第36話 告白
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何の脈絡もない質問に、
「は?」
と私は眉を顰める。
「何でそんなこと教えなきゃならないんですか」
「え?初対面の人間と知り合うには重要な質問だよ?性癖にはその人間の全てが反映される。男の趣味がつまらないと、その人間自身もつまらない」
「・・・(無視)」
「あ、待ってよ。和紗~」
それから無視しても無視しても、九十九さんは私についてきた。
その間、九十九さんはずっとベラベラ一人で話している。
「あ、そういえば」
ふと思い当ったように、九十九さんは言った。
「さっき伏黒君が『アンタと五条先生の仲を』ナンタラカンタラ話してたような・・・。え、ひょっとして和紗ってば五条君とそーゆー仲なの!?」
「・・・・・・」
「五条君って、えらく男前だけど性格クズって聞いたことあるけど、和紗の好み ってそんなのなの?へー、意外~。面白~」
「・・・・・・」
「ますます君のことが気に入ったよ」
九十九さんに気に入られたところで、嬉しくもなんともない。
ひたすら無視し歩き続けていると、気づけば私達は地下階を出て地上に来ていた。
「実のところはね」
すると、九十九さんはまた急に真面目なトーンで言った。
「伏黒君が捕まえてきた女型呪霊と接触したんだ」
それを聞いて、私は立ち止まり振り返った。
九十九さんは、私がそうすることを確信していたように、口元に笑みを浮かべていた。
「奇子と・・・」
「そう。彼女は今は高専の最下層近くの結界にいる」
「・・・・・・」
「彼女から聞いたんだ。彼女は糠田が森・・・かの『額多之君』の伝説の土地に染み付いた呪いなんだってね」
「・・・・・・」
「私が興味があるのは、永き時に渡り、その地に住む人々を加護してきた呪玉『明埜乃舞降鶴乃御砡 』の存在だよ。私は、その正体が知りたい」
「正体って・・・」
私は訝しく思いながら尋ねた。
「術式で正のエネルギーを物質化したものなんでしょう・・・?」
すると、九十九さんは意味ありげにフッと笑った後目を伏せた。
「さあ、どうだろうね」
「・・・・・・」
「それで次に君にも接触した訳なんだけど。和紗、君があの女型呪霊と糠田が森に深い因縁があると聞いたから。でも、君も本当のところわからないようだね」
「・・・因縁も何も、糠田が森は私の『故郷』です」
───私は、九十九さんに全てを話した。
羂索との因縁。お母さんのこと。『香志和彌神社』のこと。
そこに残されているはずの、私の術式。
すると、九十九さんはすぐに私の置かれた状況や目的を理解したようだった。
「なるほど。非術師であっても『縛り』を自らに課すことで、呪いによる効果を得る。『聖地』『祈祷所』のことか」
「・・・五条さんも同じことを言ってました」
「・・・その『縛り』、破ることが出来るかもしれない」
私は息を飲み、九十九さんの顔を見据えた。
九十九さんも私を見返す。
その表情は、これまでにない厳しいものだった。
「『縛りを破る』。その意味はわかってるよね?きっとただでは済まない。それでも・・・」
「わかってます」
私は言った。
「それでも、私は私の術式 が欲しい」
そう言い切った私を、九十九さんは憐れむ様ような慈しむ様な、どちらともいえない目線で見つめた後。
「地下に戻ろう」
と踵を返した。
「私のバイクを停めてある。それに乗って行こう、京都へ」
「・・・・・・」
もはや、私には拒否権がないようだった。
それでも、私はひとつ気になって九十九さんに尋ねた。
「どうして、私を助けようとしてくれるんですか?」
すると、九十九さんは立ち止まって私を振り返った。
「言っただろ、君が気に入ったんだって。ちょっと馬鹿で無鉄砲でも、大切な人のために自分の身を呈することが出来る人間は、私好みだよ」
「馬鹿って・・・」
九十九さんは二ッと笑うと、また前を向いて歩き出した。
「・・・ありがとうございます」
私はそう呟いて、九十九さんの後に続いた。
歩きながら、抱き抱えていたサトルと額を合わせて呪力を吹き込む。
すると、クタリとしていたサトルの体がシャキンと伸びた。
「テンジョーテンゲ!ユイガドクソン!」
とサトルは私の手から離れ、張り切って先頭を歩く。
九十九さんが目を丸める。
「何だあれ?」
私は小さく笑って答える。
「サトルです」
「さとる?」
「私の相棒です」
そしてネックレスを身につけて、その蒼い石のチャームを握りしめた。
───これから、私は知ることになる。
