第37話 香志和彌神社
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ドオォオーン・・・!!
背後の本殿の屋根が、突然大きな音を立てて崩れ落ちた。
「!」
私とサトルは驚きながらも立ち上がり、慌ててその場を離れた。
振り返るとそこには、本殿の屋根を踏みつぶしている大型呪霊がいた。
「こんなところにまで・・・!」
私とサトルは身構える。
すると九十九さんが、
「和紗!」
私達の元へ駆けつけようとするが、
「グヴヴルヴル・・・」
九十九さんの背後から、さらにもう一体大型呪霊が現れた。
「クッ・・・」
その大型呪霊の攻撃を寸でのところで九十九さんは避けた。
「和紗・・・」
私を案じながらも、九十九さんはそれと対峙せざるを得ない。
そして、私は。
「ガウッガウゥルブガウッ」
踏みつぶした本殿の屋根から足を引き抜き、ドシンッと大きな足音を立てながらこっちへ迫って来る大型呪霊と対峙する。
「・・・・・っ」
その恐ろしさに、足が竦んで身動きできなくなる。
大型呪霊が足を上げ、その影の下に私は立ち尽くす。
ゆっくりと、足が降ろされていく。
その時だった。
『これが和紗の
『馴染んでくれば自ずと理解するはずよ、この術式の扱いや全てを』
そうだ。
今の私には。
「『造砡包呪』」
心の内から浮かんできた詞を口にしながら、両の手の指を次々と様々な形に組んでいく。
なぜ、こんなことが出来るのかわからないままに。
ただ、この力は確かに私のもので、確かに今私の中に戻ってきた。
そんな感覚だけがあった。
「『月ヶ瀬』『沢辺の螢』『初雁』」
私の手の中に、呪力の球体が造り出される。
キュルルルル・・・・
さらに呪力の球体は更に大きく形を変え、ドウッと凄まじい勢いで空に向かって飛びあがっていく。
「和紗!」
もう一体の大型呪霊を祓い、九十九さんが声を上げながらこちらに向かって駆けてくる。
しかし、
ドオンッ
大型呪霊は既に私諸共地面を踏み抜いていた。
「ガウッガウッ」
勝ち誇ったように、大型呪霊が咆哮する。
咆哮が鳴り響く中、九十九さんは茫然と立ち尽くしていた。
「ガウッガウガウッウルルル・・・ガウッ!?」
大型呪霊が、突如、何か異変を感じたように動揺した。
すぐにその訳を大型呪霊は理解した。
足が、私を踏み抜いた足がホロホロと崩れ落ち始めていたからだ。
「ガウッ!?」
片足が朽ち落ちて、大型呪霊はバランスを崩し尻もちをつく。
そして、
「『退魔』の力を盾に形成した」
と大型呪霊が踏み抜いた地面の下から、私は姿をのぞかせた。
「更に足場を呪力で形成したマットを敷いて踏まれた際の衝撃を吸収させた」
そう、そのおかげで私とサトルはほぼ無傷だ。
「・・・そして」
キュルルル・・・!
空に向かって上がった球体が、鷹の形になって大型呪霊の頭部をめがけて急降下して行く。
そしてぶつかると、『退魔』の力が大型呪霊の頭部で大きく爆ぜた。
「ガウ・・・」
大型呪霊は倒れ、そのまま煤と化して風に流れていった。
その様子を見て、私は安堵して深く息を吐いた。
それと同時に術式は解除され、『退魔』の盾もマットも鷹も消滅した。
「Excellent!」
と、拍手をしながら九十九さんが歩み寄る。
その目は興味津々そうにでキラキラとしている。
「それが君の術式ってワケだ」
「・・・・・・」
私は九十九さんの顔を一瞥した後、頷いてそのままうつむいた。
「『造砡包呪呪術』。五条さんはそう呼んでました。呪力を物質化する力だって」
「ふむ。でもさっきのはそれだけに留まらないような・・・」
「実際は、呪力を成形してその成形した物質の性質と性能を呪力に付与する・・・。そういう術式だったんです」
と説明すると、九十九さんは益々興味深そうに目を輝かせた。