第39話 死滅回游について
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「九十九さん」
やって来たのは九十九さんただ一人だった。
「・・・みんなは?」
「もうそれぞれの場所に向かったよ。真希は実家に呪具の回収へ。そして・・・」
と答えながら、九十九さんは興味津々と言った様子で拘束された陵先生の前に立ち眺めている。
「虎杖君と伏黒君は秤とかいう高専三年生のところ」
「はかり?」
ここに来て突然出てきた初めて聞く人物の名前に、私は眉をひそめる。
だけど、九十九さんの次の言葉でそんな疑問は吹き飛んだ。
「乙骨君は仙台に向かったよ」
「仙台・・・」
紗樹ちゃんがいる場所だ。
「気になることは山ほどあるだろうけど、まずは天元から聞き出したことを伝える。長くなるから、かいつまんで話すよ」
九十九さんはそう切り出すと、神妙な面持ちで語り出した。
『死滅回游』に関する八つの総則 について。
羂索は、全ての泳者 が『死滅回游』に参加するよう仕込みをしてあると話していた。
この総則 こそが、それなのだと悟る。
「・・・っ」
私はギリッと歯軋りした。
しかし、その『死滅回游』も目的のための『ならし』でしかないこと。
羂索の真の目的とは、日本全土を対象にした人類の進化の強制。
そこまでは、羂索が私に話していた通りだ。
驚愕したのは、その手段が人類と天元の同化だということだ。
そこで早速引っ掛かった。
「天元の同化って、でも・・・」
天元と同化出来るのは、『星漿体』だけのはずだ。
脳裏に理子ちゃんの姿が浮かんだ。
「ところがどっこい、12年前から進化した天元は『星漿体』以外とも同化できなくはないんだと」
と、九十九さんは説明する。
「オマケに、今の進化した天元の自我は個を超えて天地そのものとなった。魂がいたるところにあるって状態で、複数人の人間と同化が可能。同化した人間も天元と同様、人という個を超えた存在となる。天元は結界術によって形と理性を保てるが、人は理性も個という境界線を持てない。天元と同化した人がもし一人でも進化による暴走を起こせば、その脅威は一気に伝播し日本全土に広がるってワケだ」
「・・・・・・」
「・・・いや、日本だけじゃない。一億分の呪いが世界を飲み込む」
「・・・・・・」
「さらに、今の天元は呪霊操術の術式対象。羂索と接触すれば、取り込まれ同化が強制される」
「・・・・・・」
一気にそんな話を聞かされても、上手く処理できない。
私は俯きひとつ溜息をついてから、
「・・・もはや、驚けばいいのか怯えればいいのかわからないですね」
と言った。
「アハハ、わかんなくても仕方ないよ。私だって最初は『ハッ?何ソレ!?』って感じだったし。ま、そんなワケで私と脹相は天元の護衛のためにここに残ることになったんだ」
「そうなんですね」
「そう。で、ここからは希望的観測の話をしよう」
「希望・・・?」
「五条君を封印した『獄門疆』を解く方法がわかった」
私はハッと息を飲み視線を上げた。
視線がぶつかると、九十九さんは微笑みかけ続けた。
天元が所有する『獄門疆 裏』。
『死滅回游』の泳者 のひとり、『天使』来栖華。
彼女のあらゆる術式を消滅させる術式によって、『獄門疆 裏』を開き、五条さんを解放することができるという話だった。
「その『天使』とやらは東東京の結界 にいる。伏黒君と虎杖君が、秤君に助っ人の依頼を済ませた後に向かう手筈だよ」
「・・・・・・」
「五条君が復活すれば、この取っ散らかった状況もスムーズに収束するはずだよ、きっと」
「・・・・・・」
「それに何より、愛する人が君の元へ帰ってくるんだ。よかったね、和紗」
「・・・・・・」
「・・・和紗?」
「・・・あ」
私はぼうっとしたまま、九十九さんを見返した。
「どうしたの、ぼうっとして。嬉しくないの?」
「あ、いや、よかったとは思うんですけど」
