第37話 香志和彌神社
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「お母さん!」
私は慌てて駆けより、お母さんの腕を引っ張ってお母さんを捕えようとする手から引き離そうとする。
だけど、手は幹からツタの様に次々と伸びてきて、次第にお母さんを幹の中に引きずり込み始めた。
「離して、和紗」
「いやっ!」
「これは、報いなの。『縛り』を破った」
「報いだなんて・・・!」
私はお母さんの腕を必死に引っ張りながら叫んだ。
「『縛り』を破ったのは私なのに・・・!」
その間にも、お母さんの身体は幹の中に引きずり飲まれていく。
つられて、私の手も引きずり飲まれていく。
「離しなさい、和紗!」
お母さんが怒鳴った。
私はビクッと肩を震わせる。
「和紗まで引き込まれてしまったら、ここに来た意味がないでしょう!?」
「・・・・・・」
「五条さんを救い出すんでしょう?お父さんを守るんでしょう?」
「・・・・・・」
「なら、私のしたことを無碍にしないで」
「・・・・・・」
私はゆっくりとお母さんから手を放し、手を引き抜いた。
「魂は輪の様に廻 るの」
お母さんは段々と幹へ減り込むように沈み込んで、やがて見えるのは顔だけになった。
「でも、私がこれから向かうのはその輪廻から外れたところ」
「・・・・・」
「でも、それでいいの」
「・・・・・」
「例えまた生まれ変わって、その人生がどれだけ恵まれているものだとしても、今以上の幸福は得られないから・・・」
「・・・お母さん」
「和紗」
やがて、顔も沈み込んで完全にお母さんの姿は見えなくなった。
「耕嗣郎さんを、お願いね」
その言葉を最後に、辺りは静かになった。
「・・・・・・」
私はクスノキの幹に顔を寄せ、そのまま声もなく泣いた。
私は、本当に親不孝な娘だ。
結局、お母さんだけを犠牲にするしか出来なかった。
喜ばせることも、安心させてあげることも。
でも。
「・・・行かなきゃ」
いつまでも泣いたままじゃ、それこそ本当にお母さんの行為を無碍にしてしまう。
私はクスノキから離れた。
涙を拭い、そして、帳の縁のところまで歩いていく。
「・・・・・・」
結界から出る前に、もう一度立ち止まりクスノキを見上げた。
木の枝が風に吹かれて揺れる。
───和紗
あの日のように、お母さんが部屋の窓から顔を覗かせて手を振っているのが見えた。
バシュッ・・・
私が外へ出た瞬間、帳は上がって消えた。
待機していた九十九さんが、ハッとして顔を上げた。
「和紗」
ホッとした面持ちで、九十九さんが私のもとへ駆け寄る。
「大丈夫かい?術式は・・・」
と、途中で言葉を飲み込んだ。
そして、私の足に目を向ける。
「・・・・・」
私の足は汚れて、石段を往復するうちに擦りむいた傷で血だらけになっていた。
そして、何よりも。
「・・・っく、ひっく・・・」
やはり涙を止められない私を心配そうにみつめる。
「・・・頑張ったね」
九十九さんは私の肩に腕を回して、
「少し休もう」
と、そのまま本殿まで私を誘導した。
そして、私を座らせた。
だけどすぐに、
「・・・行きましょう」
私は涙を拭い言った。
「時間が惜しい。急いで戻りましょう」
すると、九十九さんは驚いて目を丸めた。
「何をそんなに生き急いでるんだ」
「そんなこと言わなくてもわかるでしょう」
「少し落ち着け。慌てて今の状態で『死滅回游』に参加しても無駄死にするだけだぞ」
「・・・・・・」
「まずはその足を綺麗にしなきゃ。待ってろ」
と、九十九さんは手水舎へ歩いて行った。
それと入れ違いに、サトルが脱いだ私の靴を持ってきた。
