鶴丸国永・01
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スマートフォンを耳に押し当てながら、私はため息を押し殺した。
「……だから、今言われても困るんです。事前に説明しましたよね?」
通話相手は、先日対応した依頼人だ。
家に取り憑いた怪異の浄化を依頼され、きっちり仕事を終えたはずだった。
だが、今になって「やっぱりまだ気配がする」「完全に消えていないのでは?」と、不安げな声で繰り返している。
依頼内容に沿って対処した以上、それ以上の対応には追加料金が発生するのが当然だ。
不安な気持ちもわからないわけではないが、こちらとしてはもう一度現場へ戻ったとしても、これ以上出来ることはない。
だが、こういうタイプの依頼人は、感情的になっているせいで聞き入れてくれないことが多い。
「審神者さん、本当に終わってるんですか? 前よりマシにはなりましたけど、まだ気のせいじゃないかって思えなくて……」
「浄化は確実に完了しています。念のため、定期的にお香を焚いたり、空間を清めることをおすすめしますが、それ以上の対応には新たな契約が――」
「そんなの聞いてません! 追加料金とか、最初に言いましたっけ?」
ぐっと奥歯を噛む。
言った。言ったはずだ。
しかし、こうなってしまったら水掛け論になるだけで、下手に押せば相手は「詐欺だ」と騒ぎ立てるかもしれない。
「……申し訳ありませんが、詳しくは契約書にも記載しておりますので、一度ご確認をお願いいたします」
「契約書なんてちゃんと読んでないですよ!」
ああ。……やっぱり!
説明を聞かずに契約し、終わってから騒ぎ出すパターンは、今までに何度も経験した。
「不安なお気持ちは理解します。ただ、怪異というのは、物理的な害をなくしたとしても、“気の持ちよう”で残っているように感じることがあります。なので、もう少し日常の変化を観察してみて――」
「そんなの素人にはわからないです! それに、あなた本当に怪異を対処する資格あるんですか?」
カチン、と頭の奥で何かが弾ける音がした。
落ち着け、こういう時こそ冷静に。
私は深く息を吸い、吐き出す。
「……では、改めて説明しますね。今回の案件では”実体のある怪異”を対象とし、それは確実に処理しました。しかし、お客様が感じる”気配”がまだ残っているとしたら、それは”環境”や”ご自身の心”によるものかもしれません。心霊的な要因以外にも、生活習慣の変化や心理的な影響で、“まだいる気がする”という感覚が生まれることがあります。これについては――」
「え?どういうことですか?なんか難しいこと言ってごまかそうとしてません?」
……ダメだ、話が通じない。
こうなると、もうどうしようもない。
「では、再依頼として正式に契約されますか?」
「……。もういいです!」
ピッ、と一方的に通話が切れた。
私もスマートフォンを握ったまま、しばらく動けなかった。
「……はぁ……」
テーブルに突っ伏したい気分だ。
正直、こういう依頼人とのやり取りが、一番疲れる。
怪異を相手にすることよりも、人間と話をすることの方がよほど難しい。
感情に振り回されると、合理的な説明なんて通用しない。
最初から怪異だけ相手にしていられたら、どれだけ楽か――。
「……いや、そんなわけにもいかないか」
軽く頬を叩き、気持ちを切り替える。
次の案件に意識を向けよう。
今日は、新たな護衛と顔合わせをする日だ。
『影喰い』の案件――厄介な怪異が関わる以上、護衛は信頼できる相手でなければならない。
どんな人が来るんだろう?
私は、まだ見ぬ相棒との出会いにわずかに期待を抱きながら、約束のカフェへと入った。
「……だから、今言われても困るんです。事前に説明しましたよね?」
通話相手は、先日対応した依頼人だ。
家に取り憑いた怪異の浄化を依頼され、きっちり仕事を終えたはずだった。
だが、今になって「やっぱりまだ気配がする」「完全に消えていないのでは?」と、不安げな声で繰り返している。
依頼内容に沿って対処した以上、それ以上の対応には追加料金が発生するのが当然だ。
不安な気持ちもわからないわけではないが、こちらとしてはもう一度現場へ戻ったとしても、これ以上出来ることはない。
だが、こういうタイプの依頼人は、感情的になっているせいで聞き入れてくれないことが多い。
「審神者さん、本当に終わってるんですか? 前よりマシにはなりましたけど、まだ気のせいじゃないかって思えなくて……」
「浄化は確実に完了しています。念のため、定期的にお香を焚いたり、空間を清めることをおすすめしますが、それ以上の対応には新たな契約が――」
「そんなの聞いてません! 追加料金とか、最初に言いましたっけ?」
ぐっと奥歯を噛む。
言った。言ったはずだ。
しかし、こうなってしまったら水掛け論になるだけで、下手に押せば相手は「詐欺だ」と騒ぎ立てるかもしれない。
「……申し訳ありませんが、詳しくは契約書にも記載しておりますので、一度ご確認をお願いいたします」
「契約書なんてちゃんと読んでないですよ!」
ああ。……やっぱり!
説明を聞かずに契約し、終わってから騒ぎ出すパターンは、今までに何度も経験した。
「不安なお気持ちは理解します。ただ、怪異というのは、物理的な害をなくしたとしても、“気の持ちよう”で残っているように感じることがあります。なので、もう少し日常の変化を観察してみて――」
「そんなの素人にはわからないです! それに、あなた本当に怪異を対処する資格あるんですか?」
カチン、と頭の奥で何かが弾ける音がした。
落ち着け、こういう時こそ冷静に。
私は深く息を吸い、吐き出す。
「……では、改めて説明しますね。今回の案件では”実体のある怪異”を対象とし、それは確実に処理しました。しかし、お客様が感じる”気配”がまだ残っているとしたら、それは”環境”や”ご自身の心”によるものかもしれません。心霊的な要因以外にも、生活習慣の変化や心理的な影響で、“まだいる気がする”という感覚が生まれることがあります。これについては――」
「え?どういうことですか?なんか難しいこと言ってごまかそうとしてません?」
……ダメだ、話が通じない。
こうなると、もうどうしようもない。
「では、再依頼として正式に契約されますか?」
「……。もういいです!」
ピッ、と一方的に通話が切れた。
私もスマートフォンを握ったまま、しばらく動けなかった。
「……はぁ……」
テーブルに突っ伏したい気分だ。
正直、こういう依頼人とのやり取りが、一番疲れる。
怪異を相手にすることよりも、人間と話をすることの方がよほど難しい。
感情に振り回されると、合理的な説明なんて通用しない。
最初から怪異だけ相手にしていられたら、どれだけ楽か――。
「……いや、そんなわけにもいかないか」
軽く頬を叩き、気持ちを切り替える。
次の案件に意識を向けよう。
今日は、新たな護衛と顔合わせをする日だ。
『影喰い』の案件――厄介な怪異が関わる以上、護衛は信頼できる相手でなければならない。
どんな人が来るんだろう?
私は、まだ見ぬ相棒との出会いにわずかに期待を抱きながら、約束のカフェへと入った。
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