第35話 夢一夜
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その時には既に村中はもぬけの殻となっていて、ただ一体の球体型呪霊がいるだけだったという。
その呪霊を祓ったところ、その内側から意識のない状態の私が発見されたのだという。
私は病院に運ばれ三日間意識のない状態が続き、そして今。
「・・・どんなことでもいい。何か思い出せたら・・・話せるようになったら、話してくれないか。傑の事を」
夜蛾さんは俯き、祈りのように言った。
それは、ただただ傑君のことが気がかりで、何か少しでも知りたいというようだった。
「頼む・・・」
私はそんな夜蛾さんを一瞥した後、何も答えず、窓の方へ顔を逸らした。
思い出す必要なんてない。
何もかも覚えてる。
『私を決して許さないでくれ』
だけど、それを言葉に、声にすることが出来なかった。
それからほどなく夜蛾さんは病室を後にした。
その後も五条さんと硝子さんは残って傍にいてくれた。
硝子さんは、お見舞いのリンゴの皮を慣れない手つきでむいている。
「・・・・・・」
私は依然として黙ったまま窓の方を見ていた。
「・・・話せよ」
五条さんが口を開いた。
それは、久々に病室に響いた声だった。
私は顔を五条さんの方へ向けた。
「傑を庇うつもりでだんまり決め込んでるなら無駄だぜ。総監部はもう既にアイツの犯行だと断定している」
五条さんの言葉に、私は眉をひそめる。
五条さんは淡々と続けた。
「『残穢』だよ。アイツの術式の『残穢』が確認された」
「・・・・・・」
「総監部の連中が知りたいのは、アイツの行方だ。オマエがアイツを見逃したんじゃないかと疑っている」
「・・・・・・」
「わかるか?このまま黙ってたらオマエは共犯にされるつってんだよ」
「・・・て」
「あ?」
喉の奥が絡まって声は弱弱しく頼りない。
でも、私は言った。
「どうして悟君まで、傑君の犯行だなんて、言い切るの」
すると、今度は五条さんの方が眉をひそめた。
硝子さんも困惑した表情をする。
私だって、なぜこんなことを言ってるのか自分でわからない。
あんな場面を目にしたのに。
だけど、私は続けた。
「どうして、そんなこと、認めるの」
「・・・・・・」
「傑君がそんなことするはずないって、どうして信じてないの?」
「・・・・・・」
「傑君は・・・」
「オマエに何がわかるんだよ!!」
と五条さんが怒鳴って、私はビクッと肩を震わせた。
「五条!」
と硝子さんが窘める。
しかし五条さんは私を睨み、怒りを含んだ声で言った。
「オマエに、傑の何がわかるんだよ」
その言葉を聞いて、私はハッと息を飲んだ。
そして五条さんに言葉をかけようとしたけれど、五条さんは踵を返して病室を出て行ってしまった。
「ったく、アイツは・・・」
硝子さんは肩をすくめた。
「和紗、気を悪くしないで。・・・アイツも、信じられないんだよ」
「・・・・・・」
「でも、事実を受け入れなければともがいてる。アイツも、苦しいんだよ」
そう言って、切り分けたリンゴを私に差し出した。
「ほんと、何してくれちゃってんだってカンジだよ」
そして、窓辺に立ちポケットを漁りタバコを取り出した。
ここは病室だと言いかけたけれど、硝子さんはタバコを咥えただけで、火をつけようとはしない。
「・・・ホント、馬鹿」
そう呟くと、タバコの先は小さく震えていた。
私はそれを見て、視線を落とした。
「・・・・・・」
そうだ。
私以上に事実を受け入れがたいのは、夜蛾さんに、硝子さんに、五条さんの方なのに。
それなのに、私は責めるようなことを言ってしまった。
私は、本当に何もわかってない。
その数日後、旧■■村の事件は夏油傑の犯行だと断定された。
私は発見時の状況等から事件には加担しておらず、また、その後の夏油傑の行方にも認識していないことが認められた。
