第36話 告白
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「猪野さん・・・」
「あー・・・、大丈夫大丈夫」
心配する私を牽制するように猪野さんは言った。
「七海さんとは約束してたんだ。お互いの身に何かあっても、その時はメソメソしないって。それに俺は呪術師だ。覚悟は出来てる」
だけど、その声は涙声だ。
私はそっと瞼を伏せると、静かな涙が流れた。
その傍で、伊地知さんも目頭を押さえていた。
次に狗巻君の病室を訪ねた。
「すじこ!」
狗巻君は驚きつつも、私の顔を見て歓喜の声を上げた。
それを受けて私も頬を綻ばせる。
「狗巻君・・・!」
だけど、左腕の袖の部分がひらりと揺れるのを見て、胸が疼いた。
私が動揺したのが伝わってしまったのか、狗巻君は左腕の裾を握りしめると、
「おかか!明太子!」
と力強い口調で言った。
「大丈夫!心配するな!」と伝わってきた。
それで、私は頷く。
「うん・・・!」
すると、狗巻君も「うんうん」と相槌を打つ。
しかしすぐに表情が曇り、
「パンダ・・・」
と、心配そうに呟いた。
私は、パンダ君が夜蛾学長と共に上層部に捕らわれていることを伝えた。
すると、狗巻君の眉間に険しく皺が寄った。
私は慌てて付け加える。
「でも日下部さんが言うには、パンダ君は貴重な『完全自立型呪骸』の完成形だからどうこうされないだろうって。夜蛾さんも刃向かわなければ・・・」
「しゃけ・・・」
すると、狗巻君は少し落ち着きを取り戻しベッドに座り込んだ。そして、
「真希」
と言った。
その意を汲んで、私はひとつ頷く。
次に向かうのは、真希ちゃんだ。
真希ちゃんの病室は、ひとつ下のフロアの突き当たりにある個室だ。
先日まで集中治療室にいたけれど、驚異的な回復力で容態が快方に向かい、一般病棟へ移ったのだ。
「・・・・・・」
廊下をひたひたと歩きながら考える。
これまでの会話から、呪術高専の皆んなの消息はだいたい判明したけれど、悠仁君だけはわからなかった。誰も知らないのだ。
『・・・俺は、もう皆のところへは帰れない』
そう言った時の哀しさに澄んだ目が忘れられない。
(悠仁君・・・)
だけど、悠仁君を思う時どうしてもついて回る面影がある。
『久方振りに、有象無象の人間共を屠った』
───両面宿儺。
そして、更に思い巡らせる。
(モイちゃんと大野君は、あの後渋谷方面から離れたはず。だから、巻き込まれていないはずだ。でも・・・)
───陵 先生。
陵先生は、渋谷のスクランブル交差点に向かったお母様と祐平さんを探しに行った。
三人は無事なんだろうか。
「・・・はぁ・・・」
嘆息がこぼれる。
五条さんのこと。
お父さんと紗樹ちゃんのこと。
悠仁君のこと。
陵先生のこと。
抱えている事が多すぎる。
(でも、助けなきゃ)
気持ちは急いているのに、まだ鉛のように鈍い身体が憎らしい。
そんなことを考えているうちに、真希ちゃんのいる病室の前にたどり着いていた。
ノックをしようと、右手を軽く握ったその時だった。
ぬるっ・・・
ドアの向こう側、とても大きな呪力を感じた。
私はハッと息を呑んだ後、そのまま潜めた。
(この呪力・・・)
似てる。
陵先生・・・違う、『みささぎ』と。
私はノックもせず、勢いよくドアを開けた。
すると。
「!?」
そこには、一体の大きな呪霊がいる。
白く粘膜に覆われた滑った肌。
筋骨隆々とした逞しい上半身に対して、下半身は細くしぼんでいる。まるで、ランプの精霊のようなシルエット。
似てる。
似ている、『みささぎ』と。
だけど。
「誰ですか?」
そのにいるのは呪霊だけじゃなかった。
男の子がひとり。
真希ちゃんが眠るベッドの傍に立ち、こちらに顔を向ける事なく問いかけてきた。
