第37話 香志和彌神社
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ラルゥさん」
私は深々と頭を下げて言った。
「陵先生のこと、よろしくお願いします!」
するとラルゥさんはこちらを振り返り、コクリと頷いた。
後ろ髪を引かれるのを感じながら、私は九十九さんの後ろに飛び乗った。
私が乗ったのを確認すると、九十九さんはすぐにバイクを発進させた。
ヴロロロ・・・
「大丈夫だよ」
九十九さんが言った。
「ラルゥは頼れるヤツだ。彼のことなら心配しなくていいよ」
「はい・・・」
「それに、高専には家入医師がいるしね」
「・・・九十九さん」
「んー?」
「ラルゥさんの家族って、奥さん?いや、旦那さん?それに、お子さんのことですか?」
唐突な質問だったらしく、九十九さんは少し言葉を詰まらせた後、
「違う違う違う。同じ呪術師仲間のことだよ。血の繋がりはない」
と答えた。
「・・・それでも、ラルゥにとっては本物の家族なんだろうね」
「・・・・・・」
その時、祐平さんのことが思い浮かんだ。
陵先生の血の繋がりがない兄弟。それでも。
「・・・無事だといいですね」
それは、微かな望みだった。
この先、それが潰えてしまったら、彼はどうなるのだろう。
私は、どうしてあげたらいい?
「・・・そうだね」
九十九さんはそう頷いた後、更にバイクを加速させた。
その後、幾度かの呪霊との戦闘を経て都心を出て、ひたすら西を目指した。
京都府内に入ったのは、すっかり陽が暮れた頃だった。
夕闇の中に東寺が見えた時、私はホッと胸を撫で下ろした。
「和紗って『退魔の力』を使えるんだね」
ふいに九十九さんに言われて、私は目を瞬かせた。
「九十九さんだって使えるでしょ。反転術式による正の力だし」
「使えないよー。私のはただの反転術式だもん」
「・・・?」
「マイナスにマイナスを掛けてプラスにするのが反転術式。それに対して、『退魔の力』は生命エネルギーを呪力に反転させたものだ。ま、そういう意味では、反転術式には違いないんだけど」
「え・・・」
そんなの、聞いたことないんですけど。
「例えば、毒の治療なんかは通常の反転術式だと緻密な呪力操作が必要になるけど。『退魔の力』は元々が生命力なんだ。緻密さは必要ない」
「・・・・・・」
そういえば、『ラヴロックスポートランド』に行った時(第7話)、
『家入さんの治癒の反転術式とは少し違う。呪いを打ち消す感じだった』
って伏黒君が言ってたような。
「思うに、君のご先祖の造砡師、更にそのご先祖様が元々祈祷師だったんじゃないのかな〜」
「祈祷師って呪術師と何か違いがあるんですか?」
「大雑把に言うと、祈祷師は生命エネルギーを用いた呪いからの加護、呪術師は呪力を用いた拔除に特化してるってとこかな」
「そうなんだ。てっきり同じなのかと・・・」
「生命エネルギーを呪力に反転出来ることが、反転術式より更に稀有な能力だからね。その少数派の祈祷師が呪術師と同一視されるようになったってとこかな」
「・・・そんなこと、五条さん全然教えてくれなかった」
「ハハッ。いい加減なんだね、五条君って」
「ホントですよ・・・」
「っていうか違いを知らずに行使してる和紗もたいがいだけどね。君達ってバカップル?」
「・・・かもですね」
と溜め息をついた時だった。
「わぁっ!?」
急ブレーキがかかって、私は九十九さんの背中に思い切り顔をぶつけた。
「どうしたんですか、急に・・・」
と、顔を上げて九十九さんを伺う。
すると、九十九さんは先の方向にある一点を見つめていた。
それにつられて、私も視線を向けた。
「あれは・・・」
京都タワーの近くに、漆黒の『帳』が降りていた。
普通の『帳』とは少し違う。東京ドーム数個分ぐらいの巨大な『帳』だった。
その周辺は異様な雰囲気が漂っている。
「結界だ・・・だけどどこか奇妙だ」
九十九さんが言った。
「おそらく『死滅回游』と何か関わりがある」
「・・・・・・」
その言葉に、私はゴクリと喉を鳴らした。
心の中ではまだどこか、実行されるとは思っていなかった。
だけど、ひたひたと恐ろしい現実がもうそこに迫ってきている。
「・・・行こう」
そう言って、九十九さんは再びバイクを発進させた。
私は深々と頭を下げて言った。
「陵先生のこと、よろしくお願いします!」
するとラルゥさんはこちらを振り返り、コクリと頷いた。
後ろ髪を引かれるのを感じながら、私は九十九さんの後ろに飛び乗った。
私が乗ったのを確認すると、九十九さんはすぐにバイクを発進させた。
ヴロロロ・・・
「大丈夫だよ」
九十九さんが言った。
「ラルゥは頼れるヤツだ。彼のことなら心配しなくていいよ」
「はい・・・」
「それに、高専には家入医師がいるしね」
「・・・九十九さん」
「んー?」
「ラルゥさんの家族って、奥さん?いや、旦那さん?それに、お子さんのことですか?」
唐突な質問だったらしく、九十九さんは少し言葉を詰まらせた後、
「違う違う違う。同じ呪術師仲間のことだよ。血の繋がりはない」
と答えた。
「・・・それでも、ラルゥにとっては本物の家族なんだろうね」
「・・・・・・」
その時、祐平さんのことが思い浮かんだ。
陵先生の血の繋がりがない兄弟。それでも。
「・・・無事だといいですね」
それは、微かな望みだった。
この先、それが潰えてしまったら、彼はどうなるのだろう。
私は、どうしてあげたらいい?
