第38話 額多之君
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すると、お父さんの現在の奥さん・・・紗樹ちゃんのお母さんは、優しく微笑んだ。
「和紗さんのことは耕嗣郎さん・・・あなたのお父さんからよく話に聞いていました」
それは、私にとって意外なことだった。
お父さんにとって、私やお母さんは糠田が森に置き去りにした過去なんだと思っていたから。
「耕嗣郎さんとよく似てる」
そして、新しい家族の人にこんな風に自分の存在が受け入れられているとは思いもしていなかった。
だけど、彼女の顔から微笑みはすぐ消えて、
「あの、私は・・・」
と、どこか申し訳なさそうに切り出したので、私は口を開いた。
「知ってます。8月に一度ここへ来たので」
「・・・・・・」
「紗樹ちゃんにも会いました」
すると、彼女の顔が一瞬曇った。
「そうだったんですか。来たことがあるのね。耕嗣郎さん、そのことは話してなくて・・・。驚かれたでしょう」
「・・・・・・」
「その、ずっと和紗さんのことは気にかかっていたの。一度会っておくべきとも思っていた。でも結果的に会いに行かなくて・・・」
どうやら彼女は、私に申し訳なさを抱いているようだった。
でも、私はそんなことはどうでもよかった。
「あの、紗樹ちゃんは今どうしてますか?」
私は彼女の言葉を遮り尋ねた。
唐突な問いに彼女は驚いた顔をした後、すぐ再び表情が曇り、そして今にも泣き出しそうに顔を歪ませた。
それで、異変は既に起きたことを感じ取った。
「何かあったんですね」
「・・・・・・」
彼女は口元を手で覆っているが、嗚咽はすり抜けて聞こえてくる。
「・・・数日前に、高熱で意識を失って・・・」
嗚咽交じりに彼女は語り始めた。
「そのまま入院になったんです。それからずっと意識が戻らなくて。でも、それが、突然病院から姿を消して・・・」
「いつからですか?」
「・・・1日から・・・」
私と九十九さんに緊張感が走った。
11月1日。
『渋谷事変』後、羂索が『死滅回游』を宣言した直後だ。
他の泳者 同様、羂索に呪物を取り込まされた紗樹ちゃんも覚醒したんだ。
「1日・・・」
呟いて計算する。
現在、7日。
既に『死滅回游』に参加している可能性が高い。
「既に警察には捜索してもらってます」
涙を拭って彼女は話を続けた。
「病院の監視カメラでは、紗樹が自力で歩行している様子が映っていました。だから、状況を見ても誘拐の可能性は低いと・・・」
「それで今、お父さんは・・・」
「警察とは別に独自で捜索に出ています」
「・・・・・・」
気持ちは焦るばかりで、考えがまとまらない。
九十九さんも思案中なのか、一切言葉を発しない。
その時だった。
ジリリリ・・・・
店の方から、電話が音が聞こえてきた。
「・・・お客さんからの問い合わせかも。少し待ってもらっていいですか?」
と、彼女は店の方へ行ってしまった。
「夏油君の言ったことはハッタリじゃなかったようだね」
九十九さんが言った。
「『死滅回游』・・・こんなバカげたことをよくもまぁ」
「どうすれば・・・」
「こうなることは想定していただろう。そう不安な顔をするな。彼女が見たらますます不安にさせてしまうよ」
そう話している間にも、彼女、紗樹ちゃんのお母さんは戻ってきた。
私は慌てて冷静を務める。
しかし、
「あの・・・」
彼女が困惑した様子で言った。
「あの、電話の相手が、和紗さんに変わってくれと・・・」
「え?」
そう言われて、私は眉を顰めた。
「和紗さんのことは耕嗣郎さん・・・あなたのお父さんからよく話に聞いていました」
それは、私にとって意外なことだった。
お父さんにとって、私やお母さんは糠田が森に置き去りにした過去なんだと思っていたから。
「耕嗣郎さんとよく似てる」
そして、新しい家族の人にこんな風に自分の存在が受け入れられているとは思いもしていなかった。
だけど、彼女の顔から微笑みはすぐ消えて、
「あの、私は・・・」
と、どこか申し訳なさそうに切り出したので、私は口を開いた。
「知ってます。8月に一度ここへ来たので」
「・・・・・・」
「紗樹ちゃんにも会いました」
すると、彼女の顔が一瞬曇った。
「そうだったんですか。来たことがあるのね。耕嗣郎さん、そのことは話してなくて・・・。驚かれたでしょう」
「・・・・・・」
「その、ずっと和紗さんのことは気にかかっていたの。一度会っておくべきとも思っていた。でも結果的に会いに行かなくて・・・」
どうやら彼女は、私に申し訳なさを抱いているようだった。
でも、私はそんなことはどうでもよかった。
「あの、紗樹ちゃんは今どうしてますか?」
私は彼女の言葉を遮り尋ねた。
唐突な問いに彼女は驚いた顔をした後、すぐ再び表情が曇り、そして今にも泣き出しそうに顔を歪ませた。
それで、異変は既に起きたことを感じ取った。
「何かあったんですね」
「・・・・・・」
彼女は口元を手で覆っているが、嗚咽はすり抜けて聞こえてくる。
「・・・数日前に、高熱で意識を失って・・・」
嗚咽交じりに彼女は語り始めた。
「そのまま入院になったんです。それからずっと意識が戻らなくて。でも、それが、突然病院から姿を消して・・・」
「いつからですか?」
「・・・1日から・・・」
私と九十九さんに緊張感が走った。
11月1日。
『渋谷事変』後、羂索が『死滅回游』を宣言した直後だ。
他の
「1日・・・」
呟いて計算する。
現在、7日。
既に『死滅回游』に参加している可能性が高い。
「既に警察には捜索してもらってます」
涙を拭って彼女は話を続けた。
「病院の監視カメラでは、紗樹が自力で歩行している様子が映っていました。だから、状況を見ても誘拐の可能性は低いと・・・」
「それで今、お父さんは・・・」
「警察とは別に独自で捜索に出ています」
「・・・・・・」
気持ちは焦るばかりで、考えがまとまらない。
九十九さんも思案中なのか、一切言葉を発しない。
その時だった。
ジリリリ・・・・
店の方から、電話が音が聞こえてきた。
「・・・お客さんからの問い合わせかも。少し待ってもらっていいですか?」
と、彼女は店の方へ行ってしまった。
「夏油君の言ったことはハッタリじゃなかったようだね」
九十九さんが言った。
「『死滅回游』・・・こんなバカげたことをよくもまぁ」
「どうすれば・・・」
「こうなることは想定していただろう。そう不安な顔をするな。彼女が見たらますます不安にさせてしまうよ」
そう話している間にも、彼女、紗樹ちゃんのお母さんは戻ってきた。
私は慌てて冷静を務める。
しかし、
「あの・・・」
彼女が困惑した様子で言った。
「あの、電話の相手が、和紗さんに変わってくれと・・・」
「え?」
そう言われて、私は眉を顰めた。