第39話 死滅回游について
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九十九さんはその日々に思いを馳せるように、どこか遠くを見つめながら続けた。
「それはすごく清々した日々で、初めて自分が生きてるって感じた。その同時に、私の代わりに天元と同化した会ったことのない彼あるいは彼女のことを考えるようになった。確かに、『星漿体』は天元と共に生きて魂は消えはしない。だが、私が感じたような生きている実感を二度と感じることはない。そう考えたら、猛烈に罪悪感を覚えちゃってね」
遠くを見つめる瞳が、ギラリと鋭く光った。
「そうしたら、急に『星漿体』を必要とする天元が憎くなった。同時に、ただ呪霊を祓うことだけに甘んじている呪術界の受け身な体制も」
「・・・・・・」
「でも、天元に同化の必要性があるどうしようもない。せめて、『星漿体』の犠牲がなくとも、天元の進化を留める方法を探し求めていた」
「・・・・・・」
「その可能性があったのが、糠田が森の造砡師が持つ『造砡包呪術』だった」
この時、ようやく九十九さんが私に近づいてきた目的がわかった。
「『明埜乃舞降鶴乃御砡 』。あれはただの呪力の物質化じゃない。膨大な呪力を持つ人間そのものを物質化した要石 ・・・そう仮説を立てた。天元を『造砡包呪術』で物質化し要石とすれば、私の望みは叶うんじゃないかと、そう考えたけど・・・」
「『造砡包呪術』は、術者自身の呪力を成形しその成形したもののの特性を与える。他の何かを物質化するわけじゃない」
と私が言うと、
「Exactly.私の目論見と仮説も見事に大外れってワケだ」
と、九十九さんは肩をすくめた。
「おまけに、天元にはもう同化は必要ないって言われちゃうしね。これまでの努力は水の泡だよ」
「・・・・・・」
「でもまぁ、これはこれで良かったのかなぁ。天元のヤツをぶん殴ってやりたい気持ちは変わらないけど」
そう言い終えると、九十九さんは口を噤んだ。
私と九十九さんの間に、沈黙が流れる。
地上に出てきて見上げた空は、ずいぶん久しぶりに見たような気がした。
そこに、理子ちゃんの面影が浮かぶ。
「・・・でも、九十九さんの仮説それほどハズレってワケでもないみたいですよ」
と私が言うと、九十九さんは少し目を丸くして私を見た。
「術式を返してもらう時に、お母さんが言ってました。術式が身体に馴染んでくれば、自ずと扱いが理解出来るって」
そう言いながら、確かめるように右手を握ったり開いたりを繰り返す。
「お母さんが言った通り、私・・・わかってきたんです。『明埜乃舞降鶴乃御砡』は、この術式の『極ノ番』。それは、術者自身とその呪力の全てを───」
「和紗!」
九十九さんが言葉を遮り、私の肩に手を置いた。
目が合うと、九十九さんはふるふると首を横に振ってから言った。
「駄目だよ」
「え・・・」
「そんなやり方は駄目だ。私は認めない」
必要以上に心配そうに私の目を見つめる九十九さんに、私は笑って見せた。
「・・・大丈夫ですよ。ただ説明してるだけです。私だって、そんな人身御供になるつもりはないですし」
「つもりないって、つもりなくない顔してたんだよ。思い詰めた顔して」
「・・・・・・」
「『みささぎ』のことだって、あれは遠いご先祖の行いのせいなのに、まるで自分のせいみたいに思い詰めている」
「そんなこと・・・」
「いーや、あるね。それに、『死滅回游』のことだって、伏黒君達に任せていればいいのに」
「そんなわけにはいきませんよ。私は予め用意された泳者 だから、必ず参加しなくちゃいけないんだし。それは総則に示されているって、九十九さんも知ってるでしょ?」
「その抜け道だって、きっと作ってくれるよ」
「駄目です。伏黒君は津美紀さんが最優先なんです。その上、私や紗樹ちゃんのことまでとなったら、なすべき事もなせなくなります。それに・・・」
それに。
「五条さんを、一刻でも早く解放してほしいから・・・」
「それはすごく清々した日々で、初めて自分が生きてるって感じた。その同時に、私の代わりに天元と同化した会ったことのない彼あるいは彼女のことを考えるようになった。確かに、『星漿体』は天元と共に生きて魂は消えはしない。だが、私が感じたような生きている実感を二度と感じることはない。そう考えたら、猛烈に罪悪感を覚えちゃってね」
遠くを見つめる瞳が、ギラリと鋭く光った。
「そうしたら、急に『星漿体』を必要とする天元が憎くなった。同時に、ただ呪霊を祓うことだけに甘んじている呪術界の受け身な体制も」
「・・・・・・」
「でも、天元に同化の必要性があるどうしようもない。せめて、『星漿体』の犠牲がなくとも、天元の進化を留める方法を探し求めていた」
「・・・・・・」
「その可能性があったのが、糠田が森の造砡師が持つ『造砡包呪術』だった」
この時、ようやく九十九さんが私に近づいてきた目的がわかった。
「『
「『造砡包呪術』は、術者自身の呪力を成形しその成形したもののの特性を与える。他の何かを物質化するわけじゃない」
と私が言うと、
「Exactly.私の目論見と仮説も見事に大外れってワケだ」
と、九十九さんは肩をすくめた。
「おまけに、天元にはもう同化は必要ないって言われちゃうしね。これまでの努力は水の泡だよ」
「・・・・・・」
「でもまぁ、これはこれで良かったのかなぁ。天元のヤツをぶん殴ってやりたい気持ちは変わらないけど」
そう言い終えると、九十九さんは口を噤んだ。
私と九十九さんの間に、沈黙が流れる。
地上に出てきて見上げた空は、ずいぶん久しぶりに見たような気がした。
そこに、理子ちゃんの面影が浮かぶ。
「・・・でも、九十九さんの仮説それほどハズレってワケでもないみたいですよ」
と私が言うと、九十九さんは少し目を丸くして私を見た。
「術式を返してもらう時に、お母さんが言ってました。術式が身体に馴染んでくれば、自ずと扱いが理解出来るって」
そう言いながら、確かめるように右手を握ったり開いたりを繰り返す。
「お母さんが言った通り、私・・・わかってきたんです。『明埜乃舞降鶴乃御砡』は、この術式の『極ノ番』。それは、術者自身とその呪力の全てを───」
「和紗!」
九十九さんが言葉を遮り、私の肩に手を置いた。
目が合うと、九十九さんはふるふると首を横に振ってから言った。
「駄目だよ」
「え・・・」
「そんなやり方は駄目だ。私は認めない」
必要以上に心配そうに私の目を見つめる九十九さんに、私は笑って見せた。
「・・・大丈夫ですよ。ただ説明してるだけです。私だって、そんな人身御供になるつもりはないですし」
「つもりないって、つもりなくない顔してたんだよ。思い詰めた顔して」
「・・・・・・」
「『みささぎ』のことだって、あれは遠いご先祖の行いのせいなのに、まるで自分のせいみたいに思い詰めている」
「そんなこと・・・」
「いーや、あるね。それに、『死滅回游』のことだって、伏黒君達に任せていればいいのに」
「そんなわけにはいきませんよ。私は予め用意された
「その抜け道だって、きっと作ってくれるよ」
「駄目です。伏黒君は津美紀さんが最優先なんです。その上、私や紗樹ちゃんのことまでとなったら、なすべき事もなせなくなります。それに・・・」
それに。
「五条さんを、一刻でも早く解放してほしいから・・・」