携帯の目覚ましで起きて、カーテンを開けると重い雲が広がる。
冬待っただかなの1月。
制服に着替えて鏡の前で腕を上げてみると下着が見えそうでハラハラした。
「セーラー服の難易だな・・・カーディガン着てばいいのか。」
前の制服は中高共にワンピースであった。
あっちの方がまだ機能的だったのでがないかと考えながら、朝食を取りカバンに荷物を入れ潮音は家を出た。




　学校に着いて職員室に入り担任を紹介された。
第一声は『お〜最高得点者』だった。陽気な感じた。


「少し待っててくれ。」
「はい。」
転校生紹介のお決まりが始まった。
忘れたいたが帝丹って中高共に苦手な共学。
教室では『転校生』という言葉に『かわいいですか？』とあちこちからの声にハードル上げないで下さいと祈りながらいた。


「入ってくれ。」
潮音は引戸を開けて教室に入った。
入った途端にあちこちから女子の含めて『かわいい〜』と声が上がる。

潮音の容姿は身長は平均だが、形の良い小さめの口、反対の瞳は落ちそうな程大きくて丸い琥珀色。
ライトブラウンの髪は、ウェーブのあるサイドを少しだけ残し後ろで結ばれている。

「新宮寺潮音です。」
頭を下げて顔を上げる。
だったそれだけの動作だが、何人もの男子女子が顔を赤らめた。
この時、園子は『新宮寺』に反応し、新一は、だから番号順の席だったのかと、かなり育ちが良いと感じていていた。
「席は空いている所に座ってくれ。」
「はい。」


ホームルームが終了すると共にクラスメイトに囲まれた質問攻めになった。
「アメリカはいつから。」
「2歳まで日本でその後はずっとアメリカ。」
「久しぶりの日本は。」
「春の桜が楽しみ。」
「兄弟は。」
「一人っ子よ。」
「彼氏いる。」

　この質問には今まで以上にパニックになりかけていると
「はいはい。そこまで新宮寺さん困ってるでしょ!」
「いいだろ〜知りたいんだしさ〜」
男子にとっては肝心な質問で、声を上げて入ってきたのは園子と蘭だった。
モーゼの十戒様に割れた所から顔を出した。

「新宮寺さんってもしかして新宮寺財閥の人？」
「そう。」
周りからは『育ちが違う』『園子と同じ〜？』などの声が上がる。
「でもご「家の事はそこまでにして。」

　立ち上がりながらそう叫んだ。

「ごめんなさいl。家の事はこれ以上詮索しないで。今日はこれで帰りるわ。」

　インターネットが発達している今なら『新宮寺財閥』で調べれば、概ね分かってしまうと分かってしまうと言っても『新宮寺潮音』としての嫌という感情が表に出る形になってしまった。





　席が近い事もあり新一は少し潮音の事を観察していた。
積極的に誰かと話そうとしない、無論話かけられば答える。
何日か見ていると1つの疑問が浮かんだ。
それは、決まって昼休みに教室から姿を消す。
他の教室で昼を食べる生徒も大勢いるが、転校してきて間のない潮音には、そんな人物もいない。

　ある時に後を着けてみることにした。
そうすると校庭の通称裏庭の巨木に座り、弁当を広げて食べ始めた。
『冬場だってのに物好きだな』と新一は思うと欲求も満たされたので、教室に戻ろうろすると歌声が聞こえ、もう1度潮音の方を見ると音楽の授業で混成合唱曲である、大地讃頌のソプラノパートを歌っていら。
　細いが伸びやかで透き通る様な声に驚いていた。
授業では知りえなかった潮音の歌声に少し得した気分で教室に帰って行った。


　これを境に新一はちょくちょく潮音の歌声を聞きに行っていた。
曲は日によって違い、知っている物や知らない物もあったが、どれも高音域の極だった。
教室では知り得ない表情や声に特別感を抱いていた。



　そんな日が続いていたが、いつもの様に行くが潮音の姿が見えない。
確かに教室から出て行くのは見た。
おかしいなと思いながら、いつもは踏み込まない領域まで足をすすめると、歌声と共に潮音の姿が見えた。
　ちょったした木々や葉を触りながら歩いて来るのはとても新鮮だった。
柄にもなく、天使や妖精と思う自分にしたは笑いそうになった。


　ふと視線に気がつき、木々に手を伸ばしたままの潮音と新一の視線がからんだ。
人がいると思ってなかった潮音は瞳を大きく見開いていた。
「もしかして聞いていた？」
「あぁ。綺麗な声だったんでな。」

　頬を染めながら
「ありがとう。」
新一も照れて横を向いて頭をぽりぽりとかいた。
「何かリクエストしてもいいか？」
「歌えるものなら。」
「大地讃頌歌ってくれ。」
「分かったわ。」
歌を聞いている間中、新一の胸がトクトクと鳴っていた。





　3学期というのは期間が短く直ぐにテストが来てしまう。
学生泣かせの1年の復習的な学年末テスト。
どの教科担当も『1年の総復習だ』や『高校に上がれると言って軽く考えるな』とうるさい程に言っていた。

「これでテスト終了とする。」
クラスが湧き立った。