【精神病棟】
__勾玉がひび割れる前の朝の事。
太陽の光がカーテンの隙間を通して個室で眠っている彼女に優しく差し込んだ。
貴「……zZ。」
__コンコン。ガチャッ。
医師「緋月さん、朝ですよ。」
貴「………。」
扉の開く音と、先生の声で目が覚めた…。
重い身体を、ゆっくり起こす。
医師「よく眠れましたか?」
貴「………はい…。」
医師「ごめんなさいね。今日のカウンセリングは夜からしますね。」
貴「……はい…。」
先生は、部屋のカーテンを開いた。
医師「わぁっ!今日は天気が良いですね!」
貴「…………。」
医師「折角だし朝食をとった後、一緒に外に出て散歩しましょうか?」
貴「……散歩…?」
医師「えぇ、緋月さん、ずっと外に出たそうにしてましたからね…。」
貴「…!………はい。」
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【散歩エリア】
私は、朝ご飯を食べて顔を洗った後…外に出かけた。
出かけたと言っても、病院の隣にある広い散歩エリア…。
精神病を患っている患者さんが多い為に使われている場所…。
今までは、心の落ち着きが不安定で外に出してもらえなかったけど…最近は、少しずつ落ち着きを取り戻し、更には今日は天気がよかったので、先生と外に出ることが出来た…。
医師「どうですか?こうして歩いてみて心が少しずつ落ち着いてきましたか?」
貴「……はい。」
しばらく歩いた私達は、人口で造られた小さな小川に着いた。
医師「ほら、綺麗な水が流れてますよ。」
貴「……はい。」
医師「では、緋月さん…。しばらく、ここで待っててもらえますか?」
貴「?………はい。」
先生は突然、私を一人にさせた…。
何か私に試しているような感じだったけど…。
とりあえず、私は…近くにあるベンチに座り小川を眺めていた…。
貴「……………。」
………それにしても、静かだな…。
実家に居たときとは、大違い…。
それに夜間学校だから、朝の時間に外に出かけたのは久しぶりな気がする…。
毎日カウンセリングを受けてるけど…先生は、優しく質問したり、私の返答にちゃんと答えてくれる…。
……でも………なんだかな……。
まだ、少しモヤモヤする……。
すぐ近く…私の隣に居てくれる人が居ないっていうのが……。
____カルラさん。
………あの人は、今…どうしているのかな…?
朝だから今頃、寝る準備をしているのかな…?
………って、そんなの当たり前じゃん…。
魔族は人間なんて興味ないだもん…。
助けになんて来ない……。
私は、こうして一人でいる方が良いんだよ……。
貴「………………。」
医師「緋月さん。」
貴「!」
医師「そろそろ戻りましょうか。」
貴「…はい。」
__私ハ、ズット独リ………。
…………独リダ。
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【夜】
医師「緋月さん、昨日は何時に寝ましたか?」
貴「……12時頃……。」
医師「じゃあ、心が落ち着かなくなる事はありますか?」
貴「………前よりは、マシかな…。」
医師「そうですか。」
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『まだ心に不安定があり、今後も錯乱状態にならないよう要注意!』
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医師「分かりました。では、今日のカウンセリングはここまでにしましょうね。」
貴「……ありがとうございました。」
医師「緋月さん、だいぶ落ち着いてきましたね。始めてここに来た頃とは全然違う。」
貴「…そうですか。」
医師「えぇ。さぁ、部屋まで一緒に戻りましょうね。今夜は月が綺麗だからぐっすり眠れますよ。」
貴「……はい。」
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【個室】
医師「それじゃあ、緋月さん…今夜も大人しくおやすみなさいね。」
貴「……はい。…おやすみなさい…。」
___バタン。
院長「君。」
医師「あ、院長。」
院長「どうだね。彼女の病状は?」
医師「はい。少しずつですが、だいぶ落ち着きを取り戻せています。」
院長「そうか。ならば良かった。」
医師「?…良かったとは。どういう事です?」
院長「実は、夕方頃に弁護士の方から連絡が来てね。「彼女の病状が安定した頃に裁判所に来てほしい」との事だ。」
医師「!…緋月さんを裁判所にですか?」
院長「あぁ、あのニュースで周りが大騒ぎになっている。1回目の裁判で判決したいそうだ。」
医師「待って下さい!彼女だって実の親に虐待された被害者なんですよ!」
院長「だが、実の親を殺したのは彼女だ…しかも、人間がするような行為ではない。もう弁護士と警察の判断がついている…
彼女は、判決後【医療少年院】に移送するそうだ。」
医師「!…そんな。」
院長「すまないが……そういうわけだ…。」
医師「……………。」
院長「……それから。…彼女の母親についてだが…。」
医師「!…緋月さんの、お母様が?」
院長「【遺体】として……見つかったそうだ。」
医師「?!……遺体って、どういう事ですか?」
院長「母親は実の娘である彼女を家に残し、一人【神無空港】へ行き海外へ出かけたそうだ。…………だが、飛行中に事故に遭い墜落した。」
医師「…!………その事故はいつ頃に起きたのですか?」
院長「………【
5月8日】だ。」
医師「!!………その日は確か緋月さんのっ……。」
院長「…それから、警察が私に1枚のメモ用紙を渡されてね……恐らく、彼女の母親からの遺書のような物だろう…。」
…カサカサ……______。
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【個室】
先生と院長の話を聞いてしまった…。
私は、裁判後ここを離れ【少年院】に入る事を…………。
また、私は籠の中の鳥になる……。
自由もない……。
ドクン……。
そして、ずっと待ち続けた、お母さんの事………。
ドクン………ドクン………。
お母さんが残したという遺書の内容も………。
ドクン……ドクン……ドクン……。
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『貴方が生まれて来なきゃ…私達は幸せだったのかもしれない……。』
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…………ミシッ。
私は、ただ静かに………
涙を流すことしか出来なかった………。
