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マリィ

 右頬を指先でくるりと撫でられる。くすぐったさに思わず息を漏らすと、私の頬を撫でていた彼女は不満げな声を上げた。

「やっぱり起きとる」
「んふ……」
「ね、無視せんといて」
「んー?」

 薄目を開けて私を見下ろしている彼女を見る。彼女はぷっくりと頬を膨らませて、私のことを睨みつけていた。赤ちゃんポケモンのようでとてもかわいい。読書に飽きて、ソファーの上でブランケットも掛けずにぼうっと寝ていた時に彼女が帰ってきたけれど、私はちょうど微睡んでいた所だったので、出迎えることもせずにそのまま寝ようとしていたら、頬を撫でられた。そこで冒頭に戻る。
 マリィは私の足を無理やりどけて、ソファーに座り込んだ。変な姿勢になってしまったので、体を起こそうとしてもうまくいかない。そうこうもがいているうちに、マリィは私の足をがっちり捕まえてしまった。そのまま足を撫でられる。でもそこに下心のような気持ち悪さはなく、むしろ母親が子にするような撫で方で、私はまた微笑みを漏らす。しかしまたそれが彼女の癪に触ったようだ。

「あたしのこといつまでも子供扱いせんといて」

 Love me like you do
右頬を指先でくるりと撫でられる。くすぐったさに思わず息を漏らすと、私の頬を撫でていた彼女は不満げな声を上げた。
「やっぱり起きとる」
「んふ……」
「ね、無視せんといて」
「んー?」
薄目を開けて私を見下ろしている彼女を見る。彼女はぷっくりと頬を膨らませて、私のことを睨みつけていた。赤ちゃんポケモンのようでとてもかわいい。読書に飽きて、ソファーの上でブランケットも掛けずにぼうっと寝ていた時に彼女が帰ってきたけれど、私はちょうど微睡んでいた所だったので、出迎えることもせずにそのまま寝ようとしていたら、頬を撫でられた。そこで冒頭に戻る。
マリィは私の足を無理やりどけて、ソファーに座り込んだ。変な姿勢になってしまったので、体を起こそうとしてもうまくいかない。そうこうもがいているうちに、マリィは私の足をがっちり捕まえてしまった。そのまま足を撫でられる。でもそこに下心のような気持ち悪さはなく、むしろ母親が子にするような撫で方で、私はまた微笑みを漏らす。しかしまたそれが彼女の癪に触ったようだ。
「あたしのこといつまでも子供扱いせんといて」
私と彼女の歳の差はたった五歳ほどだ。それでも彼女にとっては大きな壁らしい。

「してないよ、」

 私の膝の上にちょこんと置かれた小さな手のひらに私の手を重ねる。爪には昨日塗ったばかりの、鈍く光る黒が乗っている。マリィの手を取って、ゆっくり自分の頬へ触れさせる。うっとり頬擦りすると、マリィはとても恥ずかしそうに顔を逸らした。自分から仕掛けてきたくせに、シャイなのだ。

「無理しなくていいんだよ」
「それが、子供扱いだって言ってんのに……」

 まだむくれているけれど、声色はさっきよりも明るい。もう一押しかな。
 マリィの腕を思いっきり引っ張って、自分の胸元に閉じ込めた。マリィは「わ、」と声を上げたけれど、特に文句も言わず、私の胸に顔をうずめた。

「マリィは、マリィの好きなように私を愛せばいいんだよ」
「……あたしの、好きなように」
「そ。私も好きなようにさせてもらうけど」
「好きなように……」

 マリィは目を閉じて何か考えていた。可愛らしい頭を撫でていると、やがて目を開けて、私をまっすぐ見つけた。澄んだ宝石のような双眸に見つめられて、思わずたじろぎそうになったけれど、そうするとまた怒らせてしまいそうだったのでなんとか我慢した。

「じゃ、明日から毎日電話する」
「えっ」
「これがあたしの愛し方やけんね。無視したら承知せんから」
「ちょ、ちょっとそれは。仕事中は出れないよ」
「しらん。無視したら別れる」
「えぇ〜……」

 マリィは珍しく私を翻弄できて満足したらしく、にんまりと笑って、また私の胸に顔をうずめた。
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