第39話 死滅回游について
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私がそう言うと、九十九さんはフッと微笑んだ。
そして、
「早く会いたい?五条君に」
と私に問う。
「・・・会いたい」
そう零してしまえば、ずっと抑えていた感情も涙も、零れ出してしまった。
すると、九十九さんは何も言わずに私の頭を掻き抱いた。
「でも・・・」
「んー?」
「私に、額多之君が受肉してるって知ったら、引いたりしないかな・・・」
と言いながら、私は頬に流れる涙を拭った。
額多之君は、いつの間にやら姿を消していた。
九十九さんは一瞬キョトンとした後、
「アーッハッハッハ!」
と大笑いし出した。
私はムッと口をへの字に曲げた。
「そんな笑います?私は結構深刻に悩んでるんですけど」
「ごめんごめん。でも、五条君なら面白がって受け入れてくれると思うよ?」
「そうかなー・・・」
すると、九十九さんはより近くに私を引き寄せて、戸惑う私の耳元に囁いた。
「私は一人っ子だけどさぁ」
まるで、おまじないをかけるように。
「妹がいたら、こんな気持ちなんだろうな。『幸せになれ、和紗』」
───それから、必要最低限の持ち物とサトルと共に、私は高専を出発した。
手の中には、香志和彌神社で借りたままの、九十九さんの懐中時計。
返そうとしたのに、持っていけと言われてそのまま持つことにした。
「・・・・・・」
時計の針はどんどん進んでいく。
急がないと。
懐中時計をポケットにしまって、私は歩き出した。
歩き出して1時間が経った頃、
「和紗さーん!」
前方から見知った顔の人物が駆け付けてきた。
「乙骨君?」
そう、それは先に仙台に向かったはずの乙骨君だった。
「どうして、先に行ったんじゃ」
「九十九さんから連絡が来たんです」
乙骨君は私の目の前まで駆け着くと、呼吸で肩を弾ませながら言った。
「和紗さんも仙台に向かうからよろしくって」
「それでわざわざ戻ってきてくれたの?」
「はい。幸いまだ新幹線に乗る前だったので」
「そうだったんだ。ありがとう」
そこでふと疑問に思った。
「新幹線ってどこから乗れるのかな?東京からは出てないよね」
「大宮からは出てるようですよ」
「そっか、大宮から・・・」
「和紗さん」
「ん?」
乙骨君は真っ直ぐな目で私を見て言った。
「以前にも話したんですけど、僕が海外にいた時に五条先生が訪ねてきたんです。その時、言われてたことがあって」
「え・・・」
「自分に何かあった時に、みんなのことを頼むって。特に和紗さんのことを、先生は案じてました」
「・・・・・・」
それは、意外なことだった。
あの人がそんな風に人を頼りにするなんて。
それだけ、危機感を覚えていたのか。
それを知って、尚更私は悔やんだ。
もっと早くに『夏油傑』に出会ったことを話していたら───。
「あの、だからって、その、僕が五条先生の代わりが務まるなんて思っていないんですけど」
私が黙り込んでしまったのを不安に思ったのか、乙骨君は急にしどろもどろになりながら話し続けた。
「とにかく、和紗さんのことは必ず僕が守ります」
そう乙骨君が言い切ると、私はフッと微笑んだ。
「ありがとう、乙骨君」
「あ、はい」
「・・・でも、守られるばかりなんて私はイヤだから!」
「え」
キョトンとする乙骨君に微笑みかけながら、私は言った。
「私もみんなのこと守る。みんなは五条さんの夢だから」
それは、一度心に誓いながらも破れてしまった。
だけど、今度こそは負けない。
負けられない。
私は、負けない。
そうして歩き出した私達を、
「・・・・・・」
私の内側で、額多之君が見ていた。
つづく
そして、
「早く会いたい?五条君に」
と私に問う。
「・・・会いたい」
そう零してしまえば、ずっと抑えていた感情も涙も、零れ出してしまった。
すると、九十九さんは何も言わずに私の頭を掻き抱いた。
「でも・・・」
「んー?」
「私に、額多之君が受肉してるって知ったら、引いたりしないかな・・・」
と言いながら、私は頬に流れる涙を拭った。
額多之君は、いつの間にやら姿を消していた。
九十九さんは一瞬キョトンとした後、
「アーッハッハッハ!」
と大笑いし出した。
私はムッと口をへの字に曲げた。
「そんな笑います?私は結構深刻に悩んでるんですけど」
「ごめんごめん。でも、五条君なら面白がって受け入れてくれると思うよ?」
「そうかなー・・・」
すると、九十九さんはより近くに私を引き寄せて、戸惑う私の耳元に囁いた。
「私は一人っ子だけどさぁ」
まるで、おまじないをかけるように。
「妹がいたら、こんな気持ちなんだろうな。『幸せになれ、和紗』」
───それから、必要最低限の持ち物とサトルと共に、私は高専を出発した。
手の中には、香志和彌神社で借りたままの、九十九さんの懐中時計。
返そうとしたのに、持っていけと言われてそのまま持つことにした。
「・・・・・・」
時計の針はどんどん進んでいく。
急がないと。
懐中時計をポケットにしまって、私は歩き出した。
歩き出して1時間が経った頃、
「和紗さーん!」
前方から見知った顔の人物が駆け付けてきた。
「乙骨君?」
そう、それは先に仙台に向かったはずの乙骨君だった。
「どうして、先に行ったんじゃ」
「九十九さんから連絡が来たんです」
乙骨君は私の目の前まで駆け着くと、呼吸で肩を弾ませながら言った。
「和紗さんも仙台に向かうからよろしくって」
「それでわざわざ戻ってきてくれたの?」
「はい。幸いまだ新幹線に乗る前だったので」
「そうだったんだ。ありがとう」
そこでふと疑問に思った。
「新幹線ってどこから乗れるのかな?東京からは出てないよね」
「大宮からは出てるようですよ」
「そっか、大宮から・・・」
「和紗さん」
「ん?」
乙骨君は真っ直ぐな目で私を見て言った。
「以前にも話したんですけど、僕が海外にいた時に五条先生が訪ねてきたんです。その時、言われてたことがあって」
「え・・・」
「自分に何かあった時に、みんなのことを頼むって。特に和紗さんのことを、先生は案じてました」
「・・・・・・」
それは、意外なことだった。
あの人がそんな風に人を頼りにするなんて。
それだけ、危機感を覚えていたのか。
それを知って、尚更私は悔やんだ。
もっと早くに『夏油傑』に出会ったことを話していたら───。
「あの、だからって、その、僕が五条先生の代わりが務まるなんて思っていないんですけど」
私が黙り込んでしまったのを不安に思ったのか、乙骨君は急にしどろもどろになりながら話し続けた。
「とにかく、和紗さんのことは必ず僕が守ります」
そう乙骨君が言い切ると、私はフッと微笑んだ。
「ありがとう、乙骨君」
「あ、はい」
「・・・でも、守られるばかりなんて私はイヤだから!」
「え」
キョトンとする乙骨君に微笑みかけながら、私は言った。
「私もみんなのこと守る。みんなは五条さんの夢だから」
それは、一度心に誓いながらも破れてしまった。
だけど、今度こそは負けない。
負けられない。
私は、負けない。
そうして歩き出した私達を、
「・・・・・・」
私の内側で、額多之君が見ていた。
つづく
10/10ページ