第37話 香志和彌神社
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(誰?)
と警戒していると、
「ラルゥ!」
と、九十九さんはその人のことを呼んだ。
そしてすぐに私を振り返り、
「ラルゥは私の協力者だよ」
と告げた後、再びラルゥという人に向き直した。
「無事でよかった。今まで何をしてたんだ?」
「家族を探していたの」
と、ラルゥさんはゆっくりこちらへ歩み寄る。
よくよく見てみると、その大きな背中に人を背負っている。
「そのおんぶしてる彼?」
「いいえ。拾ったの、いい男だったから」
とラルゥさんは私達の前で立ち止まる。
私はその背中に背負われた人の顔を見て、ハッと息を呑んだ。
「・・・陵 先生」
一度その名を呟いた後、
「陵先生!」
ラルゥさんの背中に寄りすがった。
そう、その人は陵先生だった。
陵先生はグッタリとしていて目を開かない。
大きな怪我こそしていないようだけれど、全身煤と血飛沫で汚れてボロボロだ。
「あら、あなたの知り合いなの?」
と、ラルゥさんが驚いたように言う。
だけど私はそれに対して答えず、不安な思いで陵先生の顔を覗き込んでいた。
「大丈夫。今は気を失っているだけよ。さっきまで意識があったもの」
と言うラルゥさんの言葉に、私は少し安堵する。
「・・・ただ、酷い目に遭ったのね。ひどく憔悴して取り乱していたわ」
「・・・・・・」
脳裏に先生のお母様と、弟の祐平さんの顔が浮かんだ。
「・・・他に誰かいませんでしたか?」
「え?」
「誰か先生と一緒にいた人はいませんでしたか!?」
「・・・いいえ。彼を渋谷で見つけた時には、辺りは既に焼け野が原と化していて他には誰もいなかったわ」
そう言うと、ラルゥさんは俯いた。
「誰も・・・私の家族も」
「・・・・・・」
愕然としながら、宿儺が言った言葉を思い出す。
『久方振りに、有象無象の人間共を屠った』
そして、直感が走った。
お母様と祐平さんは・・・。
「由基ちゃんは一体どこに行くつもりなの?それにこのコは・・・」
「彼女は和紗。五条悟君の恋人だよ」
と、九十九さんがラルゥさんの問いかけに答える。
それで私は我に返った。
「五条、悟の・・・」
と呟いたラルゥさんの顔をふと見ると、その表情は微かに曇っていた。
(・・・?)
その表情に何か引っ掛かる。
だけど、九十九さんはお構いなしといった感じで、カラッとした口調で続けた。
「和紗が京都に長年預けっぱなしの荷物を取りに行くんだ。私はその護衛だよ。五条君の置かれてる状況は知ってるよね?だから、私が」
すると、曇っていたラルゥさんの表情が少しだけ晴れた。
「そう。それならお土産をお願い。生八橋がいいわ」
「いいよー」
「って、言いたいところだけど。やっぱりいいわ」
「んー?」
「彼を安全なところに届けたら、私は日本を離れるつもりなの」
少しの間があって、
「・・・そうか」
と九十九さんは頷いた。
そして、言葉を続ける。
「高専に向かうといい。高専には家入っていう反転術式使いがいる。彼女なら彼を治せるだろう」
「わかったわ」
と言うと、ラルゥさんは陵先生を背負い直す。すると、
「ラルゥ」
九十九さんが言った。
「本当は、君にはもう少し力を貸してほしかったんだけどね」
「・・・・・・」
ラルゥさんは応えない。その代わり、
「今度また会えたら、ご飯を一緒に食べましょう」
と、微笑んだ。
次に私の方を振り向いて、
「和紗、といったわね」
と声をかけてきた。
「彼のことは私に任せて。気をつけて行ってきてね」
「・・・・・・」
私はじっと陵先生の顔を見遣った。
先を急がなければならない。だけど、今の陵先生を置いて行っていいのだろうか。
迷っていると、
「和紗、急ごう」
