第35話 夢一夜
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私は溜め息を吐きつつ、
「ごめんね、せっかくの誕生日プレゼントなのに。他の(出来れば安い)店でもいいかな?」
と言った。
すると悟君は、
「和紗はその服、どこで買ったの?」
ときいてきた。
私は目を瞬かせながら答える。
「古着屋だけど。歌姫さんに教えてもらったの」
「じゃあ、僕のもそこで選んでよ」
「え、でも」
ここ服とはずいぶんテイストが違うけれど、と戸惑っていると、
「いーんだよ。和紗に見立ててもらうことに意味があるんだから」
と、悟君は笑って言った。
なので、私も微笑んで頷く。
「・・・うん!」
それから私達は恵比寿エリアを離れて、古着屋のある下北沢エリアに向かった。
悟君の服を選び、プレゼントしてその場で着替える。
そして、街を散策した。
クレープを買って食べ歩きしたり、雑貨店や古本屋に入ったり。
買うつもりもないのに、冷やかしで眼鏡屋に入ってお互い変なデザインのサングラスを試着するのを見て笑い合った。
「ご実家ではどんな風にお祝いしたの?」
歩きながら、私は尋ねた。
「お祝いつっても、ほとんどが儀式とか挨拶回りだよ」
悟君は言った。
「御先祖が祀られてる神社を参り回ったり、分家が挨拶来るのに対応したりしたかな」
「ふーん・・・。跡取りは大変だね」
「・・・・・・」
そこで、悟君は唐突に立ち止まってしまった。
私もつられて立ち止まり、悟君の顔を見上げた。
「悟君?」
すると、悟君は私を見返し言った。
「高専を卒業したら、僕は五条家の当主になる」
それを聞いて、私は少し驚く。
でも、考えればごく自然の流れだ。
「そっか。それはまた大変だね」
「だから来年の誕生日の時は、和紗も一緒に実家へ行って欲しい」
「え・・・」
悟君は真っ直ぐに私の目を見つめて言った。
「僕は和紗と結婚したい。だから、親に会って欲しい」
今度こそ本当に驚いてしまって、私は言葉を失ってしまった。
悟君は真剣な眼差しで、私を見つめ続ける。
「と、唐突だね。からかってるの?」
私は冗談めかしつつ言った。
「私達、たった三日前にお互いの気持ちを確かめ合ったばかりだよ?ちょっと急過ぎないかな・・・?」
だけど、悟君の眼差しは揺らがない。
私が困って視線を泳がせていると、
「・・・それもそっか」
フッと笑いながら、悟君は言った。
それで私は少し安堵する。
すると、また悟君は真剣な面持ちで続けた。
「でも、僕は真剣だから」
「・・・・・・」
「この先もずっと、和紗が傍にいて欲しい」
そして、ようやくニッと笑った。
「ま、まだ先のことだし。それまで考えといてよ」
そうして、再び歩き出した。
「・・・・・・」
歩きながら、言われた言葉を噛み締める。
(私も、ずっと傍にいたい)
すぐにそう伝えればいいのに。
幸せ過ぎて、夢なんじゃないかと思えて、夢が現実になったならば、醒めてしまうんじゃないかと怖くて、言えなかった。
夕方からのデートはあっという間で、早くも帰らなければならない時間になった。
・・・ううん。きっと明け方から会っていたとしても、一緒の時間はあっという間に過ぎるのだろう。
高専に帰った時には、既に門限の時間は過ぎていて、私達は夜蛾先生に見つからないようにコソコソと寮へ戻った。
「「・・・セーフ」」
玄関ホールに入って、私と悟君はホッと息をついた。
そして、顔を合わせてクスクスと笑い合う。
「・・・じゃあ、また明日」
私は言った。
「今日は楽しかった。ありがとう」
そう言いながらも、まだまだ名残惜しい。
悟君は悟君で、私に熱っぽい視線を送り続ける。
断ち切らないと、いつまでもここで二人して突っ立っていることになりそうだ。
「おやすみなさい」
と、踵を返した時だった。
「和紗」
悟君が私の手首を掴み、引き寄せた。
そして、両手で抱き締めた。
「・・・・・・」