「・・・そうだね」
九十九さんはそう頷いた後、更にバイクを加速させた。
その後、幾度かの呪霊との戦闘を経て都心を出て、ひたすら西を目指した。
京都府内に入ったのは、すっかり陽が暮れた頃だった。
夕闇の中に東寺が見えた時、私はホッと胸を撫で下ろした。
「和紗って『退魔の力』を使えるんだね」
ふいに九十九さんに言われて、私は目を瞬かせた。
「九十九さんだって使えるでしょ。反転術式による正の力だし」
「使えないよー。私のはただの反転術式だもん」
「・・・?」
「マイナスにマイナスを掛けてプラスにするのが反転術式。それに対して、『退魔の力』は生命エネルギーを呪力に反転させたものだ。ま、そういう意味では、反転術式には違いないんだけど」
「え・・・」
そんなの、聞いたことないんですけど。
「例えば、毒の治療なんかは通常の反転術式だと緻密な呪力操作が必要になるけど。『退魔の力』は元々が生命力なんだ。緻密さは必要ない」
「・・・・・・」
そういえば、『ラヴロックスポートランド』に行った時(第7話)、
『家入さんの治癒の反転術式とは少し違う。呪いを打ち消す感じだった』
って伏黒君が言ってたような。
「思うに、君のご先祖の造砡師、更にそのご先祖様が元々祈祷師だったんじゃないのかな〜」
「祈祷師って呪術師と何か違いがあるんですか?」
「大雑把に言うと、祈祷師は生命エネルギーを用いた呪いからの加護、呪術師は呪力を用いた拔除に特化してるってとこかな」
「そうなんだ。てっきり同じなのかと・・・」
「生命エネルギーを呪力に反転出来ることが、反転術式より更に稀有な能力だからね。その少数派の祈祷師が呪術師と同一視されるようになったってとこかな」
「・・・そんなこと、五条さん全然教えてくれなかった」
「ハハッ。いい加減なんだね、五条君って」
「ホントですよ・・・」
「っていうか違いを知らずに行使してる和紗もたいがいだけどね。君達ってバカップル?」
「・・・かもですね」
と溜め息をついた時だった。
「わぁっ!?」
急ブレーキがかかって、私は九十九さんの背中に思い切り顔をぶつけた。
「どうしたんですか、急に・・・」
と、顔を上げて九十九さんを伺う。
すると、九十九さんは先の方向にある一点を見つめていた。
それにつられて、私も視線を向けた。
「あれは・・・」
京都タワーの近くに、漆黒の『帳』が降りていた。
普通の『帳』とは少し違う。東京ドーム数個分ぐらいの巨大な『帳』だった。
その周辺は異様な雰囲気が漂っている。
「結界だ・・・だけどどこか奇妙だ」
九十九さんが言った。
「おそらく『死滅回游』と何か関わりがある」
「・・・・・・」
その言葉に、私はゴクリと喉を鳴らした。
心の中ではまだどこか、実行されるとは思っていなかった。
だけど、ひたひたと恐ろしい現実がもうそこに迫ってきている。
「・・・行こう」
そう言って、九十九さんは再びバイクを発進させた。