはふとスカーと視線が合った。瞬間、昨夜のことを思い出す。
"本人に直接聞いてみるんだな"
…言うなら今しかない。
「サヤ姉様!」
『?どうしたメイ』
意を決して。
このチャンスを逃せば、もう二度とサヤには会えない。そんな気さえした。
「あノ、わ、私と一緒にシンへ帰りませんカ!?」
『…!メイ…』
大きく目をつぶって、もはや叫ぶような声で言い切った。
まさかの言葉にサヤもすぐには返事を返せず。
しかしメイもめげずに続きを話す。
「サヤ姉様にこうして無事に会えテ、すごく嬉しかったでス!」
『……。』
「昔の様にまた一緒に過ごしたいんでス。姉様のことは私の一族が必ずお守りしまス!だかラ…!」
『メイ』
はイ!とついちからの入った声を出してしまう。
もういろいろと必死で。
今自分が何を言ったのかも覚えてないくらいで。
そんな時、ようやくサヤが静かに口を開いた。
『ありがとうメイ。私のこと、覚えていてくれただけでなく、こうして会いに来てくれて嬉しかった。もう充分だ。』
「姉様…」
『メイの気持ちはよく分かった。…だが、一緒にシンへ帰ることは出来ない。』
当たって砕けてしまった。
そんな思いがメイの中を過ぎる。
やはり共に帰ることは叶わなかった。
「どうしてもダメですカ?」
『シンに帰った私がどんな扱いを受けるかわからない。良きにせよ悪きにせよお前の一族に負担を掛けてしまうのが明白だ。』
「そんなこト…!」
『無きにせよ、私を守る余裕があるのなら一人でも多く一族の者を守って欲しい。…私はそう思うよ。』
「姉様…」
サヤの言うことは最もだ。
シンにて彼女の一族がどういう扱いをされているのか。
誤解が解けているとも限らない。
サヤをかくまえば、さらにメイの一族を窮地に追い込みかねないのだ。
『ありがとう、メイ。そう思ってくれただけで私は嬉しいよ』
「姉様…。また会えますカ?」
メイの縋るような思い。
サヤは微笑んで答えた。
『あぁ、必ず。』
そういった彼女をメイは思いっきり抱きついたあと、名残惜しそうに一人一行を離れ国への帰路を進むのであった───。
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第25話