第38話 額多之君
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だけど真希ちゃんは深くは追及せず、
「じゃあ、三人が戻ってくる前に完全復活した姿をみせないとな」
と、落とした槍を拾い上げた。
だから、無茶したら駄目だってば。
そう思うけれど、変わらず前向きで逞しい真希ちゃんの変わらない姿が嬉しくて、私はもう止めなかった。
「真希ちゃん」
「ん?」
「また私に武術を教えてくれる?」
「あぁ、そういえば以前教えてましたね」
「うん」
「いいっすよ。あの悟 のジャマが入らないうちに、ビシバシいきましょう」
と、真希ちゃんはニッと笑った。
それにつられて、私も二ッと笑った。
「こらこらこらこら」
そこへ九十九さんがやって来た。
「さっき無茶するなって和紗言ってたじゃないか。それなのに武術教えろってどういうことなの」
「九十九さん」
と真希ちゃんが名前を呼んだので、私は不思議に思って尋ねる。
「知り合いなの?」
「あぁ、ガキの頃に一度会ったことがあって」
「そうだったんだ」
「そういうことー」
と、九十九さんが私と真希ちゃんの間に加わる。
「体術なら私が教えられるよ。真希は自分のリハビリに専念しな」
「でも、和紗さんに武術を教える程度なら丁度リハビリに良いと思うんですけど」
「んー?そうなの?和紗、やけに低く見積もられてない?」
「そりゃ真希ちゃんからしたらそうでしょう・・・」
「フーン。で、真希から見た和紗の武術のセンスは?」
「ハッキリ言ってほぼゼロです」
「えっ・・・」
「あはははは。これは手厳しいねぇ」
と笑う九十九さんにつられて、真希ちゃんも笑った。
私も、
「どうせセンスゼロですよ・・・」
といじけつつも、笑った。
まだ心にいくつもの不安と焦りはあったけれど、少しだけ、笑うことが出来た。
・・・屋敷中に、読経が響く。
もう驚かない。
ここは、『額多之君』の生得領域。心の中。彼女の記憶だ。
だけど、戸惑ったのは異様な屋敷の様子だった。
大勢の僧侶が床にひしめき合って座り込み、皆がが鳴る様に経を唱えている。
そして、その傍らにはひとりの女が、髪と装束を振り乱して狂ったように唸り声をあげてのたうち回っている。
(一体何が・・・)
と唖然としていたら、
「あれは憑坐 じゃ」
声がして、私はそちらを振り向いた。
私の傍に額多之君が立っていた。
「憑坐は、修験者が祈祷の際、物の怪を乗り移りさせるために侍らせている者じゃ」
「物の怪・・・」
「父上は、わらわが夫や妾 達を殺したのは、物の怪に憑かれた所為だと思い、それを祓うためこのような大掛かりな加持祈祷を行った」
「・・・・・・」
「しかし、わらわは憑りつかれてなどいなかった。わらわ自身の呪いであの者たちを殺めた」
そう語る額多之君の顔を私は見つめた。
後悔しているのだろうか。
一瞬、そう察したけれど、
「だから、あの憑坐はとんだ猿芝居ということじゃ」
と笑みを浮かべるのを見て、その考えは打ち消した。
「急におしゃべりになったのね」
私は言った。
「さっきは姿を見せようとしなかったのに」
「・・・おぬしの記憶もわらわにも流れ込んできた」
「・・・・・・」
「おぬしが、かの地と所縁のある者と知り、少し語っておこうかと思ったのじゃ」
「かの地・・・」
「この後、わらわは都を追われた。わらわの行いは都中に知れ渡り、捕えて刑に処すべきとの声が上がった。その前に、父上がわらわをかの地に送ったのじゃ」
「糠田が森・・・」
「そう、おぬしの故郷じゃ」
「じゃあ、三人が戻ってくる前に完全復活した姿をみせないとな」
と、落とした槍を拾い上げた。
だから、無茶したら駄目だってば。
そう思うけれど、変わらず前向きで逞しい真希ちゃんの変わらない姿が嬉しくて、私はもう止めなかった。
「真希ちゃん」
「ん?」
「また私に武術を教えてくれる?」
「あぁ、そういえば以前教えてましたね」
「うん」
「いいっすよ。あの
と、真希ちゃんはニッと笑った。
それにつられて、私も二ッと笑った。
「こらこらこらこら」
そこへ九十九さんがやって来た。
「さっき無茶するなって和紗言ってたじゃないか。それなのに武術教えろってどういうことなの」
「九十九さん」
と真希ちゃんが名前を呼んだので、私は不思議に思って尋ねる。
「知り合いなの?」
「あぁ、ガキの頃に一度会ったことがあって」
「そうだったんだ」
「そういうことー」
と、九十九さんが私と真希ちゃんの間に加わる。
「体術なら私が教えられるよ。真希は自分のリハビリに専念しな」
「でも、和紗さんに武術を教える程度なら丁度リハビリに良いと思うんですけど」
「んー?そうなの?和紗、やけに低く見積もられてない?」
「そりゃ真希ちゃんからしたらそうでしょう・・・」
「フーン。で、真希から見た和紗の武術のセンスは?」
「ハッキリ言ってほぼゼロです」
「えっ・・・」
「あはははは。これは手厳しいねぇ」
と笑う九十九さんにつられて、真希ちゃんも笑った。
私も、
「どうせセンスゼロですよ・・・」
といじけつつも、笑った。
まだ心にいくつもの不安と焦りはあったけれど、少しだけ、笑うことが出来た。
・・・屋敷中に、読経が響く。
もう驚かない。
ここは、『額多之君』の生得領域。心の中。彼女の記憶だ。
だけど、戸惑ったのは異様な屋敷の様子だった。
大勢の僧侶が床にひしめき合って座り込み、皆がが鳴る様に経を唱えている。
そして、その傍らにはひとりの女が、髪と装束を振り乱して狂ったように唸り声をあげてのたうち回っている。
(一体何が・・・)
と唖然としていたら、
「あれは
声がして、私はそちらを振り向いた。
私の傍に額多之君が立っていた。
「憑坐は、修験者が祈祷の際、物の怪を乗り移りさせるために侍らせている者じゃ」
「物の怪・・・」
「父上は、わらわが夫や
「・・・・・・」
「しかし、わらわは憑りつかれてなどいなかった。わらわ自身の呪いであの者たちを殺めた」
そう語る額多之君の顔を私は見つめた。
後悔しているのだろうか。
一瞬、そう察したけれど、
「だから、あの憑坐はとんだ猿芝居ということじゃ」
と笑みを浮かべるのを見て、その考えは打ち消した。
「急におしゃべりになったのね」
私は言った。
「さっきは姿を見せようとしなかったのに」
「・・・おぬしの記憶もわらわにも流れ込んできた」
「・・・・・・」
「おぬしが、かの地と所縁のある者と知り、少し語っておこうかと思ったのじゃ」
「かの地・・・」
「この後、わらわは都を追われた。わらわの行いは都中に知れ渡り、捕えて刑に処すべきとの声が上がった。その前に、父上がわらわをかの地に送ったのじゃ」
「糠田が森・・・」
「そう、おぬしの故郷じゃ」