さよならは2度と言わないで~心の扉~番外編 関東大会決勝その時
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今日は大切な事が二つあります
もし一つしか叶わないなら
間違いなく選ぶ・・・一方を
裏切り者になっても・・・
7月13日
今日この日は私達、青学テニス部にとっても立海大付属テニス部にとっても特別な日。
関東大会・・決勝戦・・・
そして・・・大切な人 の・・手術日
対戦校は・・・常勝立海大付属中
無論予想通り・・・
ある意味 古巣
ある意味 母校
避けて通ることは関東に来たら出来ないと思っていた。
うんん。青学テニス部に入った時から勝ち進むなら避けて通れない道。
幸か不幸か学校同士のユニホームを今日は見る事はない。
あなたは違う所で戦っている。
だから私もあなたに恥じないように戦った。
結果的に私達は試合に勝つことができた。
それだけでなく団体戦も青学が勝利した。
決めたのは、リョーマくん対さな兄のシングル1.
リョーマくんが買って青学が、関東大会優勝という目標も成し遂げた。
表彰式の時横を見ると立海大は、さな兄以外いなかった。
行先は分かっている。
私も早く行きたい。
行ったからって何か出来るなんて事はないけど・・・
それでも行きたい。
(大石)「今日も祝勝会はタカさんの家で開いてくれる。」
(桃城)「よっしゃーー!!食うぞーーー!」
(菊丸)「桃はほどほどににゃ!」
(リョ)「そうっスね。みんなの分なくなりますよ。」
(桃城)「なんだとー?!越前も言うじゃねーかー!」
桃ちゃ先輩もリョーマくんも飽きもしないで言っている。
みんなが騒いでいる間に大石先輩を捕まえた。
「すみません。祝勝会は不参加します。」
(大石)「どうした?」
「親戚に呼ばれていて、これから行かないといけないんです。」
(大石)「ちょっと顔出す時間もないか?」
「そうしたいんですけど時間がないんで、これで失礼します。」
一礼だけして足早に歩きだした。
まだ大石先輩が何か言いたけだったけど、今日はごめんなさい。
時間が惜しいんです。
(不二)「大石、潮音どおしたの?」
(大石)「え?不二何も聞いていないのか?これから親戚の所に行くから祝勝会出られないって言っていたけど。」
(不二)「なにそれ?ボク聞いてないよ!」
(大石)「かなり急いでいたから、あとで電話してみたらどうだ?」
(不二)「そうだね。」
スマホを確認するとメッセージが入っていた。
さな兄から『無理はするな。』と簡素だけど彼らしい物だった。
これだけを見て電源を落とした。
これから行く場所には必要無い物だから。
病院に着いてから手術室のある2階に行くだけなのに、とても長く感じた。
試合前とは違う緊張感に包まれ、心臓が音を立てていた。
角を曲がれば精兄の手術室って所で、自分が着ている物を思い出した。
青学のレギュラージャージ(女子)だった。
テニスバッグはいいとしても、普段ですら制服で来なかったのに、いくら緊急時で試合後とはいえレギュラージャ-ジ は・・まずい。
そんな事を考えていると上から声がした。
(柳)「潮音がレギュラージャージで顔を出して良いか考えている確率100%」
見上げると乾先輩の幼馴染の柳さんがいた。
「えへへ。ばれてる。」
(真田)「このような時に、そんな事を気にするな!それに俺達よりも潮音がいる方が幸村も心強い。」
(仁王)「そう言うことよ!気にすんなぜよ。」
さな兄にいつもの様に半分怒られ、仁王くんに手を引かれて手術室前の椅子に座った。
青学青学 の先輩達にもかなわないけど、立海 のお兄ちゃんS'にもかなわないな。
私は元々立海大付属小に通っていた。
精兄が付属中に入学したとき私が5年生。
その時からテニス部のみなさんとはお友達で精兄同様にみんな『妹』の様にかわいがってくれる。
そのせいか青学のメンバーの中にいる時よりも落ち着く。
これは秘密だけどね。
ふと前に聞いた事のある、お祈りの言葉を思い出した。
椅子から立ち上がって、手術室の廊下に膝をついて胸の前で両手を組んでお祈りを始めた。
「天に召します、我らのお父様小さき祈りを捧げます。今苦難に立ち向かっている従兄 人をお守り下さい。アーメン。」
小声でそう呟いた。
顔を上げると手術中のランプが消えた。
みんな一斉に立ち上がってドアを見つめた。
手刃医が出来きた。
