第35話 夢一夜
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その言葉は、諦めのようにも、ある種の決意のようにも聞こえた。
夜蛾さんは何も言わず、そのまま階段を降りて行く。
一番下まで降り来て私の隣に立つと、
「今はそっとしておいてやれ」
と言い残し去っていった。
「・・・・・・」
私はもう一度、五条さんの方を見上げた。
夕日の斜陽でその姿が照らされる。
その隣には、五条さん自身の影がひとつだけ。
ひとつだけ。
私は何を期待していたんだろう。
もうあの日々が戻らないことを、もうとっくにわかっていたはずなのに。
日常が戻ってきた。
授業を受けて、修行して、その合間に任務をこなす。
呪術高専の日常が戻ってきた。
「オマエ術師やめろ。クソの役にもたたねぇから」
缶ジュースのプルタブを開けながら、五条さんが伊地知さんに言い放った。
「今すぐ普通免許取ってこい。MT な。断ったらマジビンタ」
有無を言わせない言い方に、伊地知さんは腹立たしいやら恐ろしいやらで震えあがっている。
それでも精一杯の勇気を振り絞って、
「でも、私は術師になるために呪術高専に・・・」
「向いてねぇっつってんの」
反論したものの、呆気なくあしらわれた。
そんな二人を見て、私は深々と溜息を吐いてから、
「今すぐ免許取ってこいって言ったって、伊地知君はまだ16だよ。まだ無理じゃない」
と言った。
すると五条さんはジュースをグイっとあおって口飲んでから、
「そだっけ?」
と言った。
「それに言い方。デリカシーなさすぎ。あんな言い方じゃ傷ついちゃうよ。伊地知君、一生懸命なのに。すごく頑張ってるのに!」
と私が話す隣で、
(もっと言って・・・。もっと褒めて・・・!)
と、伊地知さんが胸をときめかせていることは知る由もない。
すると、五条さんは言った。
「でも伊地知 、オマエの反転術式がなけりゃ何回も死んでたぞ」
「そ、それは・・・」
確かに・・・と私が小さく頷くと、一転して伊地知さんはガクリと肩を落としていた。
「それに、術師になるだけが全てじゃないだろ」
五条さんは飲み干したジュースの缶を術式で圧縮しながら続けた。
「補助監督っていう選択もある。補助監督だって重要な役割がある。術師になれないからってそれで劣ってるってワケじゃない。人には適正があんだよ」
その言葉に、伊地知さんは気づきを得たようにハッと息を飲んだ。
そして、私も五条さんの真意に気づいてフッと微笑んだ。
ここ最近、五条さんは伊地知さんをはじめとする後輩の任務に付き添うことが増えた。
五条さん一人の方が簡単に済むはずなのに、あくまでもサポートに徹し、いざという時まで手を出さなかった。
五条さんは変わった。
傑君の離反後、自暴自棄になって荒れるのではと夜蛾さんをはじめとする周囲の人間は心配していた。
かくいう私も、そうだった。
だけど、周囲の心配とは裏腹に、五条さんはどこか落ち着いてしっかりしていった。
・・・とは言え。
「ま、このままじゃ補助監督としてもクソの役にも立たねぇけどな。せめて結界術くらいさっさと会得しろよ」
デリカシーのない言い方だったり、任務後そのまま観光に行ったりするのは相変わらずだけれど。
「・・・(あわわわ・・・)」
再び暴言を吐かれ、伊地知さんは泣きそうな顔で震えている。
「もう!だから言い方・・・」
「あ~、腹減った。飯食いに行こうぜ~」
私が咎めるのも聞かず、五条さんは歩き出す。
「和紗、何食べたいの?」
「私は何でもいいよ。伊地知君は何食べたい?」
「わ、私は、うどんがいいです!」
「じゃあ、うどん屋さんに行こうか?伊地知君の頑張ったご褒美!」
「ん~、しゃあねーなぁ。付き合ってやるよ」
夜蛾さんは何も言わず、そのまま階段を降りて行く。
一番下まで降り来て私の隣に立つと、
「今はそっとしておいてやれ」
と言い残し去っていった。
「・・・・・・」
私はもう一度、五条さんの方を見上げた。
夕日の斜陽でその姿が照らされる。
その隣には、五条さん自身の影がひとつだけ。
ひとつだけ。
私は何を期待していたんだろう。
もうあの日々が戻らないことを、もうとっくにわかっていたはずなのに。
日常が戻ってきた。
授業を受けて、修行して、その合間に任務をこなす。
呪術高専の日常が戻ってきた。
「オマエ術師やめろ。クソの役にもたたねぇから」
缶ジュースのプルタブを開けながら、五条さんが伊地知さんに言い放った。
「今すぐ普通免許取ってこい。
有無を言わせない言い方に、伊地知さんは腹立たしいやら恐ろしいやらで震えあがっている。
それでも精一杯の勇気を振り絞って、
「でも、私は術師になるために呪術高専に・・・」
「向いてねぇっつってんの」
反論したものの、呆気なくあしらわれた。
そんな二人を見て、私は深々と溜息を吐いてから、
「今すぐ免許取ってこいって言ったって、伊地知君はまだ16だよ。まだ無理じゃない」
と言った。
すると五条さんはジュースをグイっとあおって口飲んでから、
「そだっけ?」
と言った。
「それに言い方。デリカシーなさすぎ。あんな言い方じゃ傷ついちゃうよ。伊地知君、一生懸命なのに。すごく頑張ってるのに!」
と私が話す隣で、
(もっと言って・・・。もっと褒めて・・・!)
と、伊地知さんが胸をときめかせていることは知る由もない。
すると、五条さんは言った。
「でも
「そ、それは・・・」
確かに・・・と私が小さく頷くと、一転して伊地知さんはガクリと肩を落としていた。
「それに、術師になるだけが全てじゃないだろ」
五条さんは飲み干したジュースの缶を術式で圧縮しながら続けた。
「補助監督っていう選択もある。補助監督だって重要な役割がある。術師になれないからってそれで劣ってるってワケじゃない。人には適正があんだよ」
その言葉に、伊地知さんは気づきを得たようにハッと息を飲んだ。
そして、私も五条さんの真意に気づいてフッと微笑んだ。
ここ最近、五条さんは伊地知さんをはじめとする後輩の任務に付き添うことが増えた。
五条さん一人の方が簡単に済むはずなのに、あくまでもサポートに徹し、いざという時まで手を出さなかった。
五条さんは変わった。
傑君の離反後、自暴自棄になって荒れるのではと夜蛾さんをはじめとする周囲の人間は心配していた。
かくいう私も、そうだった。
だけど、周囲の心配とは裏腹に、五条さんはどこか落ち着いてしっかりしていった。
・・・とは言え。
「ま、このままじゃ補助監督としてもクソの役にも立たねぇけどな。せめて結界術くらいさっさと会得しろよ」
デリカシーのない言い方だったり、任務後そのまま観光に行ったりするのは相変わらずだけれど。
「・・・(あわわわ・・・)」
再び暴言を吐かれ、伊地知さんは泣きそうな顔で震えている。
「もう!だから言い方・・・」
「あ~、腹減った。飯食いに行こうぜ~」
私が咎めるのも聞かず、五条さんは歩き出す。
「和紗、何食べたいの?」
「私は何でもいいよ。伊地知君は何食べたい?」
「わ、私は、うどんがいいです!」
「じゃあ、うどん屋さんに行こうか?伊地知君の頑張ったご褒美!」
「ん~、しゃあねーなぁ。付き合ってやるよ」