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短文集【最天編】


紙をめくる音が聞こえる。
僕は今、デートチケットを使い天海くんと二人揃って図書室で本を読んでいた。
あの膨大な数の本の中からそれぞれ読みたい本を探して読む。
ただそれだけ。それだけなのに心地がいい。
ミステリー小説を読んでいた僕は顔を上げ天海くんの方を様子見る。
僕と同じ様にこの時間を楽しんで、心地よいと感じていれば嬉しいのだけれど。
冒険奇譚の漫画を読んでいる彼は物語の中で繰り広げられる展開を
楽しそうに目を輝かせて眺めていた。
これでもガン見してるつもりではあるけどその僕の視線を気にしていないぐらい
彼はその物語に夢中だ。
安心とちょっと嫉妬。

待て、なんだ、嫉妬って。
相手は男だぞ。
なんだか気恥ずかしくなって視線を本に戻そうとした。
戻そうとしたんだ。でも、それは止められた。
視線に気がついた天海くんがこっちを見ている。
どうしよう。
じっと天海くんを見ていたことがバレてしまった。
彼が気分を害してしまったら、だなんて思ってしまう。
そんな僕の気持ちとは裏腹に天海くんはくすり、と笑って

「こういうの、いいっすね。」

と一言だけ言って漫画に視線を落とした。
どきりと、きゅんと、胸が跳ねてときめく音がした。
僕は、天海くんのことが好きなのかもしれない。
そう思うぐらいいつのまにか僕は彼に惹かれていた。
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