第37話 香志和彌神社
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
さっきまで朗らかだったお母さんの雰囲気が、また頑なになっていくのがわかった。
「和紗、お願い。『糠田が森』のことは全て忘れて」
「お母さん、私・・・」
「術式 のことも、私達の運命を弄んだヤツのことも、何もかも忘れて」
「・・・・・・」
「お願い、忘れると言って。戦うなんて言わないで」
「・・・そんなこと、出来ない」
すると、お母さんは眉を顰めた。
「どうして・・・どうしてあなたは私の願いを聞き入れてくれないの!?少しも・・・これっぽっちも!」
「・・・・・・」
「私はただ、和紗に幸せになってほしいだけなの・・・!」
と、お母さんはまた涙をこぼした。
胸がチリジリと痛む。
だけど。
「・・・幸せになんて、なれない」
だけど、私は怯まず続けた。
「羂索は、五条さんを『獄門彊』に閉じ込めて攫っていった。そして、今度はお父さんまで巻き込もうとしている」
「え・・・」
「戦わなきゃ、大切な人達を救えないし守れない」
「・・・・・・」
「大切な人達を救えなきゃ、守れなきゃ、私は幸せになんかなれない」
私がそう言い切ると、
「・・・・・・」
お母さんは押し黙り、自分の膝の上に顔を伏せた。
泣いているのか、その肩と背中は小さく震えている。
しばらくすると顔を上げて立ちあがり、少し距離をあけて私の前に立った。そして手のひらを合掌するように合わせて、
「『一重梅』『春の夢』」
と呟き、ゆっくりと手のひらを開いた。
すると開いた手のひらに淡く光る球体があった。
「・・・・・・」
私は息を飲んだ。
でも、私はそれを知っている。
呪力を物質化させる『造砡包呪術』。
だけどそれだけに留まらず、
「!」
呪力の球体は形を変え、蝶の様な形になると、フワフワと羽ばたき始めた。
「これが和紗の術式 よ」
羽ばたく蝶を見つめながら、お母さんが言った。
「呪力を形成し、その形成した物の性質や性能を呪力に付与する」
「え・・・」
「それが、和紗の術式 」
と、お母さんはゆっくりと私の方へ歩み寄り、真ん前に来るとしゃがみ込んだ。そして私の手を取ると、
「返すわ。和紗に」
と言って、私の両手をグッと固く握った。
ドクンッ
その瞬間、私の心臓は激しく鼓動を打った。
身体が熱い。
まるで、血の流れが激しい速さで逆流しているようだ。
だけど、その熱さがだんだん馴染んでいくことに気づく。
鼓動と熱さが落ち着き始めた頃、
「・・・・・・」
お母さんは両手を解き、ゆっくりと立ちあがった。
「これで、返したからね」
と、お母さんは微笑む。
「これで和紗の身体に再び術式が刻まれた。馴染んでくれば自ずと理解するはずよ、この術式の扱いや全てを」
「・・・・・・」
「だけど、『極の番』だけは決して使わないで」
「『極の番』?」
「『明埜乃舞降鶴乃御砡 』」
私は驚いて、大きく目を見開いた。
「お願い。この約束だけは絶対に守って」
と言うと、お母さんは踵をかえして元いた大きなクスノキへと向かって歩いていく。
「お母さん」
私も立ち上がり、その後を追う。
お母さんはクスノキのところに至ると、木の幹に背中を預けた。
「和紗」
幹にもたれかかりながら、お母さんは言った。
「和紗はさっき大丈夫って言ったけれど、それでもお母さんはずっと心配だわ」
「・・・・・・」
「和紗がどれだけ大丈夫でも、ずっとずっと・・・」
「お母さん・・・」
「でも、私が出来ることはもう何もない」
そう言い終えた次の瞬間。
「!!」
クスノキの幹から無数の手が生えて伸びてきて、お母さんの身体を捕えた。
「和紗、お願い。『糠田が森』のことは全て忘れて」
「お母さん、私・・・」
「
「・・・・・・」
「お願い、忘れると言って。戦うなんて言わないで」
「・・・そんなこと、出来ない」
すると、お母さんは眉を顰めた。
「どうして・・・どうしてあなたは私の願いを聞き入れてくれないの!?少しも・・・これっぽっちも!」
「・・・・・・」
「私はただ、和紗に幸せになってほしいだけなの・・・!」
と、お母さんはまた涙をこぼした。
胸がチリジリと痛む。
だけど。
「・・・幸せになんて、なれない」
だけど、私は怯まず続けた。
「羂索は、五条さんを『獄門彊』に閉じ込めて攫っていった。そして、今度はお父さんまで巻き込もうとしている」
「え・・・」
「戦わなきゃ、大切な人達を救えないし守れない」
「・・・・・・」
「大切な人達を救えなきゃ、守れなきゃ、私は幸せになんかなれない」
私がそう言い切ると、
「・・・・・・」
お母さんは押し黙り、自分の膝の上に顔を伏せた。
泣いているのか、その肩と背中は小さく震えている。
しばらくすると顔を上げて立ちあがり、少し距離をあけて私の前に立った。そして手のひらを合掌するように合わせて、
「『一重梅』『春の夢』」
と呟き、ゆっくりと手のひらを開いた。
すると開いた手のひらに淡く光る球体があった。
「・・・・・・」
私は息を飲んだ。
でも、私はそれを知っている。
呪力を物質化させる『造砡包呪術』。
だけどそれだけに留まらず、
「!」
呪力の球体は形を変え、蝶の様な形になると、フワフワと羽ばたき始めた。
「これが和紗の
羽ばたく蝶を見つめながら、お母さんが言った。
「呪力を形成し、その形成した物の性質や性能を呪力に付与する」
「え・・・」
「それが、和紗の
と、お母さんはゆっくりと私の方へ歩み寄り、真ん前に来るとしゃがみ込んだ。そして私の手を取ると、
「返すわ。和紗に」
と言って、私の両手をグッと固く握った。
ドクンッ
その瞬間、私の心臓は激しく鼓動を打った。
身体が熱い。
まるで、血の流れが激しい速さで逆流しているようだ。
だけど、その熱さがだんだん馴染んでいくことに気づく。
鼓動と熱さが落ち着き始めた頃、
「・・・・・・」
お母さんは両手を解き、ゆっくりと立ちあがった。
「これで、返したからね」
と、お母さんは微笑む。
「これで和紗の身体に再び術式が刻まれた。馴染んでくれば自ずと理解するはずよ、この術式の扱いや全てを」
「・・・・・・」
「だけど、『極の番』だけは決して使わないで」
「『極の番』?」
「『
私は驚いて、大きく目を見開いた。
「お願い。この約束だけは絶対に守って」
と言うと、お母さんは踵をかえして元いた大きなクスノキへと向かって歩いていく。
「お母さん」
私も立ち上がり、その後を追う。
お母さんはクスノキのところに至ると、木の幹に背中を預けた。
「和紗」
幹にもたれかかりながら、お母さんは言った。
「和紗はさっき大丈夫って言ったけれど、それでもお母さんはずっと心配だわ」
「・・・・・・」
「和紗がどれだけ大丈夫でも、ずっとずっと・・・」
「お母さん・・・」
「でも、私が出来ることはもう何もない」
そう言い終えた次の瞬間。
「!!」
クスノキの幹から無数の手が生えて伸びてきて、お母さんの身体を捕えた。