「安心してください。成功です。」
赤也くんと丸井君が抱き合って喜んで、仁王くんと柳生さんがガッチリと握手して、ジャッカルくんがガッツポーズして、柳さんとさな兄が拳と拳
を合わせていた。
私は、胸の前で両手を握りしめていた。
これ以上ないってほど息を吐いた。
それと同時に体の力まで抜けたみたいで、壁に肩をぶつけた。
(真田)「潮音、大丈夫か?」
焦った声で、さな兄が言った。
「うん。平気・・・」
笑顔で言ったつもりだったが、それは笑顔になっていなかったみたいで、さな兄の額にいつも以上に皺が深くなった。
精兄はすぐに元いた病室に戻る事が出来た。
手術室から出て来た精兄は、驚くほど穏やかな顔をしていた。
もしかしたら私の方が病人みたいな顔をしているかもしれない。
そんな事を考えながら歩きだした。
病室に全員が入ったぐらいのタイミングで精兄の意識が戻った。
思ったより早かったのでびっくりしたけど、ほっと息をついた。
(幸村)「みんな・・・」
お兄ちゃんSは何か言いたげだけど言えないと背中が語っていた。
(真田)「関東は負けたが・・手術は成功した。」
ゆっくりと全員いることを確認した。
(幸村)「あとはリハビリしだいか・・・全国には間に合わせるよ。」
(真田)「潮音も来ている。」
お兄ちゃんSは、精兄の顔が見えるようにしてくれた。
「精兄~・・ごめんね。こんな格好で・・・」
精兄は驚きで目を少し見開いた。
やっぱりこの格好のせい?
(幸村)「試合の後で疲れているのに来てくれて、ありがとう。」
答えるように手をぎゅっと握った。
「うんんん。私は平気だよ。精兄に会いたかったから。」
目を細めてうれしそうな顔をしていたから心底ほっとした。
(幸村)「少し寝る。」
(柳生)「その方が良いですね。私達はそろそろお暇しましょう。」
「私お手洗いに行ってきます。」
潮音が出て行くと、そのまま全員が行こうとしたので幸村は止めた。
(幸村)「待って。真田。」
(真田)「どうした?」
(幸村)「潮音の事を頼む。」
(真田)「うむ。安心しろ。今日はこれで帰る。」
立海メンバーはエレベーターホールで潮音を待っていたが、なかなか戻ってこないので心配していた。
(切原)「おっせなー潮音のヤツ。」
(柳生)「まあまあ女性は、時間がかかりますから、もう少し待ちましょう。」
(真田)「柳どう見る?」
(柳)「わざわざ俺に聞かなくてもいいんじゃないか?あえて言うなら弦一郎の予想している事が起きている確率99%」
重い表情を浮かべながら言った。
(真田)「潮音の事は俺が見てくるから先に帰っていてくれ。」
(丸井)「なんでだよ~。」
(切原)「そっすよ。真田副部長!」
(仁王)「ぷり。」
(真田)「すまぬが、柳あとを頼む。」
それだけ言うと、すたすた歩いて行ってしまった。
(柳)「潮音の緊急事態発生だ。行きせてやれ。」
(切原)「だったら俺達だって!」
(柳)「やめた方が良い。あの状態をこんなに大勢に見られたと知ったら潮音が悲しむぞ。」
(柳生)「女性が悲しむ行動を率先したくはないですね。」
(切原)「それは俺だってヤっす。」
(丸井)「潮音は悲しませたくない。」
(仁王)「ぴよ。」
(ジャ)「あーあ。そうだな。」
(柳)「源一郎が戻って来るまで一時間以上かかるぞ。それでも待つか?」
(切原)「最低限の事は聞きたいっス。」
全員が柳を見てうなづいたので、その場で待つことにした。
廊下を歩いていくと幸村の病室近くで潮音は倒れていた。
すでに看護士がみつけてストレッチャーが用意されていた。
(真田)「すみません。ご迷惑をかけまして。」
「ご家族の方ですか?」
(真田)「いえ。友人です。」
潮音をストレッチャーに乗せて顔が見えると
「あら、この子幸村君の従妹の陽月さんじゃない。」
この後すくに処置室入って、そのまま入院となった。
真田は重い足取りで、エレベーターホールに着くと立海メンバーいた。
(切原)「潮音は、どうなったんスっか?」
(丸井)「真田~!どうなったんだ?」
2人は鬼気迫る感じで詰め寄った。
(柳)「少し落ち着け。」
(切原)「しません。」
(丸井)「悪い。」
(真田)「ふー。潮音だが体調が悪くなり入院することになった。落ち着くまで俺は病室にいる。」
(丸井)「入院って・・なんでだまた?」
この発言に真田は、どう答えるか迷っていた。
そんな様子を見ていた柳が助け舟を出した。
