第39話 死滅回游について
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私が前のめり気味なのに対し、天元は悠然としてすぐには答えようとしない。
苛立ちを覚えたところで、
「あれは、額多之君の捧げものだった童だ」
と、天元は答えた。
簡潔な答えに、私は少し拍子抜けしながら聞き返した。
「捧げもの・・・だった?」
「さよう。かつて村の平穏を護る為に額多之君に捧げられた童が、額多之君の下成長し、呪術に目覚め、その力を以て額多之君を祓い、永きに渡り縛られ続けていた村を解放したのだ」
私はチラリと自分の頬の額多之君を窺った。
「・・・そうなの?」
しかし、額多之君は答えず沈黙している。
「ってことは、そのコは村の英雄ってことじゃん。それなのに、何故怨霊なんかに?」
私の疑問を代弁するように、九十九さんが天元に尋ねた。
「この日本では古来より、大いなる呪いを敢えて神と崇め奉り、その力を利用して、あらゆる災いから土地を護ってきた。糠田が森でもそれは同様だ。額多之君に童を捧げるという『縛り』の代わりに、額多之君の強力な呪力で村を守っていたのだ」
「・・・・・・」
「糠田が森にとって、額多之君は畏れであり、守り神でもあったのだ」
「・・・・・・」
「その守り神を失った糠田の森は、それまで額多之君を畏れて寄り付かなかった様々な呪霊や災いに襲われるようになった」
「・・・・・・」
「その責任と怒りの矛先を、村の者たちはその童に向けた」
その先のことは、聞かなくてもわかった。
その子どもの末路も。
『みささぎ』が、何故、糠田が森への憎しみを言葉にしていたのかも───だけど。
「それじゃあ、どうして『みささぎ』は陵先生に?」
と私が問うと、
「おそらくは、彼は『みささぎ』となる前の童の家族、あるいは深い関わりのあった人物の子孫で、その者を護りたかったという思いが呪いとなり、彼に憑りついているのだろう」
と天元は答えた。
それにも腑が落ちた。
思い返せば、『みささぎ』は一貫して陵先生を護ろうとしていたからだ。
その思いが暴走して、結果、陵先生を苦しめているのだけれど。
「・・・陵先生から『みささぎ』を解呪するには、どうしたらいいの?」
天元は今度はまたすぐに答えず、しばらく私の顔を見据えた後、口を開いた。
「・・・おぬしが望む形ではないと思うが、被呪者である陵の死こそが『みささぎ』を解呪する方法だ」
「・・・・っ」
私の聞きたいことは、そんなことじゃない。
そんなことを聞くために、わざわざここへ来たんじゃない。
そう言おうとして、でも、避けられない答えを突きつけられて、言葉に詰まった。
「オイ、つまらない冗談言うのも大概にしろよ」
何故か九十九さんが怒って天元に詰め寄っていた。
「天元様 ほどの偉大な術師がそんな愚策しか思いつかないのかよ」
「生憎だが、それが現状でね。あとは、被呪者自体が過呪怨霊と共生出来るよう努めるしかない」
「か~~っ!終いには精神論かよ?マジで使えねぇな、オマエ」
共生。それは、かつて試みた方法だ。
でも、陵先生はもう心身ともに限界で、『みささぎ』に侵食されつつある。
「・・・・・・」
諦めるしか、ないの・・・?
