サイトウ
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サイトウちゃん1
別に友達がいないわけではない。
月に一回くらいは友達と四、五人でショッピングモールへ赴いたりするし、放課後カフェに誘われたりする。
ただ、みんなにとって誘うのが別に私以外の誰かでもいいだけなのだ。
いたら嬉しいけど、いなくても困らない。そんな曖昧な存在なのである。頭数合わせなのである、私は。
そんなわけで、今日は誰にもご飯に誘われなかった。よく私に声をかけてくれる女の子が今日休みで、他の子達は私に気づかず学校近くの公園へランチを食べに行った。
ただお弁当を広げるだけでも、仲の良い友達が居て場所がお日様が照らす公園であれば、その一つ一つが思い出になるのだろう。
しかしまあ、お洒落な公園には劣るかもしれないが、私も中々素敵な場所を知っている。おすすめするほどでもないけれど。
私の通っている学校には、校舎が三つある。普通の校舎、新校舎、旧校舎。
去年新校舎ができてからは、みんな真新しい方にいくけど、私は別にすばらしい場所があるのを知っている。
第二音楽室のベランダから立ち入り禁止の旧校舎のベランダに乗り移って、旧図書室へ侵入。
気になった本を数冊選んで、目指すは旧美術室の向こう、非常螺旋階段へと。
階段は錆び付いているが、私一人が腰かけるくらいならどうってことない。鞄からタオルを取り出して、自分の尻の下に敷く。
今日は天気が良い。青とも蒼とも言える空を見上げながら、お弁当の包みを開いて、一人の時間を楽しむ。
いつもなら、そのはずだったんだけど。
「なるほど。秘密の隠れ家って事ですね?」
自分でも呆れるほど大袈裟に方が跳ねる。慌てて振り返れば、目すら合わせたことのない、学校一の優等生。若きジムリーダー、ストイックな性格、かくとうタイプ……そこまで思考を巡らせたところで、私はやっと悲鳴をあげることができた。
「……すみません。驚かせてしまったみたいで」
「ああああいや、お気になさらず、すみませんこちらこそ、ああもういいです気にしないでください拾わないで」
「いえ、なんだか美味しそうなので」
間抜けなことに弁当をぶちまげてしまった。
無事そうなものは再度弁当箱へ、駄目そうなものは保冷バッグの中に入っていたレジ袋へ。
「………その、あなたはどうしてここへ?」
「サイトウで良いですよ。……特に理由は無いんですが、いつもと違うことをしてみようと思って。貴方を追いかけてみました。」
「は、はあ………」
天才の考えることはわからない。
「………本当にごめんなさい。折角のお昼だったのに」
「き、気にしないでください、大したもの入ってなかったので」
「でも、貴方のお母さんが」
「………あー、えーと、これを作ったのは母ではなく私です、ので、お気になさらず」
「そうなんですか? とても美味しそうだったのでてっきり」
「うち、父親が居なくて。料理は私なんです」
「そうですか」
おいおい。何を話しているんだ私は。いくら驚いたからってぺらぺらと家庭事情を語るんじゃない。
目の前のサイトウさんは、(多分超たぶん)気まずそうにまばたきしていた。
沈黙が情けなくて、保冷バッグから包みを取り出す。
「あ、あの、よかったら、これ食べます………? こっちは落としてないから。」
「これは……?」
「クッキーです。もうすぐ母の誕生日で、何か作ってあげたくて、試作品です」
「すごい、この形ってどうやって作るんですか?」
「アイスボックスクッキーです。二種類生地をつくって、それをそれぞれ四等分して組み合わせるんです」
「………よくわからないけど、おいしいです!」
むぐむぐとクッキーを頬張る彼女に、少し安心する。
「………あの、もし貴方が迷惑でなければなんですが」
「はい?」
「このクッキーもっと食べたいです。また明日、ここで待ち合わせしませんか?」
瞬間、風が吹いて、彼女の綺麗な髪が舞うのが見えた。何を答えたかは正直覚えていないが、次の日から私が公園でお弁当を広げることは無くなった。