(柳)「いつものか?」
(真田)「そうだ・・・」
(柳)「潮音は疲れが極度に溜まると倒れることがある。」
(真田)「今回もそういう事だ。」
(柳生)「安静にしていれば大丈夫なんですね?」
(真田)「うむ。」
(切原)「ふ~。安心した。いつもみたいに真田副部長も『たるんどる』って言わないッスね。さすが潮音には甘い。」
(丸井)「なあなあ~真田。少しで良いから会えないか?」
(真田)「眠っていて顔を見るぐらいはできるが、騒ぐなよ。」
潮音の病室はちょうど幸村の向かいにあった。
入ると酸素マスクと腕に点滴を付け眠っていた。
夕日がはいってこないのも手伝って、生きているのかと問いたくなる程、白い顔をしていた。
さっきまで着ていたジャージならオレンジが基調になっているからまだましだったが、今は病院の検査着のようなものを着ていたから、よけいに白さが強調されていた。
このメンバーでは、何度か見ている真田と柳ですら言葉を失っていた。
(切原)「・・潮音・・・潮音ーーー!!」
点滴が付いているのに、切原は潮音の体を揺すろうとした。
(ジャ)「赤也!やめろ!」
(切原)「だって・・・だって・・」
(柳生)「ちゃんと生きていますよ。この状態で揺する方が何倍も危険です。」
(柳)「冷静になれ。赤也。」
(真田)「騒ぐなと言ったろう。たわけが!!」
もう1度、潮音の顔を見てさっき真田に言った事を切原は後悔していた。
(切原)「真田副部長さっきは、すいませんでした。いつも元気な潮音しか知らなかったから、あんなこと言って。」
(真田)「失敗は誰にでもある。次に生かすのが大切だ。」
(仁王)「なぁー真田『いつもの』ってこのことか?」
今まで黙っていた仁王が口を開いた。
(真田)「あーあ。そうだ。」
(仁王)「そうか。」
勘の良い仁王だけあって、これだけである程度の事を理解していた。
そして『心とは難しくやっかいなモノぜよ』と思っていた。
潮音は目を覚ますと、見慣れない天井が見えて自分が何処にいるのか全く解っていなかった。
薄暗いが人がいる気配がしたんで、無意識に今1番いてほしい人の名前を呼んでいた。
「ふ・・じ・せん・・・・ぱ・・い?」
自分が出した声がとても掠れていてその事に驚いていると、影だった人物が近づいて来た。
(真田)「気が付いたか。」
「・・さな兄・・・ごめんなさい。」
(真田)「謝る必要はない。自分の状況は分かるか?」
「うん。発作でたおれたのね。かえ・・・れないね?この状況じゃ。」
久しぶりに酸素マスクが付いているので、すぐに帰れまいと悟ったのだ。
「青学の誰かにしらせた?」
(真田)「いや。お前が嫌がると思いしていないが、した方がいいならするぞ。」
「いい。しないで。」
(真田)「本当にいいのか?」
「心配かけるだけだから・・・」
(真田)「不二にもしなくていいのか?}
「え?不二先輩・・・」
(真田)「目を覚ました時に呼んでいたぞ。」
部員の前じゃ見せないような穏やかな顔で、真田は潮音の頭を撫でていた。
「そう・・・」
(真田)「話している場合ではなかったな看護士を呼ばねば。」
「待って・・・」
ジャージの裾をつかんで半分体を起こそうとしていた。
「このこと精兄は知っているの?」
(真田)「予想はしていた。帰り際に『潮音を頼む』といっていたからな。」
ウ・・ソ・・・
キョウ1バン シ・ン・パ・イ・カ・ケ・チャ
イ・ケ・ナ・イ・ヒ・ト・ニ
ソ・ン・ナ・オ・モ・イ・ヲ
サ・セ・テ・イ・タ・ナ・ン・テ・・・・・
胸が・・・
喉が・・・
苦しい・・・
潮音が下を向いたままだったから、真田はかなり心配していた。
その予想は的中した。
肩が大きく上下に揺れ、酸素マスクが外れかかっている口からは、乱れた息が聞こえていた。
真田は慌ててナースコールで、看護士を呼んだ。
このような時は、寝かせてしまうと起動が塞がってしまう事があるので、ベッドに座り潮音を自分の方に寄せて頭を肩で支えていた。
だが急に重さが増した。
その意味が解らない真田じゃないので、背中に一気に汗が噴き出した。
タイミングよく看護士が来たので、後を任せていったん病室を出た。
真田は幸村の病室に来ていた。
潮音ほど白い顔をしてないにしても、今日手術した人間だ。
あまり心配をかける行動はとれないが、今はどうしたら良いか真田自身も分からないでいた。
(幸村)「・・真田・・・?」
(真田)「すまない。起こしたか?」