「・・・過呪怨霊は長年に渡って積み重なった澱のようなもの。こびり付き染みつき、引き剥がすのはほぼ不可能だ」
「・・・・・・」
「しかし、共存することは可能だ。おぬしの故郷、糠田が森のように」
と言う天元の言葉に、私は俯いていた顔を上げた。
「とりあえず、陵の心身が回復するまで私の結界術で『みささぎ』が顕現しないよう封印する」
納得は出来ない。
だけど、現状それしか手立てはない。
「それで頼む。で、もうひとつ確認したいことが」
このまま議論を続けてもきりがないと思ったのか、話題を変えるべく九十九さんが切り出した。
「和紗の腹違いの妹が過去の術師に受肉された。そして、仙台にいると聞いた。つまりそれは、既に仙台結界 に入り『死滅回游』に参加済みだということか?」
苛立ちを覚えたところで、
「あれは、額多之君の捧げものだった童だ」
と、天元は答えた。
簡潔な答えに、私は少し拍子抜けしながら聞き返した。
「捧げもの・・・だった?」
「さよう。かつて村の平穏を護る為に額多之君に捧げられた童が、額多之君の下成長し、呪術に目覚め、その力を以て額多之君を祓い、永きに渡り縛られ続けていた村を解放したのだ」
私はチラリと自分の頬の額多之君を窺った。
「・・・そうなの?」
しかし、額多之君は答えず沈黙している。
「ってことは、そのコは村の英雄ってことじゃん。それなのに、何故怨霊なんかに?」
私の疑問を代弁するように、九十九さんが天元に尋ねた。
「この日本では古来より、大いなる呪いを敢えて神と崇め奉り、その力を利用して、あらゆる災いから土地を護ってきた。糠田が森でもそれは同様だ。額多之君に童を捧げるという『縛り』の代わりに、額多之君の強力な呪力で村を守っていたのだ」
「・・・・・・」
「糠田が森にとって、額多之君は畏れであり、守り神でもあったのだ」
「・・・・・・」
「その守り神を失った糠田の森は、それまで額多之君を畏れて寄り付かなかった様々な呪霊や災いに襲われるようになった」
「・・・・・・」
「その責任と怒りの矛先を、村の者たちはその童に向けた」
その先のことは、聞かなくてもわかった。
その子どもの末路も。
『みささぎ』が、何故、糠田が森への憎しみを言葉にしていたのかも───だけど。
「それじゃあ、どうして『みささぎ』は陵先生に?」
と私が問うと、
「おそらくは、彼は『みささぎ』となる前の童の家族、あるいは深い関わりのあった人物の子孫で、その者を護りたかったという思いが呪いとなり、彼に憑りついているのだろう」
と天元は答えた。
それにも腑が落ちた。
思い返せば、『みささぎ』は一貫して陵先生を護ろうとしていたからだ。
その思いが暴走して、結果、陵先生を苦しめているのだけれど。
「・・・陵先生から『みささぎ』を解呪するには、どうしたらいいの?」
天元は今度はまたすぐに答えず、しばらく私の顔を見据えた後、口を開いた。
「・・・おぬしが望む形ではないと思うが、被呪者である陵の死こそが『みささぎ』を解呪する方法だ」
「・・・・っ」
私の聞きたいことは、そんなことじゃない。
そんなことを聞くために、わざわざここへ来たんじゃない。
そう言おうとして、でも、避けられない答えを突きつけられて、言葉に詰まった。
「オイ、つまらない冗談言うのも大概にしろよ」
何故か九十九さんが怒って天元に詰め寄っていた。
「天元
「生憎だが、それが現状でね。あとは、被呪者自体が過呪怨霊と共生出来るよう努めるしかない」
「か~~っ!終いには精神論かよ?マジで使えねぇな、オマエ」
共生。それは、かつて試みた方法だ。
でも、陵先生はもう心身ともに限界で、『みささぎ』に侵食されつつある。
「・・・・・・」
諦めるしか、ないの・・・?
「・・・過呪怨霊は長年に渡って積み重なった澱のようなもの。こびり付き染みつき、引き剥がすのはほぼ不可能だ」
「・・・・・・」
「しかし、共存することは可能だ。おぬしの故郷、糠田が森のように」
と言う天元の言葉に、私は俯いていた顔を上げた。
「とりあえず、陵の心身が回復するまで私の結界術で『みささぎ』が顕現しないよう封印する」
納得は出来ない。
だけど、現状それしか手立てはない。
「それで頼む。で、もうひとつ確認したいことが」
このまま議論を続けてもきりがないと思ったのか、話題を変えるべく九十九さんが切り出した。
「和紗の腹違いの妹が過去の術師に受肉された。そして、仙台にいると聞いた。つまりそれは、既に仙台