24話
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確かにあの時、エンヴィーを殺してしまいたいと本気で思った。
ヒューズさんの仇を打ちたい。その思いが頭いっぱいに溢れてきて。
気づけば引き金を引く寸前だった。
思い出せばあの時もこんな感じであった。シンを追放されて命からがら商人の集まるクセルクセス遺跡へたどり着いた時だ。
水と食料を分けて貰いようやく命を繋いだとひと心地着いた途端、湧き上がるのは憎しみ。
憎悪、怒り、哀しみ。
あぁ、自分はこの世でたった1人になってしまった。どうやってこの先生きていけばいい?そもそも生きている意味があるのだろうか。
…その問に誰も答えてはくれなかった。
身体中がからっぽになったようだ。そこに見える景色もまるで頭に入ってこない。
このままでは生きていても死んでいても同じだ。
だから、からっぽの心を怒りで埋めた。からっぽのままじゃ生きていけないから。なんでもいい、生きていくための力になるのなら。
『…忘れない。シンに復讐を』
あの時も今も変わらないのに、この胸を締め付ける思いはなんなのだろう。復讐を果たしてしまえば、自分が自分じゃなくなるような気がして。
あぁ、そうか。ウィンリィだ。
自分と同じ年頃の子が、仇を前にして堪え忍んだからだ。
私よりもはるかに力の弱いはずのウィンリィが堪えたんだ。
それを見てなんて自分は弱いんだろう。だんだん虚しくなってきた。
同時に強くなりたいとも思った。身体だけじゃなく、心も。
そのためにも1度頭を冷やしたかった。すべてゼロにして1からやり直したい。このままじゃきっとまた同じことの繰り返しな気がするから。自分だけじゃなく他の誰かも傷つけてしまいそうで怖い。
スカーには救われてばかりな気がする。生きる意味を探せ、と言われた時も、そして今回も。
ゆらゆらと身体が揺れている中で、そんなことをぼんやりと考えていた。
気づけばサヤはスカーに抱えられて移動していた。
大人しく、というよりもそんな元気もなく腕の中に収まるサヤ。無駄に冷やしすぎた頭が発熱し思考がつたない状態。
サクサクと雪を踏みしめる音が耳に残った。
『…ありがとう…』
「…なにがだ。」
寝たと思っていた彼女から言葉が出た。
あれから口を開かなくなったので眠ったのかと思っていたのだ。
『いろいろと。』
「気にするな。」
言いたいことはたくさんある。
なのに言葉がまったく出てこなくて。
それが熱のせいなのか、元来の自分の性格なのか。
『…あの時どうして、止めた?』
「……」
それはスカーが仇を打とうとするサヤを止めた時のこと。
その問の答えは間が空いた。
スカー自身も無意識なことだったようで。
「…己れにもわからん。」
『……。』
「ただお前のような子供が復讐などと、畜生の道に落ちるのは詮無いことだと思った。」
サヤの様な子供が復讐の道など歩むべきではない。
己れと同じ道を歩んではいけない。
戻れるものなら戻してやりたい。そう思った。
「無意識だったが、止めたことに後悔していない。」
『そっか…。』
私はまだ復讐の道とやらに落ちてはいないのか。
同じだと思った。スカーと自分が同じ復讐者であると。
『私、変われるかな…』
「……。」
ぽつりと呟かれた言葉。
スカーは静かに聞くだけで。
でも、すでに変わったとスカーは思う。口にはしないが。
「変わりたいのか?」
『……、変わりたい。』
強くありたい。
胸を張って歩けるような、そんな人に。
「もうすでにお前は変わっている」
『…え?』
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