第38話 額多之君
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「きよ!」
額多之君は縁側から飛び降りると、きよの元まで走っていった。
駆けつけると、きよは嬉しそうにふっと笑った後、ふらりと額多之君に倒れかかった。
「きよ!」
なんとか抱き留めると、額多之君は驚き息を飲んだ。
きよの身体が燃えるように熱い。
「姫 様・・・」
「まつ、きよの身体が熱い」
「え・・・」
「屋敷に運ぶ。まつは身体を冷やす水を用意しておくれ」
「は、はい」
まつは一足先に屋敷へ戻っていく。
額多之君はまるで焼いた炭のように熱いきよの身体を抱き上げて、覚束ない足取りでその後に続いた。
「・・・父 が・・・」
はぁはぁと荒い息遣いの合間に、きよが話し始めた。
「父が町から帰ってから・・・熱を出して、そしたら母 も、そしたら、ウチも妹も弟も・・・」
「話さなくていい。体力をうしなうぞ」
「看病したけど・・・みんな動かなくなって・・・」
「もういい」
額多之君は断ち切る様に言った。
「お前はもう何も不安がることはない。わらわがここにいる」
すると、きよはフッと笑みを浮かべた後気を失ったようで、眠りに落ちていった。
屋敷に戻り、きよを布団に寝かしつけた後。
間を置かず、三人の見知らぬ顔の男たちが屋敷を尋ねてきた。
「ここにひとり小娘が来なかったか。齢は十を数えたぐらいの」
男達は素性を明かすこともせず、突然そう切り出した。
何か急いでいるとも見えたが、
「無礼者。まずはおぬしたちが名乗るのが人に物を尋ねる際の礼儀であろう」
と額多之君は叱責した。
すると三人のうちの一番若い者が「何だと」とカッして突っかかってきたが、
「それはすまない。俺達はこの先にある村のもんだ」
年長者と思しき男がそれを制して、事情を話し始めた。
「村のとある家のもんが、町に出稼ぎに行って、疫病を持ち帰って来やがったんだ。その家族を隔離して家も封鎖してたんだがな、一家は皆死んじまってな。家ごと燃やそうとしたら、娘がひとりいねぇって話になってな。どうやら逃げ出しちまったらしい。病を撒き散らされるようなことになったらたまらん。とっつかまえようと探してるのさ」
話を聞いていて、血の気が引いていくのがわかった。
疫病というおそろしい響き。
そして、この連中はきよを「始末」するために探しているということに。
それでも、精一杯冷静を装って知らないと答えて男たちを追い返した。
「ひ、姫様」
まつが狼狽えながら言った。
「きよはここに置いて、私達も避難しましょう」
「まつ、おぬし一人で行け。わらわはここに残る」
「何を言って・・・!疫病ですよ?このままじゃ私達も・・・!」
「まつ」
額多之君は言った。
「これは、わらわの罪であり罰であり報いであり・・・そして幸せなのじゃ」
「姫様」
「このまま、きよもわらわも病に倒れようとも、こうすることが、祈る事よりもなによりも、わらわの取るべき行いなのじゃ」
「・・・・・・」
「行け。きよは、わらわが看る」
と、額多之君はきよの傍に座り込み、額にあてた布を水につけて冷やし直す。
「~~~っっ、ああ、もう!」
まつは水桶を乱暴に取り上げた後、
「汲み直して来ます!」
と立ち去って行った。
それから寝ずの番で、額多之君はきよの看病を続けた。
まつも距離を取りながらも、その手助けを続けた。
きよの熱はなかなか下がらず、咳も絶え間なく続いた。
そんな状態が三日三晩続いたある日。
「ゴホッ、ゴホッ」
ついに額多之君にも病が伝染ってしまったらしく、咳が出始めた。全身が熱く、重い。
(まずい・・・)
朦朧としながらも、きよの額の布を取り替えた時だった。
「姫・・・さ、ま」
ずっと気を失っていたきよが、うっすらと目を開いた。
「きよ・・・」
もっと喜びたいのに、身体が重く意識もおぼつかない。
それでも、これだけは伝えなければ。
額多之君は、きよの手を手繰り自分の頬に寄せて言った。
「わらわの子になれ。家族になろう」