呪術師が非術師を100人以上惨殺するという事件は、近代呪術界史上類のない大罪とされた。
そして、夏油傑は『最悪の呪詛師』と呼ばれるようになった。
その呪霊を祓ったところ、その内側から意識のない状態の私が発見されたのだという。
私は病院に運ばれ三日間意識のない状態が続き、そして今。
「・・・どんなことでもいい。何か思い出せたら・・・話せるようになったら、話してくれないか。傑の事を」
夜蛾さんは俯き、祈りのように言った。
それは、ただただ傑君のことが気がかりで、何か少しでも知りたいというようだった。
「頼む・・・」
私はそんな夜蛾さんを一瞥した後、何も答えず、窓の方へ顔を逸らした。
思い出す必要なんてない。
何もかも覚えてる。
『私を決して許さないでくれ』
だけど、それを言葉に、声にすることが出来なかった。
それからほどなく夜蛾さんは病室を後にした。
その後も五条さんと硝子さんは残って傍にいてくれた。
硝子さんは、お見舞いのリンゴの皮を慣れない手つきでむいている。
「・・・・・・」
私は依然として黙ったまま窓の方を見ていた。
「・・・話せよ」
五条さんが口を開いた。
それは、久々に病室に響いた声だった。
私は顔を五条さんの方へ向けた。
「傑を庇うつもりでだんまり決め込んでるなら無駄だぜ。総監部はもう既にアイツの犯行だと断定している」
五条さんの言葉に、私は眉をひそめる。
五条さんは淡々と続けた。
「『残穢』だよ。アイツの術式の『残穢』が確認された」
「・・・・・・」
「総監部の連中が知りたいのは、アイツの行方だ。オマエがアイツを見逃したんじゃないかと疑っている」
「・・・・・・」
「わかるか?このまま黙ってたらオマエは共犯にされるつってんだよ」
「・・・て」
「あ?」
喉の奥が絡まって声は弱弱しく頼りない。
でも、私は言った。
「どうして悟君まで、傑君の犯行だなんて、言い切るの」
すると、今度は五条さんの方が眉をひそめた。
硝子さんも困惑した表情をする。
私だって、なぜこんなことを言ってるのか自分でわからない。
あんな場面を目にしたのに。
だけど、私は続けた。
「どうして、そんなこと、認めるの」
「・・・・・・」
「傑君がそんなことするはずないって、どうして信じてないの?」
「・・・・・・」
「傑君は・・・」
「オマエに何がわかるんだよ!!」
と五条さんが怒鳴って、私はビクッと肩を震わせた。
「五条!」
と硝子さんが窘める。
しかし五条さんは私を睨み、怒りを含んだ声で言った。
「オマエに、傑の何がわかるんだよ」
その言葉を聞いて、私はハッと息を飲んだ。
そして五条さんに言葉をかけようとしたけれど、五条さんは踵を返して病室を出て行ってしまった。
「ったく、アイツは・・・」
硝子さんは肩をすくめた。
「和紗、気を悪くしないで。・・・アイツも、信じられないんだよ」
「・・・・・・」
「でも、事実を受け入れなければともがいてる。アイツも、苦しいんだよ」
そう言って、切り分けたリンゴを私に差し出した。
「ほんと、何してくれちゃってんだってカンジだよ」
そして、窓辺に立ちポケットを漁りタバコを取り出した。
ここは病室だと言いかけたけれど、硝子さんはタバコを咥えただけで、火をつけようとはしない。
「・・・ホント、馬鹿」
そう呟くと、タバコの先は小さく震えていた。
私はそれを見て、視線を落とした。
「・・・・・・」
そうだ。
私以上に事実を受け入れがたいのは、夜蛾さんに、硝子さんに、五条さんの方なのに。
それなのに、私は責めるようなことを言ってしまった。
私は、本当に何もわかってない。
その数日後、旧■■村の事件は夏油傑の犯行だと断定された。
私は発見時の状況等から事件には加担しておらず、また、その後の夏油傑の行方にも認識していないことが認められた。
呪術師が非術師を100人以上惨殺するという事件は、近代呪術界史上類のない大罪とされた。
そして、夏油傑は『最悪の呪詛師』と呼ばれるようになった。