(幸村)「起きていたよ。潮音は、落ち着いた?」
(真田)「すまない・・・・」
帽子を取って深々と真田は幸村に頭を下げた。
なぜ2度も『すまない』と言うのか意味が分からないでいた。
(幸村)「真田?ほかに何かあった?」
(真田)「一度は落ち着いたが、不用意な発言でさっき2度目の発作を起こした。」
短時間で2度も発作を起こすと、どれだけ潮音の体に負担がかかるか知っている真田なので、自分の不注意だと強く感じていた。
しかも今日は試合後だ。
相当の負担が掛かっていると。
(真田)「しばらく入院してくれると良いのだが。」
(幸村)「立海にいたら、大人しく入院してくれるだろうが、青学にいる今は無理だよ。今の潮音じゃ何も話してないと思う。きっとパートナーの不二にすら・・・・」
(真田)「だろうな。さっき青学の誰かに連絡するかと聞いたら『しないで良い』と言っていた。」
幸村は深々とため息をついて、目を閉じて頭の中で潮音の行動を予測シュミレートしていた。
(幸村)「もう一つ頼みがあるんだ。潮音を明日マンションまで送って行ってほしい。」
(真田)「頼まれるほどのことでもない。元よりそのつもりだ。では、これで帰る。」
(幸村)「苦労をかける。」
行院から出ると試合の疲れとは、また別の疲れがどっと押し寄せて来た。
その疲れは試合の疲れを上回っていた。
翌日の午前9時30分には真田は潮音の病室に着いていた。
中に入ると、すでに青学ジャージに着替えていた。
予想的中で思わず、ため息を付きたくなる程だ。
昨日とあまわり変わらない真っ白な顔。
かなりの無理を言っての退院だと一目でわかる物をだった。
(真田)「おはよう。本当に今日退院でいいのか?」
「おはよ。うん。平気・・・」
(真田)「では行くか。荷物は持つが歩けるか?」
「歩けるもん。」
そう言うが立った瞬間にバランスを崩して倒れそうになった。
慌てて真田は、腰に腕を回して支えた。
(真田)「どこが『歩ける』んだ?」
「ごめんなさい。」
(真田)「謝る必要はない。すぐに謝るのはお前の悪い癖だな。」
車いすを借りに行こかとも思ったが、1階の外来まで行く事を考えると時間もかかるので、自分が連れて行った方が早いと考えた真田は、横抱きにした。
いわいる『お姫様抱っこ』だ。
前に何度かおんぶされた事があったが、こんな風に抱き上げられる事はなかったので、潮音はかなりビックリしていた。
「さ・・さな兄~。恥ずかしいよ。」
(真田)「誰が歩けないんだ。恥ずかしいなら俺の方に顔を向けていろ。」
潮音はそのまま真田の胸に顔をくっつけるようにしていた。
言ったのは真田自身なのだが、いざされるとっ想像以上に照れて、心拍数が上がっていた。
駐車場には真田の兄がいた。
後部座席のドアを開けてもらい潮音を先に乗せたが、その時に見えた顔はすでに疲れ切っていた。
今の潮音は全くと言っていい程体力がない。
普段テニスをしてコートを走り回っているなど思えないほどに。
真田は『こんな表情をしていても当たり前か』と思いながら車に乗り込んだ。
「おはようございます。ごめんなさい。朝から。」
(真田兄)「おはよう、潮音ちゃんのためなら構わないさ。」
(真田)「お前が気にしすぎだ。」
「うん・・・でも・・潮音は・・・・みんなに迷惑かける・・・悪い‥子・・だか・・・ら・・・・」
これだけ言うと真田に寄りかかって寝てしまった。
痕が付くのでないかと思うほど深く眉間に皺を寄せてながら、潮音用に持ってきたブランケットをかけた。
これ以上青学に行かせていたら、潮音が壊れるのではないかと密かに考えていた。
もし一つしか叶わないなら
間違いなく選ぶ・・・一方を
裏切り者になっても・・・
7月13日
今日この日は私達、青学テニス部にとっても立海大付属テニス部にとっても特別な日。
関東大会・・決勝戦・・・
そして・・・大切な
対戦校は・・・常勝立海大付属中
無論予想通り・・・
ある意味 古巣
ある意味 母校
避けて通ることは関東に来たら出来ないと思っていた。
うんん。青学テニス部に入った時から勝ち進むなら避けて通れない道。
幸か不幸か学校同士のユニホームを今日は見る事はない。
あなたは違う所で戦っている。
だから私もあなたに恥じないように戦った。
結果的に私達は試合に勝つことができた。
それだけでなく団体戦も青学が勝利した。
決めたのは、リョーマくん対さな兄のシングル1.
