文豪とアルケミスト

開発 (だざだん) R-18


「ふ、はぁ…っ!」
太宰の舌が口内を荒らしていく。
ゆっくりと舐めとるように舌が這ったと思えば、自分の舌を絡めるとるように擦り合わせて来る。
ぞくぞくするような感覚に身体の震えが止まらない。
もう限界だと太宰の肩を押せばつぅ、と銀の糸が伸びて千切れた。
「はぁ…はぁ…」
「ははっ、気持ちよさそうだな、檀。」
汗で湿ったのだろうか生暖かい手が頬に触れる。
「だ、ざい、もっと…」
涙で濡れきってかすんだ視界でねだれば後頭部を掴まれもう一度唇を合わせた。
「ん、んん、ふ……」
太宰の舌が口内で暴れるほどぞわりぞわりと身体が震える。
(ぁ、これ、まずいかもしれない…)
したがあつくておもい。射精を促されるみたいな感覚が襲ってくる。
「ふぁ、だ、ざ、」
イきそうと伝えようと息継ぎの合間に名前を呼ぶ。
声に気付いただろう太宰は目を細めた表情で一段と深く口づけてきた。
「んん、くは、」
「ふ、」
舌をぱくりと喰われるように甘噛みされる。
「ぁ、ひゃ、め…!んあ…っ!」
そのままちゅうと舌を吸われると快楽に耐えられなくなって太宰の肩を咄嗟に強く握ると果ててしまった。
「はっ、だん…!?」
俺の異常に気付いた太宰は口は離してくれた。
「はぁ、はぁ、あ…だざぃ…」
びくびくとイった感覚が抜けなくて震える身体を太宰に預ける。
「…もしかして、イった?」
太宰に涙目で頷けばしたり顔で
「口内開発、成功しちゃったみたいだなぁ?」
と囁かれた。






となり きただん


「檀、檀、ね。」
聞き覚えのある名字を転がすように呟く。
何の因果だろうか、実家の隣に住んでいた家族の孫に転生して会うことができた。
本人につつくように聞けば白状したように「はい、その檀ですね…」と眉を下げて言われた。
少しばかり意地の悪い聞き方をしてしまったかもしれないが、珍しく浮かれていたということにして許してほしい。

せっかくだから仲を深めてみることにした。単に一緒に出掛けようと誘ったのだ。
檀くんと外へ出たのはいいものの、行き先なんてあまり考えてはいなかった。とりあえず店が並ぶ通りを歩く。
「なにか興味のあるものは?」
「そう、ですね。調理器具とか?」
「ふぅん…そういえば君は料理が得意らしいね。」
「まぁ、はい。」
「今度、作っておくれよ。」
「えっ」
隣で歩く彼が驚いた顔でこちらを向く。そんなに驚かれることだっただろうか。
「なんだい。なにかおかしいことでも言ったかな?」
「い、いえ…」
今度は目をそらされる。
ほのかに彼の耳が赤い気がして少し口元が緩む。
存外僕は彼のことを気に入っているらしい。
「…何か食べたいものはありますか。」
照れてすねたようなぶっきらぼうな言い方に愛らしさを感じる。
「温かいものが食べたいね。君と一緒に。」
それに返すように一言そう言い、適当な店に彼を連れ込んだ。

出かけた日から数日たった後、檀くんは約束通り料理をふるまってくれた。
彼にとって温かいものと言われて咄嗟に浮かんだのは鍋だったらしい。
「きっとあの子たちとよく食べているからそうなったのだろう」と言うと彼は照れたように笑いながら「そうかもしれないですね。」と返された。
その笑顔を見てチクリと胸が痛む。
…あぁ、ここまで君のことを好いてしまったなんて。
僕をこんなふうにさせたんだ、責任をとってもらおうかな。
出汁の染みた白菜を飲み下すように食べながらこれからのことを考えた。

