第39話 死滅回游について
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紗樹ちゃんのこと。
二人のことを考えると、手放しに喜んではいけない気がする。
(それに)
私はそっと自分の頬に触れた。
額多之君。
あれ以来、一度も出現していない。
だけど、確かに彼女は私に受肉して現に私の中に存在しているんだ。
こんな私を見たら、五条さんは・・・。
「・・・・・・」
九十九さんは小さく溜息をついた後、
「じゃ、一度会っとく?」
と言った。
唐突な言葉に私は目を瞬かせる。
「誰にですか?」
「天元にだよ」
「え」
「アイツは結界術の効果のせいか、日本国内のあらゆる事象を把握してるみたいでね。おまけに数千年存在し続けてるんだ。彼に憑りついた『みささぎ』について何か知っているかもしれない」
「・・・・・・」
「そして・・・君の腹違いの妹を助ける方法も」
「・・・行きます」
私は即座に答えた。
「天元に会いに行きます」
天元は12年前と同じく『薨星宮』にいた。
グオングオンと古臭い音を立てて高専の地下を昇降機が降りて行く。
初めて行く場所だけど、初めてじゃない。
不思議な感覚に見舞われながら、私は九十九さんについて天元の元へ向かった。
昇降機が停止し開いた扉から一歩出ると、突如、辺りが空白になった。
「ようこそ、額多之君」
警戒する間もなく、すぐ背後で声が聞こえた。
驚いて振り返ると、そこには切り株に四つの目と鼻と口を彫刻した・・・まるでトーテムポールのようなお面をつけた人物がいた。
(ううん、違う)
ほどなく気づく。
お面じゃない。
顔だ。本物の。
「・・・・・」
想像していたのと全く違った天元の姿を目にして言葉を失っていたら、
「何故わらわのことを知っている」
右頬に現れた額多之君の唇が、そう天元に問いかけた。
久々かつ突然の出現に驚く。
すると、天元は四つの目を弓なりにさせて、
「夫とその
と、どこか愉快そうに言った。
「当時は妾を持つのは当然の習わし。とはいえ、独占欲や嫉妬心は当然あの時代の人間も持っていた。君がしでかしたことは世間に衝撃を与えたが、一方で留飲を下げた女も数多くいただろうね」
そう言われて、額多之君はどこか不機嫌そうに唇を噤んで黙り込んだ。
そのまま消えるかと思っていたのに、消えずに私の頬に留まり続けている。
「そして、君は糠田が森の『造砡師』の子孫」
天元と視線がぶつかった。
四つの目に見据えられて少し肩が震えたけれど、すぐに居を正して天元に向き合った。
「鶴來和紗です」
すると天元は微笑むように目を細めた。
その瞬間、私は直感した。
(あれ、天元ってもしかして女の人・・・?)
そう、意外なことだけど、母性を感じさせるような包容力のようなものを天元から感じたのだ。
「君が私にききたいことは」
と、天元が口を開いて私は我に返った。
「『みささぎ』と名付けられた特級過呪怨霊のことかな?」
先回りされて、私は驚く。
九十九さんの言う通り、天元は全ての事象を把握しているようだった。
でも、話が早くてありがたい。
「はい」
私は天元に向かって問いかけた。
「『みささぎ』とは、一体何の呪いなんですか?どうして陵先生に?それに、『みささぎ』は糠田が森と何か関係があるんですか?」