お母さんが、命を賭して、私から奪い去ったその術式と、大いなる『呪い』のことを。
つづく
「は?」
と私は眉を顰める。
「何でそんなこと教えなきゃならないんですか」
「え?初対面の人間と知り合うには重要な質問だよ?性癖にはその人間の全てが反映される。男の趣味がつまらないと、その人間自身もつまらない」
「・・・(無視)」
「あ、待ってよ。和紗~」
それから無視しても無視しても、九十九さんは私についてきた。
その間、九十九さんはずっとベラベラ一人で話している。
「あ、そういえば」
ふと思い当ったように、九十九さんは言った。
「さっき伏黒君が『アンタと五条先生の仲を』ナンタラカンタラ話してたような・・・。え、ひょっとして和紗ってば五条君とそーゆー仲なの!?」
「・・・・・・」
「五条君って、えらく男前だけど性格クズって聞いたことあるけど、和紗の
「・・・・・・」
「ますます君のことが気に入ったよ」
九十九さんに気に入られたところで、嬉しくもなんともない。
ひたすら無視し歩き続けていると、気づけば私達は地下階を出て地上に来ていた。
「実のところはね」
すると、九十九さんはまた急に真面目なトーンで言った。
「伏黒君が捕まえてきた女型呪霊と接触したんだ」
それを聞いて、私は立ち止まり振り返った。
九十九さんは、私がそうすることを確信していたように、口元に笑みを浮かべていた。
「奇子と・・・」
「そう。彼女は今は高専の最下層近くの結界にいる」
「・・・・・・」
「彼女から聞いたんだ。彼女は糠田が森・・・かの『額多之君』の伝説の土地に染み付いた呪いなんだってね」
「・・・・・・」
「私が興味があるのは、永き時に渡り、その地に住む人々を加護してきた呪玉『
「正体って・・・」
私は訝しく思いながら尋ねた。
「術式で正のエネルギーを物質化したものなんでしょう・・・?」
すると、九十九さんは意味ありげにフッと笑った後目を伏せた。
「さあ、どうだろうね」
「・・・・・・」
「それで次に君にも接触した訳なんだけど。和紗、君があの女型呪霊と糠田が森に深い因縁があると聞いたから。でも、君も本当のところわからないようだね」
「・・・因縁も何も、糠田が森は私の『故郷』です」
───私は、九十九さんに全てを話した。
羂索との因縁。お母さんのこと。『香志和彌神社』のこと。
そこに残されているはずの、私の術式。
すると、九十九さんはすぐに私の置かれた状況や目的を理解したようだった。
「なるほど。非術師であっても『縛り』を自らに課すことで、呪いによる効果を得る。『聖地』『祈祷所』のことか」
「・・・五条さんも同じことを言ってました」
「・・・その『縛り』、破ることが出来るかもしれない」
私は息を飲み、九十九さんの顔を見据えた。
九十九さんも私を見返す。
その表情は、これまでにない厳しいものだった。
「『縛りを破る』。その意味はわかってるよね?きっとただでは済まない。それでも・・・」
「わかってます」
私は言った。
「それでも、私は私の
そう言い切った私を、九十九さんは憐れむ様ような慈しむ様な、どちらともいえない目線で見つめた後。
「地下に戻ろう」
と踵を返した。
「私のバイクを停めてある。それに乗って行こう、京都へ」
「・・・・・・」
もはや、私には拒否権がないようだった。
それでも、私はひとつ気になって九十九さんに尋ねた。
「どうして、私を助けようとしてくれるんですか?」
すると、九十九さんは立ち止まって私を振り返った。
「言っただろ、君が気に入ったんだって。ちょっと馬鹿で無鉄砲でも、大切な人のために自分の身を呈することが出来る人間は、私好みだよ」
「馬鹿って・・・」
九十九さんは二ッと笑うと、また前を向いて歩き出した。
「・・・ありがとうございます」
私はそう呟いて、九十九さんの後に続いた。
歩きながら、抱き抱えていたサトルと額を合わせて呪力を吹き込む。
すると、クタリとしていたサトルの体がシャキンと伸びた。
「テンジョーテンゲ!ユイガドクソン!」
とサトルは私の手から離れ、張り切って先頭を歩く。
九十九さんが目を丸める。
「何だあれ?」
私は小さく笑って答える。
「サトルです」
「さとる?」
「私の相棒です」
そしてネックレスを身につけて、その蒼い石のチャームを握りしめた。
───これから、私は知ることになる。
お母さんが、命を賭して、私から奪い去ったその術式と、大いなる『呪い』のことを。
つづく
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