別に友達がいないわけではない。
月に一回くらいは友達と四、五人でショッピングモールへ赴いたりするし、放課後カフェに誘われたりする。
ただ、みんなにとって誘うのが別に私以外の誰かでもいいだけなのだ。
いたら嬉しいけど、いなくても困らない。そんな曖昧な存在なのである。頭数合わせなのである、私は。
そんなわけで、今日は誰にもご飯に誘われなかった。よく私に声をかけてくれる女の子が今日休みで、他の子達は私に気づかず学校近くの公園へランチを食べに行った。
ただお弁当を広げるだけでも、仲の良い友達が居て場所がお日様が照らす公園であれば、その一つ一つが思い出になるのだろう。
しかしまあ、お洒落な公園には劣るかもしれないが、私も中々素敵な場所を知っている。おすすめするほどでもないけれど。
私の通っている学校には、校舎が三つある。普通の校舎、新校舎、旧校舎。
去年新校舎ができてからは、みんな真新しい方にいくけど、私は別にすばらしい場所があるのを知っている。
第二音楽室のベランダから立ち入り禁止の旧校舎のベランダに乗り移って、旧図書室へ侵入。
気になった本を数冊選んで、目指すは旧美術室の向こう、非常螺旋階段へと。
階段は錆び付いているが、私一人が腰かけるくらいならどうってことない。鞄からタオルを取り出して、自分の尻の下に敷く。
今日は天気が良い。青とも蒼とも言える空を見上げながら、お弁当の包みを開いて、一人の時間を楽しむ。
いつもなら、そのはずだったんだけど。
「なるほど。秘密の隠れ家って事ですね?」
自分でも呆れるほど大袈裟に方が跳ねる。慌てて振り返れば、目すら合わせたことのない、学校一の優等生。若きジムリーダー、ストイックな性格、かくとうタイプ……そこまで思考を巡らせたところで、私はやっと悲鳴をあげることができた。
「……すみません。驚かせてしまったみたいで」
「ああああいや、お気になさらず、すみませんこちらこそ、ああもういいです気にしないでください拾わないで」
「いえ、なんだか美味しそうなので」
間抜けなことに弁当をぶちまげてしまった。
無事そうなものは再度弁当箱へ、駄目そうなものは保冷バッグの中に入っていたレジ袋へ。
「………その、あなたはどうしてここへ?」
「サイトウで良いですよ。……特に理由は無いんですが、いつもと違うことをしてみようと思って。貴方を追いかけてみました。」
「は、はあ………」
天才の考えることはわからない。
「………本当にごめんなさい。折角のお昼だったのに」
「き、気にしないでください、大したもの入ってなかったので」
「でも、貴方のお母さんが」
「………あー、えーと、これを作ったのは母ではなく私です、ので、お気になさらず」
「そうなんですか? とても美味しそうだったのでてっきり」
「うち、父親が居なくて。料理は私なんです」
「そうですか」
おいおい。何を話しているんだ私は。いくら驚いたからってぺらぺらと家庭事情を語るんじゃない。
目の前のサイトウさんは、(多分超たぶん)気まずそうにまばたきしていた。
沈黙が情けなくて、保冷バッグから包みを取り出す。
「あ、あの、よかったら、これ食べます………? こっちは落としてないから。」
「これは……?」
「クッキーです。もうすぐ母の誕生日で、何か作ってあげたくて、試作品です」
「すごい、この形ってどうやって作るんですか?」
「アイスボックスクッキーです。二種類生地をつくって、それをそれぞれ四等分して組み合わせるんです」
「………よくわからないけど、おいしいです!」
むぐむぐとクッキーを頬張る彼女に、少し安心する。
「………あの、もし貴方が迷惑でなければなんですが」
「はい?」
「このクッキーもっと食べたいです。また明日、ここで待ち合わせしませんか?」
瞬間、風が吹いて、彼女の綺麗な髪が舞うのが見えた。何を答えたかは正直覚えていないが、次の日から私が公園でお弁当を広げることは無くなった。
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