君の隣はあの赤い子のものだけではないのだよと必ず分からせて見せよう。






無防備 きただん


薄紫がかった髪のまあるい頭を見つけた。
頭のそばではタバコの香りのする煙が緩やかに立ち上っている。
中庭のベンチで優雅にタバコを燻らせて俺のことなんて全く気付いていないような素振り。
実際、まだ気づいてはいないんだと思う。
珍しく無防備なその姿を驚かせてみたくて音をたてないように後ろから忍び寄った。
名を呼んで後ろからわっと抱きしめようと企みを巡らせて真後ろに立つ。
「白秋さ、んっ!?」
名を呼んだところまではよかった、のに気づけば俺はぐいっと襟を引っ張られ口づけをしていた。
咄嗟に彼の肩を掴むと襟が離されてぷは、っと息ができるようになった。
「はぁ、はぁ、は、くしゅう、さ、ん…!?」
「ふふ、残念だったね。」
息を整えながら白秋さんを見つめると彼はしたり顔をこちらに向けながらタバコに口をつけていた。
「…ずるい、ずるいですよ…」
撃沈するように彼の肩口に顔を埋める。するとぽふりぽふりと頭を撫でられる感触がした。
「僕を驚かそうだなんてまだまだ早いよ。」
「そんな…」
悔しさと相手に敵わないという気持ちが募っていく。
無理やりにでもやり返したくてどうにか考える。
「……」
顔を上げてするりと白秋さんのタバコをを持つ手を触る。
「なんだね?」
「…俺より、タバコばっかりでずるいぞ。隆吉さん。」
耳元でそう囁いて離れる。
「あいてっ!」
一瞬遅れて俺を捕まえようとした白秋さんの手は誤ってばちんっと音を立てて首を叩いた。
「ははっ!」
しめしめと笑うとタバコをベンチの手すりで潰し彼は立ち上がった。
あ、やばいかもしれない。
「ふぅん、そんなことを言って誘うのならそれ相応の覚悟を持っているとみなしてもいいんだね。」
わざわざベンチを迂回してこちらへ近づいてくる。
思わず後ずさると逃がさないと言わんばかりに服を掴まれた。
「ひっ!」
そのまま引き寄せられ白秋さんの綺麗な顔が近づく。
「明日は僕のベッドから出られないと思いたまえ。」
艶やかな意味を持って美しく微笑む彼の顔を見て俺は大人しく頷くしかなかった。
すまない、司書。明日の助手仕事は休むことになりそうだ…






龍が憎い (だざだん前提)きただん


再会した時、隣に住んでいた可愛いくて幼い弟分は知らない男の嫁になっていた。
「春夫先生からこのシマを管理するよう仰せつかりました。太宰です。これからお隣同士よろしくお願いします。」
「嫁の一雄です。」
赤い髪の男が頭を下げて続いて青い髪の男が頭を下げる。
「そう、よろしくね。」
返事をするように声をかければ2人は同時に顔を上げた。
仲のいいことだ。
「一雄くん、久しぶりだね。元気にしているようで何よりだよ。」
そう優しく声をかけてみると一雄くんはビクリと気まづそうに表情を歪めた。
「えっ、知り合いだったんですか。」
太宰くんが驚いた様子で交互にこちらと一雄くんを見る
「まぁ、ちょっとね。……よかったら、後で久しぶりに2人っきりで話をしよう。いいかい?」
少し下手に出るように太宰くんに聞けば、話すだけなら…と許してくれた。

「ヤクザの世界は薄汚くて厳しいって、だから入ってきてはいけないって何度も教えたよね。」
太宰くんが出払って2人きりになった空間で一雄くんにぶつけるように声をかける。
「どうして僕との約束が守れなかったの。」
「…治が好きなんです。アイツがヤクザでも構わないくらい好きなんです。」
その言葉を聞いて持っている煙草をへし折りそうになった。
本当に君はバカな子だよ。
「……何年一緒にいるんだい。」
「…もう大分長いこと一緒にいます。」
「背中。」
「え?」
「背中見せて。どうせ彫っているんだろう?」
「……はい。」
一雄くんの返事で会話が止まり彼は後ろを向いた。
ゆっくりと服を脱ぐ姿に情欲が見えて虚しさが心を埋める。僕が今までしてきたのは何だったのかと。

するりと最後のインナーシャツが脱げて自分の目に飛び込んできたものは背中を覆うように大きく彫られた青い龍だった。
「治と対になってるんです。アイツ、背中に赤い龍彫ってるんで。」
嬉しそうに幸せそうにそう説明する彼の声。
背中の彫り物の邪魔にならないように自分の肩を抱く彼の姿。
その全部に腹が立った。
彼ではなく、あの赤い男に。
あの幼く純粋だったあの子をこんなふうに落としきってしまったあの赤い男を今すぐにでも殺してしまいたいほど憎んだ。






ふける (しゅだん) R-18


「俺の料理、美味しいって言ってくれたアンタのことが好きなんだ。」
だから、付き合ってほしいと自分が仕えている若旦那に告白された。
どうせ遊びだ。冗談だ。すぐ飽きる。
そう思って軽い気持ちでいいですよ、と返した。

