第38話 額多之君
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「う・・・」
いつのまにか眠っていたらしい。
目を覚ますと、知らぬ間に布団の中にいた。
ハッとして起き上がると、すぐ隣できよが眠っているのに気がついた。
「きよ・・・」
もしやと不安になりながら名を呼ぶと、きよは薄らと目を覚ました。
「姫様」
と言ったのを聞いてホッと安堵する。
額に手をあてると、熱が下がっているのを感じた。
時折咳をするものの、山は越えたようだ。
(よかった・・・)
胸を撫で下ろしたところで、自分自身を顧みる。
まだ熱や倦怠感はあったが、命が脅かされるような苦しみはもうない。
「姫様、ウチ・・・」
「きよはまだ横になっておれ。腹は減っておらぬか?」
「少し・・・」
ときよが答えると、額多之君は微笑んだ。
「わかった。何か用意しよう」
と、まだ気怠い身体で力を振り絞り立ち上がった。
そして厨 に向かい、そこにいるであろうまつに呼びかけた。
「まつ」
しかし、返事もその姿もない。
「まつ?」
湧き水のところまで水を汲みに行っているのだろうか。
自分が倒れた後、自分ときよを看病したのはまつしかいない。
感謝の念以上に、不安が過った。
「・・・・・・」
額多之君は屋敷の外に出た。
そして、湧き水のところに小走りで向かった。
その道の途中だった。
「・・・まつ」
まつがうつ伏せに倒れて動かなくなっていた。
「まつ!」
額多之君は駆け寄りまつの身体を揺らした。
その身体は冷たく既に固くなっていた。
まつは屋敷の方へ向かう姿で倒れている。
そばには空の桶が転がっていた。
「まつ・・・」
まつにも病が伝染り、自分が苦しい中でも気力を振り絞り、倒れた自分達を看病してくれていたのだ。
「すまない・・・」
額多之君はまつに縋り付いて泣いた。
しかし、いつまでもまつをここに置いておく訳にはいかない。
いったん屋敷に戻り、ずだ袋を持って再びまつの元へ戻った。
そして、ずだ袋をまつの頭に被せそのまま身体ごと中へ入れていく。
そして、それを引き摺り歩き始めた。
こんな風に乱雑に扱うことに胸は痛んだが、まつを背負って歩くことは、今の額多之君には無理なことだった。
「はぁ・・・はぁ・・・」
息を切らしながら、屋敷の裏にある山へ登っていく。
山の中腹へ来た辺りで、立ち止まりその場にしゃがみ込んだ。
「はぁ・・・はぁ・・・」
しゃがみ込んだまま、手で土を掘っていく。
この地へ来て、初めて自らの手で触れた土。
土仕事は、まつが教えてくれた。
楽しかった。
生きているのだと、実感した。
その実感は、今も痛いほどに感じている。
私は、生きている。
だけど、まつは死んだ。
どこで命運は違えたのだろう。
わからない。
だけど、まつをあらぬ命運に巻き込んでしまったのは私だ。
まつが眠るべきなのは、こんな痩せた土の中ではなかったのに。
山を降りた時には、もう陽は沈み始めていた。
身体中の血も含めた全ての水分が枯れてしまったみたいにからからだった。それなのに身体が重い。
病がぶり返したのではと思うほどだった。
まつのそばを離れたくなかった。
だけど、屋敷にきよが待っている。
(早く帰らなければ・・・)
ふと視線を上げると、暗くなり始めた空に黒煙が立ち昇っていくのが見えた。
ちょうど屋敷の方向だった。
「・・・?」
不穏に感じて、急いで駆け出した時だった。
「あっ」
思わぬ人物と出会した。
「お前達は・・・」
それは先日きよを探しに屋敷へ来た、三人組の男だった。
いつのまにか眠っていたらしい。
目を覚ますと、知らぬ間に布団の中にいた。
ハッとして起き上がると、すぐ隣できよが眠っているのに気がついた。
「きよ・・・」
もしやと不安になりながら名を呼ぶと、きよは薄らと目を覚ました。
「姫様」
と言ったのを聞いてホッと安堵する。
額に手をあてると、熱が下がっているのを感じた。
時折咳をするものの、山は越えたようだ。
(よかった・・・)
胸を撫で下ろしたところで、自分自身を顧みる。
まだ熱や倦怠感はあったが、命が脅かされるような苦しみはもうない。
「姫様、ウチ・・・」
「きよはまだ横になっておれ。腹は減っておらぬか?」
「少し・・・」
ときよが答えると、額多之君は微笑んだ。
「わかった。何か用意しよう」
と、まだ気怠い身体で力を振り絞り立ち上がった。
そして
「まつ」
しかし、返事もその姿もない。
「まつ?」
湧き水のところまで水を汲みに行っているのだろうか。
自分が倒れた後、自分ときよを看病したのはまつしかいない。
感謝の念以上に、不安が過った。
「・・・・・・」
額多之君は屋敷の外に出た。
そして、湧き水のところに小走りで向かった。
その道の途中だった。
「・・・まつ」
まつがうつ伏せに倒れて動かなくなっていた。
「まつ!」
額多之君は駆け寄りまつの身体を揺らした。
その身体は冷たく既に固くなっていた。
まつは屋敷の方へ向かう姿で倒れている。
そばには空の桶が転がっていた。
「まつ・・・」
まつにも病が伝染り、自分が苦しい中でも気力を振り絞り、倒れた自分達を看病してくれていたのだ。
「すまない・・・」
額多之君はまつに縋り付いて泣いた。
しかし、いつまでもまつをここに置いておく訳にはいかない。
いったん屋敷に戻り、ずだ袋を持って再びまつの元へ戻った。
そして、ずだ袋をまつの頭に被せそのまま身体ごと中へ入れていく。
そして、それを引き摺り歩き始めた。
こんな風に乱雑に扱うことに胸は痛んだが、まつを背負って歩くことは、今の額多之君には無理なことだった。
「はぁ・・・はぁ・・・」
息を切らしながら、屋敷の裏にある山へ登っていく。
山の中腹へ来た辺りで、立ち止まりその場にしゃがみ込んだ。
「はぁ・・・はぁ・・・」
しゃがみ込んだまま、手で土を掘っていく。
この地へ来て、初めて自らの手で触れた土。
土仕事は、まつが教えてくれた。
楽しかった。
生きているのだと、実感した。
その実感は、今も痛いほどに感じている。
私は、生きている。
だけど、まつは死んだ。
どこで命運は違えたのだろう。
わからない。
だけど、まつをあらぬ命運に巻き込んでしまったのは私だ。
まつが眠るべきなのは、こんな痩せた土の中ではなかったのに。
山を降りた時には、もう陽は沈み始めていた。
身体中の血も含めた全ての水分が枯れてしまったみたいにからからだった。それなのに身体が重い。
病がぶり返したのではと思うほどだった。
まつのそばを離れたくなかった。
だけど、屋敷にきよが待っている。
(早く帰らなければ・・・)
ふと視線を上げると、暗くなり始めた空に黒煙が立ち昇っていくのが見えた。
ちょうど屋敷の方向だった。
「・・・?」
不穏に感じて、急いで駆け出した時だった。
「あっ」
思わぬ人物と出会した。
「お前達は・・・」
それは先日きよを探しに屋敷へ来た、三人組の男だった。