リョーマくんが買って青学が、関東大会優勝という目標も成し遂げた。
表彰式の時横を見ると立海大は、さな兄以外いなかった。
行先は分かっている。
私も早く行きたい。
行ったからって何か出来るなんて事はないけど・・・
それでも行きたい。
(大石)「今日も祝勝会はタカさんの家で開いてくれる。」
(桃城)「よっしゃーー!!食うぞーーー!」
(菊丸)「桃はほどほどににゃ!」
(リョ)「そうっスね。みんなの分なくなりますよ。」
(桃城)「なんだとー?!越前も言うじゃねーかー!」
桃ちゃ先輩もリョーマくんも飽きもしないで言っている。
みんなが騒いでいる間に大石先輩を捕まえた。
「すみません。祝勝会は不参加します。」
(大石)「どうした?」
「親戚に呼ばれていて、これから行かないといけないんです。」
(大石)「ちょっと顔出す時間もないか?」
「そうしたいんですけど時間がないんで、これで失礼します。」
一礼だけして足早に歩きだした。
まだ大石先輩が何か言いたけだったけど、今日はごめんなさい。
時間が惜しいんです。
(不二)「大石、潮音どおしたの?」
(大石)「え?不二何も聞いていないのか?これから親戚の所に行くから祝勝会出られないって言っていたけど。」
(不二)「なにそれ?ボク聞いてないよ!」
(大石)「かなり急いでいたから、あとで電話してみたらどうだ?」
(不二)「そうだね。」
スマホを確認するとメッセージが入っていた。
さな兄から『無理はするな。』と簡素だけど彼らしい物だった。
これだけを見て電源を落とした。
これから行く場所には必要無い物だから。
病院に着いてから手術室のある2階に行くだけなのに、とても長く感じた。
試合前とは違う緊張感に包まれ、心臓が音を立てていた。
角を曲がれば精兄の手術室って所で、自分が着ている物を思い出した。
青学のレギュラージャージ(女子)だった。
テニスバッグはいいとしても、普段ですら制服で来なかったのに、いくら緊急時で試合後とはいえ
そんな事を考えていると上から声がした。
(柳)「潮音がレギュラージャージで顔を出して良いか考えている確率100%」
見上げると乾先輩の幼馴染の柳さんがいた。
「えへへ。ばれてる。」
(真田)「このような時に、そんな事を気にするな!それに俺達よりも潮音がいる方が幸村も心強い。」
(仁王)「そう言うことよ!気にすんなぜよ。」
さな兄にいつもの様に半分怒られ、仁王くんに手を引かれて手術室前の椅子に座った。
青学
私は元々立海大付属小に通っていた。
精兄が付属中に入学したとき私が5年生。
その時からテニス部のみなさんとはお友達で精兄同様にみんな『妹』の様にかわいがってくれる。
そのせいか青学のメンバーの中にいる時よりも落ち着く。
これは秘密だけどね。
ふと前に聞いた事のある、お祈りの言葉を思い出した。
椅子から立ち上がって、手術室の廊下に膝をついて胸の前で両手を組んでお祈りを始めた。
「天に召します、我らのお父様小さき祈りを捧げます。今苦難に立ち向かっている
小声でそう呟いた。
顔を上げると手術中のランプが消えた。
みんな一斉に立ち上がってドアを見つめた。
手刃医が出来きた。
「安心してください。成功です。」
赤也くんと丸井君が抱き合って喜んで、仁王くんと柳生さんがガッチリと握手して、ジャッカルくんがガッツポーズして、柳さんとさな兄が拳と拳
を合わせていた。
私は、胸の前で両手を握りしめていた。
これ以上ないってほど息を吐いた。
それと同時に体の力まで抜けたみたいで、壁に肩をぶつけた。
(真田)「潮音、大丈夫か?」
焦った声で、さな兄が言った。
「うん。平気・・・」
笑顔で言ったつもりだったが、それは笑顔になっていなかったみたいで、さな兄の額にいつも以上に皺が深くなった。
精兄はすぐに元いた病室に戻る事が出来た。
手術室から出て来た精兄は、驚くほど穏やかな顔をしていた。
もしかしたら私の方が病人みたいな顔をしているかもしれない。