あれから気づけば二週間が経っていた。
いまだ手は出されておらず、普段の生活も若旦那に出掛けるたびに振り回される、そんな相変わらずの生活を送っていた。
「そういえば、今日の夜回りは秋声さんか。」
「そうですよ。」
寝る前、他愛もない話をしながら風呂に入って濡れた青い髪の若旦那を部屋へ見送る。
「まぁ、明日は出かける予定もないし昼から出てきたらいい。家のこと手伝ってくれ。」
「承知いたしました。」
「それじゃあお休み。」
「おやすみなさい。」
若旦那が部屋に入ったのを確認すると襖をきっちり閉めてその場を立ち去った。

夜回りをする時間になって自室から順番回っていく。
今のところみんなゆっくりと寝ているようだ。
夜も静かで夜盗が襲ってくるような気配もない。安心だ。
寝ている者たちの邪魔をしないように足音を極力立てず屋敷の廊下を歩く。
ふと、若旦那の部屋に差し掛かったあたりで微かに声が聞こえた。
「ぁ、ぁ、」
部屋に近づくたびに音に近づいていく。
まるで、女のような嬌声。
「ン、ふ…っ」
若旦那の部屋の前についてしまえばもうほとんどまる聞こえに近かった。
恐る恐る扉に耳を近づければ鼻にかかる喘ぎ声とちゅくりと水音が聞こえた。
若旦那は今、女を抱いている。
その事実に気付いて、胸の奥がずきりと鳴った。
目の前の襖の向こうに若旦那と女がいる。それだけのことがこんなにも苦しくてつらいだなんて。
襖から離れようとして微妙に開いた隙間を見つけた。
ちょうど部屋の中が覗けるような隙間。
ただ、どんな女を抱いているか知りたい、そう思った。
音をたてないように部屋の中を覗く。
足は一人分しかなかった。
(あれ…)
不思議に思って足元からゆっくり膝、太ももへ視線を滑らせると若旦那は自分の魔羅を擦りながらなにかを尻の中へ出し入れしている。あれは、もしかすると梁型なのか…?
「あ、!しゅぅ、せぃ…!」
ずちゅり、と響く水音とともに尻の中へ梁型を入れると若旦那の足はびくりと大きくはねた。
顔が見たくなって下半身から腹、胸、首、顔へ視線を滑らせる。
若旦那は僕の名前を呼びながらとろけるような表情で感じ入っていた。
「は、しゅ、せぃさ、すき、っあぁ…!」
ぐちぐちと魔羅を擦る音が聞こえる。
声とその姿に気づけば腰が重たくなって自分の魔羅が勃起をし始めていた。
「はぁ、はぁ、ん、」
興奮で息遣いまで荒くなる。若旦那に聞こえないように口を手で押さえた。
「ぁ、だめ、ィく…っ!」
その声と共にぱちゅんっと音を立てて梁型を押し込み目の前の彼は果てていた。
腹に白濁とした液体が飛び散り、口元は涎でてらてらと艶めいて、瞳にとろけるようにおぼろげでいた。
その様子に目が離せなくてずっと見つめていたら若旦那と目が合った。
「ぁ…」
見ていたのがばれてしまった…!
急いで立ち上がって、襖を閉める。
とす、とす、と畳を踏む音が聞こえて、鉢合わせないように急ぎ足で音をたてないように自室へ戻った。

途中の夜周りも投げ出して敷いていた布団に飛び込む。
あれだけ焦って戻ってきたというのにいまだ熱の高まりが収まらないでいた。
布団の上に座りなおして浴衣を退けて褌をずらすとそそり立つように怒張した魔羅が出てくる。
さっきのあの様子を思い返しながら魔羅を擦るように触っていく。
「は、かずおくん、」
『しゅ、せぃ、さ…っ!あぁ…っ!』
さっきの欲に濡れた艶やかな声が頭の中を反響して先走りが先端から零れた。
ぐち、と零れた先走りを絡めるようにしごき続ければまるで彼と夜伽をしているような気分になっていく。
僕はそのまま仕事をさぼり、彼の嬌声や痴態にのめりこむように自慰にふける夜を過ごした。






ひどいやつ (しがだん)