「なにそれ。他人事みたいに。もっと喜ぶと思ったのに!」
「・・・怖くて」
私はギュッと両手を握りしめながら言った。
「本当に、そんな上手くいくのかなって怖くて。それに・・・」
と、陵先生の方に視線を向ける。
やって来たのは九十九さんただ一人だった。
「・・・みんなは?」
「もうそれぞれの場所に向かったよ。真希は実家に呪具の回収へ。そして・・・」
と答えながら、九十九さんは興味津々と言った様子で拘束された陵先生の前に立ち眺めている。
「虎杖君と伏黒君は秤とかいう高専三年生のところ」
「はかり?」
ここに来て突然出てきた初めて聞く人物の名前に、私は眉をひそめる。
だけど、九十九さんの次の言葉でそんな疑問は吹き飛んだ。
「乙骨君は仙台に向かったよ」
「仙台・・・」
紗樹ちゃんがいる場所だ。
「気になることは山ほどあるだろうけど、まずは天元から聞き出したことを伝える。長くなるから、かいつまんで話すよ」
九十九さんはそう切り出すと、神妙な面持ちで語り出した。
『死滅回游』に関する八つの
羂索は、全ての
この
「・・・っ」
私はギリッと歯軋りした。
しかし、その『死滅回游』も目的のための『ならし』でしかないこと。
羂索の真の目的とは、日本全土を対象にした人類の進化の強制。
そこまでは、羂索が私に話していた通りだ。
驚愕したのは、その手段が人類と天元の同化だということだ。
そこで早速引っ掛かった。
「天元の同化って、でも・・・」
天元と同化出来るのは、『星漿体』だけのはずだ。
脳裏に理子ちゃんの姿が浮かんだ。
「ところがどっこい、12年前から進化した天元は『星漿体』以外とも同化できなくはないんだと」
と、九十九さんは説明する。
「オマケに、今の進化した天元の自我は個を超えて天地そのものとなった。魂がいたるところにあるって状態で、複数人の人間と同化が可能。同化した人間も天元と同様、人という個を超えた存在となる。天元は結界術によって形と理性を保てるが、人は理性も個という境界線を持てない。天元と同化した人がもし一人でも進化による暴走を起こせば、その脅威は一気に伝播し日本全土に広がるってワケだ」
「・・・・・・」
「・・・いや、日本だけじゃない。一億分の呪いが世界を飲み込む」
「・・・・・・」
「さらに、今の天元は呪霊操術の術式対象。羂索と接触すれば、取り込まれ同化が強制される」
「・・・・・・」
一気にそんな話を聞かされても、上手く処理できない。
私は俯きひとつ溜息をついてから、
「・・・もはや、驚けばいいのか怯えればいいのかわからないですね」
と言った。
「アハハ、わかんなくても仕方ないよ。私だって最初は『ハッ?何ソレ!?』って感じだったし。ま、そんなワケで私と脹相は天元の護衛のためにここに残ることになったんだ」
「そうなんですね」
「そう。で、ここからは希望的観測の話をしよう」
「希望・・・?」
「五条君を封印した『獄門疆』を解く方法がわかった」
私はハッと息を飲み視線を上げた。
視線がぶつかると、九十九さんは微笑みかけ続けた。
天元が所有する『獄門疆 裏』。
『死滅回游』の
彼女のあらゆる術式を消滅させる術式によって、『獄門疆 裏』を開き、五条さんを解放することができるという話だった。
「その『天使』とやらは東東京の
「・・・・・・」
「五条君が復活すれば、この取っ散らかった状況もスムーズに収束するはずだよ、きっと」
「・・・・・・」
「それに何より、愛する人が君の元へ帰ってくるんだ。よかったね、和紗」
「・・・・・・」
「・・・和紗?」
「・・・あ」
私はぼうっとしたまま、九十九さんを見返した。
「どうしたの、ぼうっとして。嬉しくないの?」
「あ、いや、よかったとは思うんですけど」
「なにそれ。他人事みたいに。もっと喜ぶと思ったのに!」
「・・・怖くて」
私はギュッと両手を握りしめながら言った。
「本当に、そんな上手くいくのかなって怖くて。それに・・・」
と、陵先生の方に視線を向ける。