そして、よくよく見てみればその呪霊は『みささぎ』と異なる。
「あー・・・、大丈夫大丈夫」
心配する私を牽制するように猪野さんは言った。
「七海さんとは約束してたんだ。お互いの身に何かあっても、その時はメソメソしないって。それに俺は呪術師だ。覚悟は出来てる」
だけど、その声は涙声だ。
私はそっと瞼を伏せると、静かな涙が流れた。
その傍で、伊地知さんも目頭を押さえていた。
次に狗巻君の病室を訪ねた。
「すじこ!」
狗巻君は驚きつつも、私の顔を見て歓喜の声を上げた。
それを受けて私も頬を綻ばせる。
「狗巻君・・・!」
だけど、左腕の袖の部分がひらりと揺れるのを見て、胸が疼いた。
私が動揺したのが伝わってしまったのか、狗巻君は左腕の裾を握りしめると、
「おかか!明太子!」
と力強い口調で言った。
「大丈夫!心配するな!」と伝わってきた。
それで、私は頷く。
「うん・・・!」
すると、狗巻君も「うんうん」と相槌を打つ。
しかしすぐに表情が曇り、
「パンダ・・・」
と、心配そうに呟いた。
私は、パンダ君が夜蛾学長と共に上層部に捕らわれていることを伝えた。
すると、狗巻君の眉間に険しく皺が寄った。
私は慌てて付け加える。
「でも日下部さんが言うには、パンダ君は貴重な『完全自立型呪骸』の完成形だからどうこうされないだろうって。夜蛾さんも刃向かわなければ・・・」
「しゃけ・・・」
すると、狗巻君は少し落ち着きを取り戻しベッドに座り込んだ。そして、
「真希」
と言った。
その意を汲んで、私はひとつ頷く。
次に向かうのは、真希ちゃんだ。
真希ちゃんの病室は、ひとつ下のフロアの突き当たりにある個室だ。
先日まで集中治療室にいたけれど、驚異的な回復力で容態が快方に向かい、一般病棟へ移ったのだ。
「・・・・・・」
廊下をひたひたと歩きながら考える。
これまでの会話から、呪術高専の皆んなの消息はだいたい判明したけれど、悠仁君だけはわからなかった。誰も知らないのだ。
『・・・俺は、もう皆のところへは帰れない』
そう言った時の哀しさに澄んだ目が忘れられない。
(悠仁君・・・)
だけど、悠仁君を思う時どうしてもついて回る面影がある。
『久方振りに、有象無象の人間共を屠った』
───両面宿儺。
そして、更に思い巡らせる。
(モイちゃんと大野君は、あの後渋谷方面から離れたはず。だから、巻き込まれていないはずだ。でも・・・)
───
陵先生は、渋谷のスクランブル交差点に向かったお母様と祐平さんを探しに行った。
三人は無事なんだろうか。
「・・・はぁ・・・」
嘆息がこぼれる。
五条さんのこと。
お父さんと紗樹ちゃんのこと。
悠仁君のこと。
陵先生のこと。
抱えている事が多すぎる。
(でも、助けなきゃ)
気持ちは急いているのに、まだ鉛のように鈍い身体が憎らしい。
そんなことを考えているうちに、真希ちゃんのいる病室の前にたどり着いていた。
ノックをしようと、右手を軽く握ったその時だった。
ぬるっ・・・
ドアの向こう側、とても大きな呪力を感じた。
私はハッと息を呑んだ後、そのまま潜めた。
(この呪力・・・)
似てる。
陵先生・・・違う、『みささぎ』と。
私はノックもせず、勢いよくドアを開けた。
すると。
「!?」
そこには、一体の大きな呪霊がいる。
白く粘膜に覆われた滑った肌。
筋骨隆々とした逞しい上半身に対して、下半身は細くしぼんでいる。まるで、ランプの精霊のようなシルエット。
似てる。
似ている、『みささぎ』と。
だけど。
「誰ですか?」
そのにいるのは呪霊だけじゃなかった。
男の子がひとり。
真希ちゃんが眠るベッドの傍に立ち、こちらに顔を向ける事なく問いかけてきた。
そして、よくよく見てみればその呪霊は『みささぎ』と異なる。