おまけのおはなし
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「和紗ちゃんめちゃくちゃ可愛いって思いません?七海サンはどう思います?」
【みなづき駅】の一件の報告を高専の上層部に済ませた後、廊下を歩きながら猪野君がのぼせた様子で言った。
猪野君は、【みなづき駅】の一件がらみで出会った、五条さんのところの居候の鶴來さんに熱を上げている様子。
どうやら、彼女に惚れてしまったらしい。
「私にどうと訊かれても」
「七海サンにも、この俺の胸のトキメキをわかってほしいんすよ~」
「共有する必要あるんですか」
そう言いながら、私は鶴來さんの印象を思い返しながら話した。
「容姿の好みは人それぞれ異なることであり、そもそも人の容姿をあれこれ論じるのは私はしない主義なのでお答えしかねます」
「さっすが七海サン!カッコイイ!でも、俺はあのコの顔もめちゃタイプです!」
「そりゃよかったですね」
「じゃあ、性格は?絶対いいコですよねー。そう思いません?」
「あの短時間で彼女の何がわかるんですか・・・」
と、呆れながらも、僅かながら彼女の性格を伺える言葉や言動を思い出していた。
『右近君、立って!』
友人に活を入れて、何とか歩かせようとする懸命な姿。
『私に構わないで、右近君を守ることに専念してください』
そう言って、自分が傷つくことも厭わず人を守ろうとする姿。
そして。
『だって、いつも・・・私ばかりが・・・突然、置いてかれるばかりだったから・・・』
そして、少し薄暗いところがみえるのが、気になった。
「・・・・・・」
そんなことを思い出して黙り込んでいると、猪野君が私に不審そうな視線を向けていた。
「何ですか」
「七海サンこそ何考えていたんですか」
「君が鶴來さんのことをどう思うか訊くので考えていたんです」
「でも、その沈黙は何なんすか!?まさか、七海サンも和紗ちゃんのこと・・・!」
と、猪野君は愕然としながら言ってくるので、
「私は未成年をそういう対象として見ていません」
と、きっぱり言ってやった。
すると、猪野君は安堵したようだ。
「そうっすよねぇ。あぁ、でもそっか・・・。未成年かぁ。アプローチしたら引かれるかなぁ。それに、もし付き合うことになったら青少年育成保護法にひっかかる!?」
「気が早いですね。しかも前向きなのか後ろ向きなのか」
「どうしたらいいですか、七海サン!?」
「君は幾つでしたっけ」
「俺は21っす!」
「ちゃんと分別のある付き合いなら問題ないのでは。彼女は君と年は近いようですし」
「そうですか?よーし、俺、ガンバろっと!ところで、七海サン、和紗ちゃんの連絡先知ってます?」
「知りませんよ」
「そっか。知ってたら教えてもらおうと・・・あ」
そこへ、向かい側から五条さんが歩いてきた。
猪野君もそのことに気づき、
「ちょうどいいところに!五条さんに教えてもらおっと」
と、五条さんの元へ駆けつけていく。
「五条さん、お疲れ様です!」
「猪野に七海。どうしたの」
「【みなづき駅】の報告に・・・それより、教えてほしいことがあるんですけど」
「んー?何?」
「五条さんとこの居候の女のコいるじゃないですか」
「和紗のこと?」
「そうっす!よかったら、和紗ちゃんの連絡先教えて・・・ヒィッ!」
突然、猪野君が悲鳴を上げるので、私は五条さんの方へ視線を向けた。
「和紗の・・・何?」
と、五条さんは目隠しを上げて片目を覗かしている。
猪野君はその目を見て、すっかり縮み上がっている。
「五条さん!なんか今にも領域展開せんばかりに瞳孔が開いてますよ!?」
「え、そお?で、ウチの和紗が何?」
「・・・いえ・・・何もありません・・・」
「ふーん。じゃ、僕急ぐから行くねー」
と、五条さんはすぐに目隠しを直して言ってしまった。
しかし、猪野君はまだ怯えた様子で、
「超不機嫌だった・・・。俺、五条さんに何か言っちゃいけないこと言いましたっけ?」
と、困惑している。
なので、私は言った。
「猪野君が気にしなくていいですよ」
「でも、失礼があったなら謝らないと・・・」
「おそらく、五条さん本人もわかっていませんよ」
ポツリと零すように。
「今は、ね」
おわり。