私は、この温もりに身を預けるようにゆっくりと瞼を閉じた。
そして、悟君を抱き締め返した。
「ごめんね、せっかくの誕生日プレゼントなのに。他の(出来れば安い)店でもいいかな?」
と言った。
すると悟君は、
「和紗はその服、どこで買ったの?」
ときいてきた。
私は目を瞬かせながら答える。
「古着屋だけど。歌姫さんに教えてもらったの」
「じゃあ、僕のもそこで選んでよ」
「え、でも」
ここ服とはずいぶんテイストが違うけれど、と戸惑っていると、
「いーんだよ。和紗に見立ててもらうことに意味があるんだから」
と、悟君は笑って言った。
なので、私も微笑んで頷く。
「・・・うん!」
それから私達は恵比寿エリアを離れて、古着屋のある下北沢エリアに向かった。
悟君の服を選び、プレゼントしてその場で着替える。
そして、街を散策した。
クレープを買って食べ歩きしたり、雑貨店や古本屋に入ったり。
買うつもりもないのに、冷やかしで眼鏡屋に入ってお互い変なデザインのサングラスを試着するのを見て笑い合った。
「ご実家ではどんな風にお祝いしたの?」
歩きながら、私は尋ねた。
「お祝いつっても、ほとんどが儀式とか挨拶回りだよ」
悟君は言った。
「御先祖が祀られてる神社を参り回ったり、分家が挨拶来るのに対応したりしたかな」
「ふーん・・・。跡取りは大変だね」
「・・・・・・」
そこで、悟君は唐突に立ち止まってしまった。
私もつられて立ち止まり、悟君の顔を見上げた。
「悟君?」
すると、悟君は私を見返し言った。
「高専を卒業したら、僕は五条家の当主になる」
それを聞いて、私は少し驚く。
でも、考えればごく自然の流れだ。
「そっか。それはまた大変だね」
「だから来年の誕生日の時は、和紗も一緒に実家へ行って欲しい」
「え・・・」
悟君は真っ直ぐに私の目を見つめて言った。
「僕は和紗と結婚したい。だから、親に会って欲しい」
今度こそ本当に驚いてしまって、私は言葉を失ってしまった。
悟君は真剣な眼差しで、私を見つめ続ける。
「と、唐突だね。からかってるの?」
私は冗談めかしつつ言った。
「私達、たった三日前にお互いの気持ちを確かめ合ったばかりだよ?ちょっと急過ぎないかな・・・?」
だけど、悟君の眼差しは揺らがない。
私が困って視線を泳がせていると、
「・・・それもそっか」
フッと笑いながら、悟君は言った。
それで私は少し安堵する。
すると、また悟君は真剣な面持ちで続けた。
「でも、僕は真剣だから」
「・・・・・・」
「この先もずっと、和紗が傍にいて欲しい」
そして、ようやくニッと笑った。
「ま、まだ先のことだし。それまで考えといてよ」
そうして、再び歩き出した。
「・・・・・・」
歩きながら、言われた言葉を噛み締める。
(私も、ずっと傍にいたい)
すぐにそう伝えればいいのに。
幸せ過ぎて、夢なんじゃないかと思えて、夢が現実になったならば、醒めてしまうんじゃないかと怖くて、言えなかった。
夕方からのデートはあっという間で、早くも帰らなければならない時間になった。
・・・ううん。きっと明け方から会っていたとしても、一緒の時間はあっという間に過ぎるのだろう。
高専に帰った時には、既に門限の時間は過ぎていて、私達は夜蛾先生に見つからないようにコソコソと寮へ戻った。
「「・・・セーフ」」
玄関ホールに入って、私と悟君はホッと息をついた。
そして、顔を合わせてクスクスと笑い合う。
「・・・じゃあ、また明日」
私は言った。
「今日は楽しかった。ありがとう」
そう言いながらも、まだまだ名残惜しい。
悟君は悟君で、私に熱っぽい視線を送り続ける。
断ち切らないと、いつまでもここで二人して突っ立っていることになりそうだ。
「おやすみなさい」
と、踵を返した時だった。
「和紗」
悟君が私の手首を掴み、引き寄せた。
そして、両手で抱き締めた。
「・・・・・・」
私は、この温もりに身を預けるようにゆっくりと瞼を閉じた。
そして、悟君を抱き締め返した。