第37話 香志和彌神社
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バイクは河原町通を走り抜け行く。
その途中で気がついた。
「九十九さん!」
私は背後から呼びかけた。
「そっちじゃないです。このままじゃどんどん『香志和彌神社』から離れていく・・・!」
しかし、九十九さんはこう言った。
「いいんだよ、こっちで」
「え?」
「『香志和彌神社』の前に立ち寄りたいところがある」
そうして辿り着いたのは、古い長屋の住宅街だった。
そのうちの一棟の前に九十九さんはバイクを停めた。
「・・・ここは」
私はいぶかしく思いながら、ヘルメットを脱ぎつつバイクを降りた。
すると、目の前の家の玄関の引き戸が突如開いて、
「師匠 !」
よく知る人物が姿を現した。
「葵!」
九十九さんはその人の前に駆け寄り、二人は互いにハグし合った。
「東堂君!」
と、私は驚きと喜びでその名を呼んだ。
「Ms.鶴來」
東堂君が私の方を見て言った。
「久しいな。健在で何よりだ」
「東堂君も・・・」
と言いかけて、私は言葉を飲み込んだ。
東堂君の左手の手首から下。
包帯でぐるぐる巻きにされて見えないが、欠損していることが見て取れた。
ショックで思わず表情がこわばってしまう。
しかし、東堂君はそんな私に気に留めることなく、
「Ms.鶴來?いや、Mrs.五条と呼ぶべきなのか?」
と、ブツブツ呟きながら全く関係のないことを考えていた。
「いや、普通に名前で呼んでくれていいよ」
と、私は苦笑いしつつ言った。
そして、ふと疑問に思った。
「あの、九十九さんと東堂君はどういった関係で?」
「葵は私の愛弟子だよ」
九十九さんが答える。
「呪術師にスカウトしたのも私だよ」
「そうなんですね!」
いわれてみれば、二人はノリが似ている気がする。
「葵、家に上がらせてもらっていいかい?東京からここまでひたすらバイクを飛ばして来たからヘトヘトなんだ。ケツも痛いし」
「勿論です、師匠 。夕餉の準備もしています」
「おっ。さすが我が弟子。気が利くねぇ」
と、九十九さんと東堂君が長屋の中へ入ろうとするのを、
「あ、あのっ!」
私は呼び止めた。
すると、二人は立ち止まりキョトンとした顔で私を振り返る。
「どうした、Ms.鶴來」
「東堂君にまた会えたことは嬉しいんだけど、私急いで行かなくてはならない所があるの」
「そんなこと言わずに和紗も休んでいきなよ。夕飯ゴチになろうよ」
「九十九さん、そんな悠長にしている余裕は・・・」
「まあ、聞いてよ」
九十九さんは言った。
「今、『香志和彌神社』に行って『逆詣』を行うのはきっと意味がない」
「え・・・」
「知らない?呪術にとって『境目を越える』という行為が重要な意味を持つって」
「・・・・・・」
その言葉を聞いて、私はハッとした。
『川を越える。トンネルを越える。そして、日にちを越える。越えるという行為は、日常が非日常へ変わることを意味する』
また、『ラヴロックスポートランド』で伏黒君がそう言ったことを思い出したからだ。
「つまり・・・」
「日付が変わる瞬間に、『逆詣』を達成しなければならない」
と、九十九さんの言葉を受けて私は言った。
すると、九十九さんは二ッと笑みを浮かべた。
「That`s Right!そう、だから『香志和彌神社』へは日付変更の2時間前に行こう」
「・・・・・・」
「それまでしっかり休んで食べて備えなくちゃね。なんせ本堂と百度石の間を百往復しなきゃならないんだから」
「うっ」
わかってはいるけれど、想像するだけでしんどい。
しかも『香志和彌神社』は、本堂と百度石の間には長~い階段がある・・・。
私は一度だけズーンと俯いた後、バッと勢いよく顔を上げて言った。
