第37話 香志和彌神社
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あまりもの静けさに返って不安を覚えて辺りを見回す。
すると、本殿側にそびえるクスノキの巨木の後ろに、人影がひとつ見えた。
「・・・・・・」
私はそこに視線を留めて、息を飲んだ。
その人はクスノキの後ろから姿を現すと、ゆっくりと私の方へ近づいて来る。
女の人だ。
彼女が誰なのかは、すぐにわからなかった。
ただ、泣きたいほどの懐かしさが胸に湧き出てきた。
そして、
「和紗」
彼女が私の名前を呼んだ時、それは一気に決壊して、涙がボロボロと溢れて私は嗚咽した。
「お母さん・・・っ」
そう、彼女はお母さんだった。
幼い頃の記憶の中の面影のままの、私のお母さんだった。
「う、う、うぅーーーっ」
私は両手で顔を覆い、身体をくの字に曲げて俯いて、肩を震わせながら嗚咽し続けた。
すると、そっと頭を包み込まれるように抱き締められた。
「和紗」
と、お母さんはもう一度私を呼んだ。
私は一度目を見開いた後、再びギュッと目を閉じた。
「ごめんなさい・・・!」
私は嗚咽しながら言った。
「ごめんなさい。ごめんなさい・・・!私の、せ、いでっ、お母さんが・・・!」
それは長い間ずっと胸に支えていた思いだった。
誰かに擁護してもらっても、決して消えることない自責の念だった。
「いいのよ」
すると、お母さんは言った。
「和紗のせいなんかじゃない。これは、お母さんが選んだことなの」
「・・・・・・」
私は両手を外して顔を上げた。
視線がまっすぐお母さんのものとぶつかる。
いつも見上げていたのに、同じ高さになっている。
お母さんは困ったように笑みを浮かべると、指先で私の涙を拭った。
「あぁもぅ、美人が台無し」
「・・・・・・」
「すっかり大きくなって」
そして、その手で私の髪を撫でる。
「少し、座ろうか」
お母さんにそう促されて、私達は本殿の前の階段に座り込んだ。
「・・・・・・」
少し冷静さを取り戻して、ふと私は考えた。
ここは、一体どういう空間何だろう。
あの世なのか。それとも、奇子の領域の様な空間なのだろうか。
「ここは呪 いなの」
私の胸の内を見透かしたように、お母さんが言った。
「夢と現実の狭間よ」
「お母さんは・・・」
「私の肉体はとっくに消えている。ただ、魂だけがここに留まっているの。それが『縛り』だから」
そして、お母さんがひどく悲しそうな顔で私を見つめて、言った。
「どうしてここへ来たの」
それは、明らかに責め立てる口調だった。
思いがけないことに、私は狼狽える。
お母さんは追い打ちを駆けるように続けた。
「大きくなった和紗に会えて嬉しい。だけど、どうして?ここに来たということは・・・」
「お母さん」
私は自分を奮い立たせて言った。
「お母さんに、お願いがあるの。お母さんが私の代わりに負い被ったものを・・・術式を、私に返してほしいの」
すると、お母さんは愕然として目を見開きその奥を震わせた。
「何を言ってるの・・・」
「・・・・・・」
「そんなことをしたら」
「それは、私に必要な武器なの」
お母さんの悲痛な声を遮り、私は言った。
「私とお母さんの運命を弄んだヤツに立ち向かうために、私は、戦わなくてはいけないの」
「・・・戦いだなんて・・・」
すると、お母さんの表情は悲しみから怒りの色へと変わっていった。
「・・・それじゃあ、私は何のために?」
そう問われて、私は再び狼狽えて言葉を飲み込んだ。
「私がしたことは、何のためだったの?私のしたことに、意味はなかったの?」
「お母さん・・・」
「和紗が、あのラベンダー色のランドセルを背負った姿を見たい。そんなささやかな夢さえ犠牲にしたのに・・・」
すると、本殿側にそびえるクスノキの巨木の後ろに、人影がひとつ見えた。
「・・・・・・」
私はそこに視線を留めて、息を飲んだ。
その人はクスノキの後ろから姿を現すと、ゆっくりと私の方へ近づいて来る。
女の人だ。
彼女が誰なのかは、すぐにわからなかった。
ただ、泣きたいほどの懐かしさが胸に湧き出てきた。
そして、
「和紗」
彼女が私の名前を呼んだ時、それは一気に決壊して、涙がボロボロと溢れて私は嗚咽した。
「お母さん・・・っ」
そう、彼女はお母さんだった。
幼い頃の記憶の中の面影のままの、私のお母さんだった。
「う、う、うぅーーーっ」
私は両手で顔を覆い、身体をくの字に曲げて俯いて、肩を震わせながら嗚咽し続けた。
すると、そっと頭を包み込まれるように抱き締められた。
「和紗」
と、お母さんはもう一度私を呼んだ。
私は一度目を見開いた後、再びギュッと目を閉じた。
「ごめんなさい・・・!」
私は嗚咽しながら言った。
「ごめんなさい。ごめんなさい・・・!私の、せ、いでっ、お母さんが・・・!」
それは長い間ずっと胸に支えていた思いだった。
誰かに擁護してもらっても、決して消えることない自責の念だった。
「いいのよ」
すると、お母さんは言った。
「和紗のせいなんかじゃない。これは、お母さんが選んだことなの」
「・・・・・・」
私は両手を外して顔を上げた。
視線がまっすぐお母さんのものとぶつかる。
いつも見上げていたのに、同じ高さになっている。
お母さんは困ったように笑みを浮かべると、指先で私の涙を拭った。
「あぁもぅ、美人が台無し」
「・・・・・・」
「すっかり大きくなって」
そして、その手で私の髪を撫でる。
「少し、座ろうか」
お母さんにそう促されて、私達は本殿の前の階段に座り込んだ。
「・・・・・・」
少し冷静さを取り戻して、ふと私は考えた。
ここは、一体どういう空間何だろう。
あの世なのか。それとも、奇子の領域の様な空間なのだろうか。
「ここは
私の胸の内を見透かしたように、お母さんが言った。
「夢と現実の狭間よ」
「お母さんは・・・」
「私の肉体はとっくに消えている。ただ、魂だけがここに留まっているの。それが『縛り』だから」
そして、お母さんがひどく悲しそうな顔で私を見つめて、言った。
「どうしてここへ来たの」
それは、明らかに責め立てる口調だった。
思いがけないことに、私は狼狽える。
お母さんは追い打ちを駆けるように続けた。
「大きくなった和紗に会えて嬉しい。だけど、どうして?ここに来たということは・・・」
「お母さん」
私は自分を奮い立たせて言った。
「お母さんに、お願いがあるの。お母さんが私の代わりに負い被ったものを・・・術式を、私に返してほしいの」
すると、お母さんは愕然として目を見開きその奥を震わせた。
「何を言ってるの・・・」
「・・・・・・」
「そんなことをしたら」
「それは、私に必要な武器なの」
お母さんの悲痛な声を遮り、私は言った。
「私とお母さんの運命を弄んだヤツに立ち向かうために、私は、戦わなくてはいけないの」
「・・・戦いだなんて・・・」
すると、お母さんの表情は悲しみから怒りの色へと変わっていった。
「・・・それじゃあ、私は何のために?」
そう問われて、私は再び狼狽えて言葉を飲み込んだ。
「私がしたことは、何のためだったの?私のしたことに、意味はなかったの?」
「お母さん・・・」
「和紗が、あのラベンダー色のランドセルを背負った姿を見たい。そんなささやかな夢さえ犠牲にしたのに・・・」