「・・・ありがとう」
私は靴を受け取り、サトルの頭を撫でた。
その次の瞬間。
私は慌てて駆けより、お母さんの腕を引っ張ってお母さんを捕えようとする手から引き離そうとする。
だけど、手は幹からツタの様に次々と伸びてきて、次第にお母さんを幹の中に引きずり込み始めた。
「離して、和紗」
「いやっ!」
「これは、報いなの。『縛り』を破った」
「報いだなんて・・・!」
私はお母さんの腕を必死に引っ張りながら叫んだ。
「『縛り』を破ったのは私なのに・・・!」
その間にも、お母さんの身体は幹の中に引きずり飲まれていく。
つられて、私の手も引きずり飲まれていく。
「離しなさい、和紗!」
お母さんが怒鳴った。
私はビクッと肩を震わせる。
「和紗まで引き込まれてしまったら、ここに来た意味がないでしょう!?」
「・・・・・・」
「五条さんを救い出すんでしょう?お父さんを守るんでしょう?」
「・・・・・・」
「なら、私のしたことを無碍にしないで」
「・・・・・・」
私はゆっくりとお母さんから手を放し、手を引き抜いた。
「魂は輪の様に
お母さんは段々と幹へ減り込むように沈み込んで、やがて見えるのは顔だけになった。
「でも、私がこれから向かうのはその輪廻から外れたところ」
「・・・・・」
「でも、それでいいの」
「・・・・・」
「例えまた生まれ変わって、その人生がどれだけ恵まれているものだとしても、今以上の幸福は得られないから・・・」
「・・・お母さん」
「和紗」
やがて、顔も沈み込んで完全にお母さんの姿は見えなくなった。
「耕嗣郎さんを、お願いね」
その言葉を最後に、辺りは静かになった。
「・・・・・・」
私はクスノキの幹に顔を寄せ、そのまま声もなく泣いた。
私は、本当に親不孝な娘だ。
結局、お母さんだけを犠牲にするしか出来なかった。
喜ばせることも、安心させてあげることも。
でも。
「・・・行かなきゃ」
いつまでも泣いたままじゃ、それこそ本当にお母さんの行為を無碍にしてしまう。
私はクスノキから離れた。
涙を拭い、そして、帳の縁のところまで歩いていく。
「・・・・・・」
結界から出る前に、もう一度立ち止まりクスノキを見上げた。
木の枝が風に吹かれて揺れる。
───和紗
あの日のように、お母さんが部屋の窓から顔を覗かせて手を振っているのが見えた。
バシュッ・・・
私が外へ出た瞬間、帳は上がって消えた。
待機していた九十九さんが、ハッとして顔を上げた。
「和紗」
ホッとした面持ちで、九十九さんが私のもとへ駆け寄る。
「大丈夫かい?術式は・・・」
と、途中で言葉を飲み込んだ。
そして、私の足に目を向ける。
「・・・・・」
私の足は汚れて、石段を往復するうちに擦りむいた傷で血だらけになっていた。
そして、何よりも。
「・・・っく、ひっく・・・」
やはり涙を止められない私を心配そうにみつめる。
「・・・頑張ったね」
九十九さんは私の肩に腕を回して、
「少し休もう」
と、そのまま本殿まで私を誘導した。
そして、私を座らせた。
だけどすぐに、
「・・・行きましょう」
私は涙を拭い言った。
「時間が惜しい。急いで戻りましょう」
すると、九十九さんは驚いて目を丸めた。
「何をそんなに生き急いでるんだ」
「そんなこと言わなくてもわかるでしょう」
「少し落ち着け。慌てて今の状態で『死滅回游』に参加しても無駄死にするだけだぞ」
「・・・・・・」
「まずはその足を綺麗にしなきゃ。待ってろ」
と、九十九さんは手水舎へ歩いて行った。
それと入れ違いに、サトルが脱いだ私の靴を持ってきた。
「・・・ありがとう」
私は靴を受け取り、サトルの頭を撫でた。
その次の瞬間。