第35話 夢一夜
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私は女の子と対峙する。
「驚いてる?また『領域展開』だって」
女の子は言った。
「『領域展開』の後、術式は焼き切れてしばらく使用できないっていうもんね。でも、私の術式も領域も人を傷つけることを前提にしていないせいか、普通より術式の回復が早いの」
「・・・・・・」
「それに、一晩経てばたいていの術式は回復するって」
「・・・一晩?」
女の子が何の気なしに言った言葉に、私は反応する。
女の子はそんな私が何を考えているのか察したらしく、
「そう、向こうの世界では数年の月日でも、こっちで過ぎた時間はほんの僅か」
と言った。
「・・・・・・」
私の心に微かに焦りが生じる。
一晩。
ほんの僅かと女の子は言ったけれど、その過ぎた時間は、私にとっては違う。
(急がなくちゃ)
私には行かなくてはならないところが、やらなくてはならないことがある。
・・・でも、それが何なのかわからない。
「あら、ちょっとしゃべりすぎたわね」
そういって女の子は「おっと」と言うように口元を手で押さえる。
しかし、すぐに蠱惑的な笑みを浮かべて、
「お待たせ。帰りなさい、あなたの世界へ」
と、指をパチンと鳴らした。
「ん・・・」
眩しい光が瞼の上に振り注ぎ、私は目を醒ました。
「あ・・・」
目覚めたそこは、寮の自分の部屋のベッドだった。
「夢・・・」
でも、それは安堵感や爽快感とは異なる、尾を引くような目覚めだった。
夢に出てきた、あの男の子。
夢の中で、私は彼の名前を呼んでいた。
なのに、今は覚えていない。
「・・・・・・」
どうにか思い出そうと記憶を巡らせていたら、ふと目覚まし時計が目についた。
見てみると、時間はとっくに8時を過ぎている。
「やばっ、遅刻!」
私はベッドから飛び起きて、慌てて学校に行く支度を始めた。
支度を終えて階段を駆け下りると、
「おはよ」
玄関ホールで悟君が待っていた。
「お、おはよう」
私は寝ぐせだらけの髪を撫でつけながら、気恥ずかしく悟君の前に立つ。
「寝坊?珍しいね、和紗が」
「うん・・・。何か変な夢見ちゃって」
「夢?」
「・・・歩きながら話す」
と学校に向かいながら、私は悟君に夢のことを話した。
「男ぉ~?」
夢に出てきた男の子のことを話すと、悟君は不機嫌そうに顔をしかめた。
「さっそく浮気かよ」
「ち、違うよ」
「でも、知ってるヤツなんだろ?」
「・・・のはずなんだけど。どうしても名前が思い出せなくて。それで気になって」
すると、悟君はますます顔をしかめた。
「やっぱり・・・浮気・・・」
「だから、違うってば」
と言っているのに、悟君は私の手を握り、
「なんか学校行く気なくなった」
と、学校ではない方向へ歩いていく。
私は戸惑い、目を瞬かせる。
「悟君?」
「ん-?」
「んー?じゃないよ。どこ行くの」
「和紗との愛を深めに行くの」
「何言ってるの・・・。教師になるんでしょ?教師になろうという人が学校サボるなんてダメだからね!」
「・・・それを言われると耳がイタイ」
「じゃあ学校に行こう」
「・・・・・」
すると、悟君は建物の陰に私を連れ込み背中を壁に押し付ると、両手を壁についてその内側に囲い込んだ。
「・・・悟君?」
私は戸惑い悟君を見上げる。
悟君は腕の中の私を見下ろす。
「じゃあ、僕が授業に集中できるよう安心させてよ」
と言われて、私はますます戸惑う。
「安心って、どうやって?」
「和紗からキスしてほしい」
「え」
悟君はニッと笑った後、目を閉じてしまった。
「・・・・・・」
私は一考した後、ソッとしゃがみ込んで悟君の腕の下を潜り抜けようと試みた。