コトコトグツグツ小鍋の中身が煮える音が小気味よく鳴りだす。
ゆっくりと鍋の中身をおたまでまわせば味噌の匂いが辺りに強く漂っていく。
「味噌汁か。」
「うわっ!」
「ふっ、」
声が聞こえて隣を向けば志賀さんがいた。
驚いた俺ににやにやと笑っているのがなんだかムカつく。
「いい匂いじゃねぇか、味見もらってもいいか?」
「…一回だけなら」
「おう。」
小皿を取り出して一口おたまで掬った味噌汁を注いだ。
「さ、どうぞ。」
「おう、いただくぜ。」
味噌汁の入った小皿を渡せば、志賀さんはこくりと喉を鳴らして味噌汁を飲み干す。
「ん、流石だな。」
「だろ。」
少し自信ありげに胸を張れば目を細めるように微笑まれた。

俺は意外とこの時間が好きなようだ。
空腹を促すような料理の匂い。
志賀さんと料理について話をする。
静かな時間。

別の日、また彼は俺が料理を作っているときに現れて味見をねだる。
一回だけだぞ、と言って味見をさせる。
そして料理の話を気が済むまで。
「…俺、アンタと過ごすこの時間、好きだなぁ。」
気づけば口をついてそんな言葉が出てきた。
こんなこと言うつもりがなかったから驚いて口を手で押さえる。
「本当か?」
口を押える手を掴まれる。
「あ、」
そのまま手を引きはがされ顎を掴まれると顔を志賀さんの方へ向かされた。
「…お前、人をたらすの上手いな。ひどいやつだよ。」
「え、それどういう、」
「期待しちまうだろって話。」
そのまま顔を近づいて…

「いった!!」
がぶりと鼻を噛まれた。
「なにするんだよ!?」
「あはははっ!期待したか?」
ぱっと志賀さんの手が離れる。
噛まれた鼻をさすりながら笑う彼を睨み付けた。
「期待って、」
「次、そんな可愛いこと言ったらこっち食ってやるからな。」
するりと軽く唇をなぞられた。
一連の行動に振り回されて顔が熱くなってくる。
きっと、自分の顔は真っ赤になっているかもしれない。
「じゃあまたな。」
そんな状態の俺を見て、満足そうに口元を釣り上げた志賀さんは何も動けずにいる俺を置いて食堂から出て行った。

「…ひどいやつはアンタの方だよ。ばか。」






恋人時間 (きただん)


「あ゛ぁぁぁ……」
部屋の主は机に伏せいりながら器用に吸殻を灰皿へ押しつぶしていた。
「詰まっているようだね?カステラはどうだい?」
「ありがとうございます…」
ふすりと柔らかいカステラに爪楊枝を刺して食べさせるように檀くんの顔に近づける。
「白秋さん…」
「さ、食べるのだよ。」
「…はい…」
こちらを向いた顔にずいっとカステラを近づけると彼は大人しくひとくちひとくち食べていく。
小動物のようで愛らしい。
「おいしいですね、このカステラ。」
「ふふ、僕のお気に入りだからね。当たり前なのだよ。」
そう言いながらもう一切れ同じように食べさせれば彼の顔に赤みが増して血色が少しばかりよくなったような気がする。

「…それの締め切りいつまでなんだい?」
それぞれ自分でカステラを食べながら彼が書いていた原稿に目を向ける。
「あぁ…あと一週間ぐらいですかね…」
「……ふぅん、そうかい。」
ただの館内誌風情が僕の恋人の時間を取ろうだなんてね。
(…おや、)
視線を檀くんに戻せば彼の口元に食べかすが付いていた。
「檀くん、顔をお上げ。」
「え?なんですか?」
こちらを向いた彼の顔。
彼の口元にちゅ、とリップ音を立てて食べかすを食べる。
「ついてたよ。ふふ、可愛らしいことをするじゃないか。」
そう言いながら驚いて固まった檀くんの頬を軽く撫ぜれば彼は真っ赤なリンゴのように顔を赤らめた。
彼のそんな様子を見てしまってむらっときてしまう。
するりと頬から首筋、鎖骨、胸へなぞっていく。
「ぁ、白秋さん…だめです…」
「原稿ができていないから?」
こくりとゆっくりとした動作で頷かれる。
「ただの館内誌だろう?もう一週間待ってもらえばいい。」
「でも…」
「本当に嫌なら押しのければいいだろう?そうすれば今回は諦めるよ。」
「っ……」
「満更でもないんだね、一雄くん。」
耳元で欲を流し込むように囁けば、とろけたような表情を晒した彼に口づけられた。


4/6ページ
スキ