第38話 額多之君
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「その身に渦巻く哀しみ、妬み、苦しみ、憎しみ・・・。何故それを己が身に向ける」
唐突に投げかけられた言葉の意味がわからず、額多之君は眉をひそめる。
そこにはもう、恐怖はなかった。
「・・・それでどうしろと」
宿儺の手を押しのけ、額多之君は言った。
「私にどうしろというのですか?」
すると、宿儺はキョトンと目を丸めた。
「何だ。お前、自分の力に気づいていないのか」
「力・・・?」
私にどこにそんなものが、と言いたげに額多之君は呟いた。
「丁度退屈していたところだ」
訝し気な額多之君を差し置いて、宿儺はひとり話を続けた。
「俺に媚びへつらう貴族の面を見るのも、唐菓子にも食い飽きた。お前に呪術を教え込むのも、暇つぶしとしては悪くない」
「・・・・・・」
「その後に見られる余興もな」
そう言って宿儺は笑みを浮かべた。
その笑みを額多之君は魅入られたように見上げる。
(いけない)
宿儺の言葉に耳を傾けてはいけない。
だけど、私の声は額多之君には届かない。
灯篭の灯りが消えて、ふたつの影は闇に消える。
───そして、再び明かりが灯り、私は再び屋敷の中にいた。
だけど、ここは額多之君がいた屋敷とは違う。
どこか別の屋敷だった。
「ふふふ・・・」
楽し気な笑い声が聞こえてきて、私はそちらに目を向けた。
(あれは・・・)
額多之君の夫と、額多之君ではない他の女性・・・そして彼女の腕の中には小さな赤ちゃんがいる。
額多之君の夫・・・もはやそう呼ぶのもおかしいか。彼は赤ん坊を笑わせようと、変顔をしている。
一見すると、それは幸福な光景だ。
だけど、額多之君のなく姿を見てきた私は複雑な気持ちになる。
その時だった。
「べろべろば・・・あ?」
赤ん坊をあやしていた男の頭が、滑稽なまま表情のまま床を転がる。
分離した身体の首からドクドクと血が溢れて流れる。
「旦那様・・・?」
赤ん坊を抱いた女は、突然のことに状況がわからず呆然としている。
そんな時、一つの影が女と赤ん坊に重なった。
「・・・・・・」
女は茫然としたまま、顔を上げた。
すると倒れて動かなくなった背後に、血しぶきを浴びた額多之君が立っていた。
「あ、あなたは・・・」
女は、額多之君を知らないようだった。
いや、存在は知ってはいても面識がなく顔は知らないのだろう。
「・・・・・・」
額多之君は、血走る目で女と赤ん坊を見下ろした。
(だめ・・・)
額多之君がどうするつもりなのか察した私は、額多之君に立ちはだかった。
しかし、額多之君は私をすり抜けて女と赤ん坊に詰め寄る。
女は赤ん坊を抱いたまま、後ずさりする。
「いやぁぁぁっ!」
ザシュッ
血しぶきが、屏風に描かれた美しい絵を赤く染めた。
「おぎゃあ、おぎゃあ」
首のない母親に抱かれたまま泣き声を上げる赤ん坊を、額多之君はそっと抱き上げる。そのまま両手で天井に向けてめいいっぱい掲げた。
そして───。
「駄目ーーーーっ!」
ビクッと身体が震えて、目が覚ました。
(夢・・・)
いや、違う。
私は額多之君の生得領域の中にいて、額多之君の記憶をみたんだ。
(宿儺が・・・)
まさか、額多之君と宿儺が関わりがあったなんて。
「・・・・・・」
私はそっと自分の頬に触れた。
額多之君は出現していない。
いくつも尋ねたいことがあるけれど、きっと取り合おうとしないだろう。
ゆっくりと上半身を起こす。
私は、畳の部屋に敷かれた布団の上に寝ていた。