「東堂君、ゴチになります!」
すると、東堂君と九十九さんは同時にニッと歯を見せて笑った。
その途中で気がついた。
「九十九さん!」
私は背後から呼びかけた。
「そっちじゃないです。このままじゃどんどん『香志和彌神社』から離れていく・・・!」
しかし、九十九さんはこう言った。
「いいんだよ、こっちで」
「え?」
「『香志和彌神社』の前に立ち寄りたいところがある」
そうして辿り着いたのは、古い長屋の住宅街だった。
そのうちの一棟の前に九十九さんはバイクを停めた。
「・・・ここは」
私はいぶかしく思いながら、ヘルメットを脱ぎつつバイクを降りた。
すると、目の前の家の玄関の引き戸が突如開いて、
「
よく知る人物が姿を現した。
「葵!」
九十九さんはその人の前に駆け寄り、二人は互いにハグし合った。
「東堂君!」
と、私は驚きと喜びでその名を呼んだ。
「Ms.鶴來」
東堂君が私の方を見て言った。
「久しいな。健在で何よりだ」
「東堂君も・・・」
と言いかけて、私は言葉を飲み込んだ。
東堂君の左手の手首から下。
包帯でぐるぐる巻きにされて見えないが、欠損していることが見て取れた。
ショックで思わず表情がこわばってしまう。
しかし、東堂君はそんな私に気に留めることなく、
「Ms.鶴來?いや、Mrs.五条と呼ぶべきなのか?」
と、ブツブツ呟きながら全く関係のないことを考えていた。
「いや、普通に名前で呼んでくれていいよ」
と、私は苦笑いしつつ言った。
そして、ふと疑問に思った。
「あの、九十九さんと東堂君はどういった関係で?」
「葵は私の愛弟子だよ」
九十九さんが答える。
「呪術師にスカウトしたのも私だよ」
「そうなんですね!」
いわれてみれば、二人はノリが似ている気がする。
「葵、家に上がらせてもらっていいかい?東京からここまでひたすらバイクを飛ばして来たからヘトヘトなんだ。ケツも痛いし」
「勿論です、
「おっ。さすが我が弟子。気が利くねぇ」
と、九十九さんと東堂君が長屋の中へ入ろうとするのを、
「あ、あのっ!」
私は呼び止めた。
すると、二人は立ち止まりキョトンとした顔で私を振り返る。
「どうした、Ms.鶴來」
「東堂君にまた会えたことは嬉しいんだけど、私急いで行かなくてはならない所があるの」
「そんなこと言わずに和紗も休んでいきなよ。夕飯ゴチになろうよ」
「九十九さん、そんな悠長にしている余裕は・・・」
「まあ、聞いてよ」
九十九さんは言った。
「今、『香志和彌神社』に行って『逆詣』を行うのはきっと意味がない」
「え・・・」
「知らない?呪術にとって『境目を越える』という行為が重要な意味を持つって」
「・・・・・・」
その言葉を聞いて、私はハッとした。
『川を越える。トンネルを越える。そして、日にちを越える。越えるという行為は、日常が非日常へ変わることを意味する』
また、『ラヴロックスポートランド』で伏黒君がそう言ったことを思い出したからだ。
「つまり・・・」
「日付が変わる瞬間に、『逆詣』を達成しなければならない」
と、九十九さんの言葉を受けて私は言った。
すると、九十九さんは二ッと笑みを浮かべた。
「That`s Right!そう、だから『香志和彌神社』へは日付変更の2時間前に行こう」
「・・・・・・」
「それまでしっかり休んで食べて備えなくちゃね。なんせ本堂と百度石の間を百往復しなきゃならないんだから」
「うっ」
わかってはいるけれど、想像するだけでしんどい。
しかも『香志和彌神社』は、本堂と百度石の間には長~い階段がある・・・。
私は一度だけズーンと俯いた後、バッと勢いよく顔を上げて言った。
「東堂君、ゴチになります!」
すると、東堂君と九十九さんは同時にニッと歯を見せて笑った。