そんな事を考えながら歩きだした。
病室に全員が入ったぐらいのタイミングで精兄の意識が戻った。
思ったより早かったのでびっくりしたけど、ほっと息をついた。
(幸村)「みんな・・・」
お兄ちゃんSは何か言いたげだけど言えないと背中が語っていた。
(真田)「関東は負けたが・・手術は成功した。」
ゆっくりと全員いることを確認した。
(幸村)「あとはリハビリしだいか・・・全国には間に合わせるよ。」
(真田)「潮音も来ている。」
お兄ちゃんSは、精兄の顔が見えるようにしてくれた。
「精兄~・・ごめんね。こんな格好で・・・」
精兄は驚きで目を少し見開いた。
やっぱりこの格好のせい?
(幸村)「試合の後で疲れているのに来てくれて、ありがとう。」
答えるように手をぎゅっと握った。
「うんんん。私は平気だよ。精兄に会いたかったから。」
目を細めてうれしそうな顔をしていたから心底ほっとした。
(幸村)「少し寝る。」
(柳生)「その方が良いですね。私達はそろそろお暇しましょう。」
「私お手洗いに行ってきます。」
潮音が出て行くと、そのまま全員が行こうとしたので幸村は止めた。
(幸村)「待って。真田。」
(真田)「どうした?」
(幸村)「潮音の事を頼む。」
(真田)「うむ。安心しろ。今日はこれで帰る。」
立海メンバーはエレベーターホールで潮音を待っていたが、なかなか戻ってこないので心配していた。
(切原)「おっせなー潮音のヤツ。」
(柳生)「まあまあ女性は、時間がかかりますから、もう少し待ちましょう。」
(真田)「柳どう見る?」
(柳)「わざわざ俺に聞かなくてもいいんじゃないか?あえて言うなら弦一郎の予想している事が起きている確率99%」
重い表情を浮かべながら言った。
(真田)「潮音の事は俺が見てくるから先に帰っていてくれ。」
(丸井)「なんでだよ~。」
(切原)「そっすよ。真田副部長!」
(仁王)「ぷり。」
(真田)「すまぬが、柳あとを頼む。」
それだけ言うと、すたすた歩いて行ってしまった。
(柳)「潮音の緊急事態発生だ。行きせてやれ。」
(切原)「だったら俺達だって!」
(柳)「やめた方が良い。あの状態をこんなに大勢に見られたと知ったら潮音が悲しむぞ。」
(柳生)「女性が悲しむ行動を率先したくはないですね。」
(切原)「それは俺だってヤっす。」
(丸井)「潮音は悲しませたくない。」
(仁王)「ぴよ。」
(ジャ)「あーあ。そうだな。」
(柳)「源一郎が戻って来るまで一時間以上かかるぞ。それでも待つか?」
(切原)「最低限の事は聞きたいっス。」
全員が柳を見てうなづいたので、その場で待つことにした。
廊下を歩いていくと幸村の病室近くで潮音は倒れていた。
すでに看護士がみつけてストレッチャーが用意されていた。
(真田)「すみません。ご迷惑をかけまして。」
「ご家族の方ですか?」
(真田)「いえ。友人です。」
潮音をストレッチャーに乗せて顔が見えると
「あら、この子幸村君の従妹の陽月さんじゃない。」
この後すくに処置室入って、そのまま入院となった。
真田は重い足取りで、エレベーターホールに着くと立海メンバーいた。
(切原)「潮音は、どうなったんスっか?」
(丸井)「真田~!どうなったんだ?」
2人は鬼気迫る感じで詰め寄った。
(柳)「少し落ち着け。」
(切原)「しません。」
(丸井)「悪い。」
(真田)「ふー。潮音だが体調が悪くなり入院することになった。落ち着くまで俺は病室にいる。」
(丸井)「入院って・・なんでだまた?」
この発言に真田は、どう答えるか迷っていた。
そんな様子を見ていた柳が助け舟を出した。
(柳)「いつものか?」
(真田)「そうだ・・・」
(柳)「潮音は疲れが極度に溜まると倒れることがある。」
(真田)「今回もそういう事だ。」
(柳生)「安静にしていれば大丈夫なんですね?」
(真田)「うむ。」