と、九十九さんはバイクに跨る。
するとラルゥさんは、私の迷いを断ち切るように歩き出した。
と警戒していると、
「ラルゥ!」
と、九十九さんはその人のことを呼んだ。
そしてすぐに私を振り返り、
「ラルゥは私の協力者だよ」
と告げた後、再びラルゥという人に向き直した。
「無事でよかった。今まで何をしてたんだ?」
「家族を探していたの」
と、ラルゥさんはゆっくりこちらへ歩み寄る。
よくよく見てみると、その大きな背中に人を背負っている。
「そのおんぶしてる彼?」
「いいえ。拾ったの、いい男だったから」
とラルゥさんは私達の前で立ち止まる。
私はその背中に背負われた人の顔を見て、ハッと息を呑んだ。
「・・・
一度その名を呟いた後、
「陵先生!」
ラルゥさんの背中に寄りすがった。
そう、その人は陵先生だった。
陵先生はグッタリとしていて目を開かない。
大きな怪我こそしていないようだけれど、全身煤と血飛沫で汚れてボロボロだ。
「あら、あなたの知り合いなの?」
と、ラルゥさんが驚いたように言う。
だけど私はそれに対して答えず、不安な思いで陵先生の顔を覗き込んでいた。
「大丈夫。今は気を失っているだけよ。さっきまで意識があったもの」
と言うラルゥさんの言葉に、私は少し安堵する。
「・・・ただ、酷い目に遭ったのね。ひどく憔悴して取り乱していたわ」
「・・・・・・」
脳裏に先生のお母様と、弟の祐平さんの顔が浮かんだ。
「・・・他に誰かいませんでしたか?」
「え?」
「誰か先生と一緒にいた人はいませんでしたか!?」
「・・・いいえ。彼を渋谷で見つけた時には、辺りは既に焼け野が原と化していて他には誰もいなかったわ」
そう言うと、ラルゥさんは俯いた。
「誰も・・・私の家族も」
「・・・・・・」
愕然としながら、宿儺が言った言葉を思い出す。
『久方振りに、有象無象の人間共を屠った』
そして、直感が走った。
お母様と祐平さんは・・・。
「由基ちゃんは一体どこに行くつもりなの?それにこのコは・・・」
「彼女は和紗。五条悟君の恋人だよ」
と、九十九さんがラルゥさんの問いかけに答える。
それで私は我に返った。
「五条、悟の・・・」
と呟いたラルゥさんの顔をふと見ると、その表情は微かに曇っていた。
(・・・?)
その表情に何か引っ掛かる。
だけど、九十九さんはお構いなしといった感じで、カラッとした口調で続けた。
「和紗が京都に長年預けっぱなしの荷物を取りに行くんだ。私はその護衛だよ。五条君の置かれてる状況は知ってるよね?だから、私が」
すると、曇っていたラルゥさんの表情が少しだけ晴れた。
「そう。それならお土産をお願い。生八橋がいいわ」
「いいよー」
「って、言いたいところだけど。やっぱりいいわ」
「んー?」
「彼を安全なところに届けたら、私は日本を離れるつもりなの」
少しの間があって、
「・・・そうか」
と九十九さんは頷いた。
そして、言葉を続ける。
「高専に向かうといい。高専には家入っていう反転術式使いがいる。彼女なら彼を治せるだろう」
「わかったわ」
と言うと、ラルゥさんは陵先生を背負い直す。すると、
「ラルゥ」
九十九さんが言った。
「本当は、君にはもう少し力を貸してほしかったんだけどね」
「・・・・・・」
ラルゥさんは応えない。その代わり、
「今度また会えたら、ご飯を一緒に食べましょう」
と、微笑んだ。
次に私の方を振り向いて、
「和紗、といったわね」
と声をかけてきた。
「彼のことは私に任せて。気をつけて行ってきてね」
「・・・・・・」
私はじっと陵先生の顔を見遣った。
先を急がなければならない。だけど、今の陵先生を置いて行っていいのだろうか。
迷っていると、
「和紗、急ごう」
と、九十九さんはバイクに跨る。
するとラルゥさんは、私の迷いを断ち切るように歩き出した。