だけど、
「!」
悟君は腕を下ろして壁に手をつき直し、私が逃げ出すのを阻んだ。
「驚いてる?また『領域展開』だって」
女の子は言った。
「『領域展開』の後、術式は焼き切れてしばらく使用できないっていうもんね。でも、私の術式も領域も人を傷つけることを前提にしていないせいか、普通より術式の回復が早いの」
「・・・・・・」
「それに、一晩経てばたいていの術式は回復するって」
「・・・一晩?」
女の子が何の気なしに言った言葉に、私は反応する。
女の子はそんな私が何を考えているのか察したらしく、
「そう、向こうの世界では数年の月日でも、こっちで過ぎた時間はほんの僅か」
と言った。
「・・・・・・」
私の心に微かに焦りが生じる。
一晩。
ほんの僅かと女の子は言ったけれど、その過ぎた時間は、私にとっては違う。
(急がなくちゃ)
私には行かなくてはならないところが、やらなくてはならないことがある。
・・・でも、それが何なのかわからない。
「あら、ちょっとしゃべりすぎたわね」
そういって女の子は「おっと」と言うように口元を手で押さえる。
しかし、すぐに蠱惑的な笑みを浮かべて、
「お待たせ。帰りなさい、あなたの世界へ」
と、指をパチンと鳴らした。
「ん・・・」
眩しい光が瞼の上に振り注ぎ、私は目を醒ました。
「あ・・・」
目覚めたそこは、寮の自分の部屋のベッドだった。
「夢・・・」
でも、それは安堵感や爽快感とは異なる、尾を引くような目覚めだった。
夢に出てきた、あの男の子。
夢の中で、私は彼の名前を呼んでいた。
なのに、今は覚えていない。
「・・・・・・」
どうにか思い出そうと記憶を巡らせていたら、ふと目覚まし時計が目についた。
見てみると、時間はとっくに8時を過ぎている。
「やばっ、遅刻!」
私はベッドから飛び起きて、慌てて学校に行く支度を始めた。
支度を終えて階段を駆け下りると、
「おはよ」
玄関ホールで悟君が待っていた。
「お、おはよう」
私は寝ぐせだらけの髪を撫でつけながら、気恥ずかしく悟君の前に立つ。
「寝坊?珍しいね、和紗が」
「うん・・・。何か変な夢見ちゃって」
「夢?」
「・・・歩きながら話す」
と学校に向かいながら、私は悟君に夢のことを話した。
「男ぉ~?」
夢に出てきた男の子のことを話すと、悟君は不機嫌そうに顔をしかめた。
「さっそく浮気かよ」
「ち、違うよ」
「でも、知ってるヤツなんだろ?」
「・・・のはずなんだけど。どうしても名前が思い出せなくて。それで気になって」
すると、悟君はますます顔をしかめた。
「やっぱり・・・浮気・・・」
「だから、違うってば」
と言っているのに、悟君は私の手を握り、
「なんか学校行く気なくなった」
と、学校ではない方向へ歩いていく。
私は戸惑い、目を瞬かせる。
「悟君?」
「ん-?」
「んー?じゃないよ。どこ行くの」
「和紗との愛を深めに行くの」
「何言ってるの・・・。教師になるんでしょ?教師になろうという人が学校サボるなんてダメだからね!」
「・・・それを言われると耳がイタイ」
「じゃあ学校に行こう」
「・・・・・」
すると、悟君は建物の陰に私を連れ込み背中を壁に押し付ると、両手を壁についてその内側に囲い込んだ。
「・・・悟君?」
私は戸惑い悟君を見上げる。
悟君は腕の中の私を見下ろす。
「じゃあ、僕が授業に集中できるよう安心させてよ」
と言われて、私はますます戸惑う。
「安心って、どうやって?」
「和紗からキスしてほしい」
「え」
悟君はニッと笑った後、目を閉じてしまった。
「・・・・・・」
私は一考した後、ソッとしゃがみ込んで悟君の腕の下を潜り抜けようと試みた。
だけど、
「!」
悟君は腕を下ろして壁に手をつき直し、私が逃げ出すのを阻んだ。