すると、きよは弱弱しくも「うん」と頷いた。
それを見た額多之君は、ふっと微笑んだ後、緩やかに意識を失っていった。
額多之君は縁側から飛び降りると、きよの元まで走っていった。
駆けつけると、きよは嬉しそうにふっと笑った後、ふらりと額多之君に倒れかかった。
「きよ!」
なんとか抱き留めると、額多之君は驚き息を飲んだ。
きよの身体が燃えるように熱い。
「
「まつ、きよの身体が熱い」
「え・・・」
「屋敷に運ぶ。まつは身体を冷やす水を用意しておくれ」
「は、はい」
まつは一足先に屋敷へ戻っていく。
額多之君はまるで焼いた炭のように熱いきよの身体を抱き上げて、覚束ない足取りでその後に続いた。
「・・・
はぁはぁと荒い息遣いの合間に、きよが話し始めた。
「父が町から帰ってから・・・熱を出して、そしたら
「話さなくていい。体力をうしなうぞ」
「看病したけど・・・みんな動かなくなって・・・」
「もういい」
額多之君は断ち切る様に言った。
「お前はもう何も不安がることはない。わらわがここにいる」
すると、きよはフッと笑みを浮かべた後気を失ったようで、眠りに落ちていった。
屋敷に戻り、きよを布団に寝かしつけた後。
間を置かず、三人の見知らぬ顔の男たちが屋敷を尋ねてきた。
「ここにひとり小娘が来なかったか。齢は十を数えたぐらいの」
男達は素性を明かすこともせず、突然そう切り出した。
何か急いでいるとも見えたが、
「無礼者。まずはおぬしたちが名乗るのが人に物を尋ねる際の礼儀であろう」
と額多之君は叱責した。
すると三人のうちの一番若い者が「何だと」とカッして突っかかってきたが、
「それはすまない。俺達はこの先にある村のもんだ」
年長者と思しき男がそれを制して、事情を話し始めた。
「村のとある家のもんが、町に出稼ぎに行って、疫病を持ち帰って来やがったんだ。その家族を隔離して家も封鎖してたんだがな、一家は皆死んじまってな。家ごと燃やそうとしたら、娘がひとりいねぇって話になってな。どうやら逃げ出しちまったらしい。病を撒き散らされるようなことになったらたまらん。とっつかまえようと探してるのさ」
話を聞いていて、血の気が引いていくのがわかった。
疫病というおそろしい響き。
そして、この連中はきよを「始末」するために探しているということに。
それでも、精一杯冷静を装って知らないと答えて男たちを追い返した。
「ひ、姫様」
まつが狼狽えながら言った。
「きよはここに置いて、私達も避難しましょう」
「まつ、おぬし一人で行け。わらわはここに残る」
「何を言って・・・!疫病ですよ?このままじゃ私達も・・・!」
「まつ」
額多之君は言った。
「これは、わらわの罪であり罰であり報いであり・・・そして幸せなのじゃ」
「姫様」
「このまま、きよもわらわも病に倒れようとも、こうすることが、祈る事よりもなによりも、わらわの取るべき行いなのじゃ」
「・・・・・・」
「行け。きよは、わらわが看る」
と、額多之君はきよの傍に座り込み、額にあてた布を水につけて冷やし直す。
「~~~っっ、ああ、もう!」
まつは水桶を乱暴に取り上げた後、
「汲み直して来ます!」
と立ち去って行った。
それから寝ずの番で、額多之君はきよの看病を続けた。
まつも距離を取りながらも、その手助けを続けた。
きよの熱はなかなか下がらず、咳も絶え間なく続いた。
そんな状態が三日三晩続いたある日。
「ゴホッ、ゴホッ」
ついに額多之君にも病が伝染ってしまったらしく、咳が出始めた。全身が熱く、重い。
(まずい・・・)
朦朧としながらも、きよの額の布を取り替えた時だった。
「姫・・・さ、ま」
ずっと気を失っていたきよが、うっすらと目を開いた。
「きよ・・・」
もっと喜びたいのに、身体が重く意識もおぼつかない。
それでも、これだけは伝えなければ。
額多之君は、きよの手を手繰り自分の頬に寄せて言った。
「わらわの子になれ。家族になろう」
すると、きよは弱弱しくも「うん」と頷いた。
それを見た額多之君は、ふっと微笑んだ後、緩やかに意識を失っていった。