(切原)「ふ~。安心した。いつもみたいに真田副部長も『たるんどる』って言わないッスね。さすが潮音には甘い。」
(丸井)「なあなあ~真田。少しで良いから会えないか?」
(真田)「眠っていて顔を見るぐらいはできるが、騒ぐなよ。」
潮音の病室はちょうど幸村の向かいにあった。
入ると酸素マスクと腕に点滴を付け眠っていた。
夕日がはいってこないのも手伝って、生きているのかと問いたくなる程、白い顔をしていた。
さっきまで着ていたジャージならオレンジが基調になっているからまだましだったが、今は病院の検査着のようなものを着ていたから、よけいに白さが強調されていた。
このメンバーでは、何度か見ている真田と柳ですら言葉を失っていた。
(切原)「・・潮音・・・潮音ーーー!!」
点滴が付いているのに、切原は潮音の体を揺すろうとした。
(ジャ)「赤也!やめろ!」
(切原)「だって・・・だって・・」
(柳生)「ちゃんと生きていますよ。この状態で揺する方が何倍も危険です。」
(柳)「冷静になれ。赤也。」
(真田)「騒ぐなと言ったろう。たわけが!!」
もう1度、潮音の顔を見てさっき真田に言った事を切原は後悔していた。
(切原)「真田副部長さっきは、すいませんでした。いつも元気な潮音しか知らなかったから、あんなこと言って。」
(真田)「失敗は誰にでもある。次に生かすのが大切だ。」
(仁王)「なぁー真田『いつもの』ってこのことか?」
今まで黙っていた仁王が口を開いた。
(真田)「あーあ。そうだ。」
(仁王)「そうか。」
勘の良い仁王だけあって、これだけである程度の事を理解していた。
そして『心とは難しくやっかいなモノぜよ』と思っていた。
潮音は目を覚ますと、見慣れない天井が見えて自分が何処にいるのか全く解っていなかった。
薄暗いが人がいる気配がしたんで、無意識に今1番いてほしい人の名前を呼んでいた。
「ふ・・じ・せん・・・・ぱ・・い?」
自分が出した声がとても掠れていてその事に驚いていると、影だった人物が近づいて来た。
(真田)「気が付いたか。」
「・・さな兄・・・ごめんなさい。」
(真田)「謝る必要はない。自分の状況は分かるか?」
「うん。発作でたおれたのね。かえ・・・れないね?この状況じゃ。」
久しぶりに酸素マスクが付いているので、すぐに帰れまいと悟ったのだ。
「青学の誰かにしらせた?」
(真田)「いや。お前が嫌がると思いしていないが、した方がいいならするぞ。」
「いい。しないで。」
(真田)「本当にいいのか?」
「心配かけるだけだから・・・」
(真田)「不二にもしなくていいのか?}
「え?不二先輩・・・」
(真田)「目を覚ました時に呼んでいたぞ。」
部員の前じゃ見せないような穏やかな顔で、真田は潮音の頭を撫でていた。
「そう・・・」
(真田)「話している場合ではなかったな看護士を呼ばねば。」
「待って・・・」
ジャージの裾をつかんで半分体を起こそうとしていた。
「このこと精兄は知っているの?」
(真田)「予想はしていた。帰り際に『潮音を頼む』といっていたからな。」
ウ・・ソ・・・
キョウ1バン シ・ン・パ・イ・カ・ケ・チャ
イ・ケ・ナ・イ・ヒ・ト・ニ
ソ・ン・ナ・オ・モ・イ・ヲ
サ・セ・テ・イ・タ・ナ・ン・テ・・・・・
胸が・・・
喉が・・・
苦しい・・・
潮音が下を向いたままだったから、真田はかなり心配していた。
その予想は的中した。
肩が大きく上下に揺れ、酸素マスクが外れかかっている口からは、乱れた息が聞こえていた。
真田は慌ててナースコールで、看護士を呼んだ。
このような時は、寝かせてしまうと起動が塞がってしまう事があるので、ベッドに座り潮音を自分の方に寄せて頭を肩で支えていた。
だが急に重さが増した。
その意味が解らない真田じゃないので、背中に一気に汗が噴き出した。
タイミングよく看護士が来たので、後を任せていったん病室を出た。
真田は幸村の病室に来ていた。
潮音ほど白い顔をしてないにしても、今日手術した人間だ。