(ここは・・・)
と辺りを見回した時だった。
「Ms.鶴來」
襖越しに呼びかける声が聞こえてきた。
唐突に投げかけられた言葉の意味がわからず、額多之君は眉をひそめる。
そこにはもう、恐怖はなかった。
「・・・それでどうしろと」
宿儺の手を押しのけ、額多之君は言った。
「私にどうしろというのですか?」
すると、宿儺はキョトンと目を丸めた。
「何だ。お前、自分の力に気づいていないのか」
「力・・・?」
私にどこにそんなものが、と言いたげに額多之君は呟いた。
「丁度退屈していたところだ」
訝し気な額多之君を差し置いて、宿儺はひとり話を続けた。
「俺に媚びへつらう貴族の面を見るのも、唐菓子にも食い飽きた。お前に呪術を教え込むのも、暇つぶしとしては悪くない」
「・・・・・・」
「その後に見られる余興もな」
そう言って宿儺は笑みを浮かべた。
その笑みを額多之君は魅入られたように見上げる。
(いけない)
宿儺の言葉に耳を傾けてはいけない。
だけど、私の声は額多之君には届かない。
灯篭の灯りが消えて、ふたつの影は闇に消える。
───そして、再び明かりが灯り、私は再び屋敷の中にいた。
だけど、ここは額多之君がいた屋敷とは違う。
どこか別の屋敷だった。
「ふふふ・・・」
楽し気な笑い声が聞こえてきて、私はそちらに目を向けた。
(あれは・・・)
額多之君の夫と、額多之君ではない他の女性・・・そして彼女の腕の中には小さな赤ちゃんがいる。
額多之君の夫・・・もはやそう呼ぶのもおかしいか。彼は赤ん坊を笑わせようと、変顔をしている。
一見すると、それは幸福な光景だ。
だけど、額多之君のなく姿を見てきた私は複雑な気持ちになる。
その時だった。
「べろべろば・・・あ?」
赤ん坊をあやしていた男の頭が、滑稽なまま表情のまま床を転がる。
分離した身体の首からドクドクと血が溢れて流れる。
「旦那様・・・?」
赤ん坊を抱いた女は、突然のことに状況がわからず呆然としている。
そんな時、一つの影が女と赤ん坊に重なった。
「・・・・・・」
女は茫然としたまま、顔を上げた。
すると倒れて動かなくなった背後に、血しぶきを浴びた額多之君が立っていた。
「あ、あなたは・・・」
女は、額多之君を知らないようだった。
いや、存在は知ってはいても面識がなく顔は知らないのだろう。
「・・・・・・」
額多之君は、血走る目で女と赤ん坊を見下ろした。
(だめ・・・)
額多之君がどうするつもりなのか察した私は、額多之君に立ちはだかった。
しかし、額多之君は私をすり抜けて女と赤ん坊に詰め寄る。
女は赤ん坊を抱いたまま、後ずさりする。
「いやぁぁぁっ!」
ザシュッ
血しぶきが、屏風に描かれた美しい絵を赤く染めた。
「おぎゃあ、おぎゃあ」
首のない母親に抱かれたまま泣き声を上げる赤ん坊を、額多之君はそっと抱き上げる。そのまま両手で天井に向けてめいいっぱい掲げた。
そして───。
「駄目ーーーーっ!」
ビクッと身体が震えて、目が覚ました。
(夢・・・)
いや、違う。
私は額多之君の生得領域の中にいて、額多之君の記憶をみたんだ。
(宿儺が・・・)
まさか、額多之君と宿儺が関わりがあったなんて。
「・・・・・・」
私はそっと自分の頬に触れた。
額多之君は出現していない。
いくつも尋ねたいことがあるけれど、きっと取り合おうとしないだろう。
ゆっくりと上半身を起こす。
私は、畳の部屋に敷かれた布団の上に寝ていた。
(ここは・・・)
と辺りを見回した時だった。
「Ms.鶴來」
襖越しに呼びかける声が聞こえてきた。