あまり心配をかける行動はとれないが、今はどうしたら良いか真田自身も分からないでいた。
(幸村)「・・真田・・・?」
(真田)「すまない。起こしたか?」
(幸村)「起きていたよ。潮音は、落ち着いた?」
(真田)「すまない・・・・」
帽子を取って深々と真田は幸村に頭を下げた。
なぜ2度も『すまない』と言うのか意味が分からないでいた。
(幸村)「真田?ほかに何かあった?」
(真田)「一度は落ち着いたが、不用意な発言でさっき2度目の発作を起こした。」
短時間で2度も発作を起こすと、どれだけ潮音の体に負担がかかるか知っている真田なので、自分の不注意だと強く感じていた。
しかも今日は試合後だ。
相当の負担が掛かっていると。
(真田)「しばらく入院してくれると良いのだが。」
(幸村)「立海にいたら、大人しく入院してくれるだろうが、青学にいる今は無理だよ。今の潮音じゃ何も話してないと思う。きっとパートナーの不二にすら・・・・」
(真田)「だろうな。さっき青学の誰かに連絡するかと聞いたら『しないで良い』と言っていた。」
幸村は深々とため息をついて、目を閉じて頭の中で潮音の行動を予測シュミレートしていた。
(幸村)「もう一つ頼みがあるんだ。潮音を明日マンションまで送って行ってほしい。」
(真田)「頼まれるほどのことでもない。元よりそのつもりだ。では、これで帰る。」
(幸村)「苦労をかける。」
行院から出ると試合の疲れとは、また別の疲れがどっと押し寄せて来た。
その疲れは試合の疲れを上回っていた。
翌日の午前9時30分には真田は潮音の病室に着いていた。
中に入ると、すでに青学ジャージに着替えていた。
予想的中で思わず、ため息を付きたくなる程だ。
昨日とあまわり変わらない真っ白な顔。
かなりの無理を言っての退院だと一目でわかる物をだった。
(真田)「おはよう。本当に今日退院でいいのか?」
「おはよ。うん。平気・・・」
(真田)「では行くか。荷物は持つが歩けるか?」
「歩けるもん。」
そう言うが立った瞬間にバランスを崩して倒れそうになった。
慌てて真田は、腰に腕を回して支えた。
(真田)「どこが『歩ける』んだ?」
「ごめんなさい。」
(真田)「謝る必要はない。すぐに謝るのはお前の悪い癖だな。」
車いすを借りに行こかとも思ったが、1階の外来まで行く事を考えると時間もかかるので、自分が連れて行った方が早いと考えた真田は、横抱きにした。
いわいる『お姫様抱っこ』だ。
前に何度かおんぶされた事があったが、こんな風に抱き上げられる事はなかったので、潮音はかなりビックリしていた。
「さ・・さな兄~。恥ずかしいよ。」
(真田)「誰が歩けないんだ。恥ずかしいなら俺の方に顔を向けていろ。」
潮音はそのまま真田の胸に顔をくっつけるようにしていた。
言ったのは真田自身なのだが、いざされるとっ想像以上に照れて、心拍数が上がっていた。
駐車場には真田の兄がいた。
後部座席のドアを開けてもらい潮音を先に乗せたが、その時に見えた顔はすでに疲れ切っていた。
今の潮音は全くと言っていい程体力がない。
普段テニスをしてコートを走り回っているなど思えないほどに。
真田は『こんな表情をしていても当たり前か』と思いながら車に乗り込んだ。
「おはようございます。ごめんなさい。朝から。」
(真田兄)「おはよう、潮音ちゃんのためなら構わないさ。」
(真田)「お前が気にしすぎだ。」
「うん・・・でも・・潮音は・・・・みんなに迷惑かける・・・悪い‥子・・だか・・・ら・・・・」
これだけ言うと真田に寄りかかって寝てしまった。
痕が付くのでないかと思うほど深く眉間に皺を寄せてながら、潮音用に持ってきたブランケットをかけた。
これ以上青学に行かせていたら、潮音が壊れるのではないかと密かに考えていた。
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