第34話 玉折
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本格的に眠ってしまう前に、慌てて身体を拭かせて服を着せて、急いで奥の部屋に布団を敷いて二人を寝かせた。
「・・・はぁ」
眠った二人に布団を掛けて、私はようやく一息吐いた。
そして、改めて考える。
(さっき菜々子ちゃんが言ってた。『閉じ込めてた』って)
それは、彼女達を監禁していたということだろうか。
しかも村ぐるみで。
もしそうなら、大悪事だ。
そして、この悪事を知った夏油さんと私を村長達がみすみす見逃すだろうか。
「・・・・・・」
急に身の危険を感じて辺りを見回す。
そんな時だった。
───いやぁぁぁ
───なんでっっ
遠くから微かに、悲鳴のような声が聞こえてきた。
そのうえ更に。
ガタンッ
乱暴に出入口の扉が開く音がして、私はビクッと身体を震わせた。
ところが。
「た、助けて・・・」
聞こえてきたのは、弱く掠れた声だった。
「・・・・・・・」
私はゴクリと喉を鳴らしながら、ゆっくり出入口へと向かった。
そこにいたのは、
「な・・・」
さっき電信柱のところにいた男の子と母親の二人だった。
母親は血塗れで、その腕に男の子を抱いている。
しかし男の子の身体は脱力していて、腕がだらんと揺れている。
「どうしたんですか!?何が・・・」
と私が駆け寄るよりも先に、
「ば、バケモノが・・・急に現れ、て・・・村じゅうを・・・」
と呟いて、力尽きたようにその場に倒れ込んだ。
「・・・!」
私が駆け寄った時には、もう母親は息絶えていた。
そして、最後まで抱きしめて離さなかった男の子も。
「どうして・・・一体何が・・・」
私は愕然としてその場に座り込んだ。
すると、そばに人の気配が近づくのを感じた。
「・・・・・・」
ゆっくりと顔を上げて確かめる。
その人は、夏油さんだった。
「傑君・・・」
私は震える声でその名を呼んだ。
「和紗、大丈夫?」
と夏油さんは私の腕を取り引っぱると、そのまま抱き起こした。
よくよく見てみると、夏油さんのカッターシャツには血がついている。
怪我をしたの?
そう尋ねようとしたら、
「・・・・・・」
夏油さんの肩越しに、信じられない光景を見た。
「いやぁぁあ!」
「たっ、助け・・・ぐゔっ」
大勢の呪霊が、村の人々を襲っている。
男の人も女の人も、お年寄りも子どもも。
逃げ惑う人々を追いかけ、追い詰め、蹂躙していく。
「何・・・これ」
そのおぞましさに、ただ茫然としていたら、夏油さんがピシャリと扉を閉めた。
それで、私はハッと我に返った。
「す、傑君!呪霊が!助けないと・・・!」
「あれは私の呪霊だ」
「は・・・?」
「私があの呪霊達を放った」
夏油さんが言った。
「この村の猿どもを殺す為に」
私は両手に力を込めて、
「・・・っっ!」
夏油さんを突き離した。
「何・・・言ってるの」
「・・・・・・」
「何でこんなこと!!」
「雨の音が」
私の叫びに動じることなく、夏油さんは淡々と話し始めた。
「ずっと止まないんだ。ずっと鳴り響いてる、私の耳の奥で。あの日からずっと」
「何・・・」
「そして、気づいた。これは雨音じゃない」
「・・・・・・」
「拍手の音だ。猿どもが、何も思考せずただ繰り返すだけの拍手の音だと」
「傑君・・・」
「ずっと気が狂いそうだった。この音を止めたい。そう願ってた。その方法が、たった今わかった」
「・・・・・・」
「この世界から非術師を消す。一人残らず。それが、この拍手の音を止める方法だと」
狂ってる。
正気じゃない。
そう思うのに、その穏やかな話し声や眼差しは、どうしていつもの夏油さんのままなの。
「・・・・・・」
私は夏油さんの横をすり抜けて、外に出るべく扉に手をかけた。
「・・・はぁ」
眠った二人に布団を掛けて、私はようやく一息吐いた。
そして、改めて考える。
(さっき菜々子ちゃんが言ってた。『閉じ込めてた』って)
それは、彼女達を監禁していたということだろうか。
しかも村ぐるみで。
もしそうなら、大悪事だ。
そして、この悪事を知った夏油さんと私を村長達がみすみす見逃すだろうか。
「・・・・・・」
急に身の危険を感じて辺りを見回す。
そんな時だった。
───いやぁぁぁ
───なんでっっ
遠くから微かに、悲鳴のような声が聞こえてきた。
そのうえ更に。
ガタンッ
乱暴に出入口の扉が開く音がして、私はビクッと身体を震わせた。
ところが。
「た、助けて・・・」
聞こえてきたのは、弱く掠れた声だった。
「・・・・・・・」
私はゴクリと喉を鳴らしながら、ゆっくり出入口へと向かった。
そこにいたのは、
「な・・・」
さっき電信柱のところにいた男の子と母親の二人だった。
母親は血塗れで、その腕に男の子を抱いている。
しかし男の子の身体は脱力していて、腕がだらんと揺れている。
「どうしたんですか!?何が・・・」
と私が駆け寄るよりも先に、
「ば、バケモノが・・・急に現れ、て・・・村じゅうを・・・」
と呟いて、力尽きたようにその場に倒れ込んだ。
「・・・!」
私が駆け寄った時には、もう母親は息絶えていた。
そして、最後まで抱きしめて離さなかった男の子も。
「どうして・・・一体何が・・・」
私は愕然としてその場に座り込んだ。
すると、そばに人の気配が近づくのを感じた。
「・・・・・・」
ゆっくりと顔を上げて確かめる。
その人は、夏油さんだった。
「傑君・・・」
私は震える声でその名を呼んだ。
「和紗、大丈夫?」
と夏油さんは私の腕を取り引っぱると、そのまま抱き起こした。
よくよく見てみると、夏油さんのカッターシャツには血がついている。
怪我をしたの?
そう尋ねようとしたら、
「・・・・・・」
夏油さんの肩越しに、信じられない光景を見た。
「いやぁぁあ!」
「たっ、助け・・・ぐゔっ」
大勢の呪霊が、村の人々を襲っている。
男の人も女の人も、お年寄りも子どもも。
逃げ惑う人々を追いかけ、追い詰め、蹂躙していく。
「何・・・これ」
そのおぞましさに、ただ茫然としていたら、夏油さんがピシャリと扉を閉めた。
それで、私はハッと我に返った。
「す、傑君!呪霊が!助けないと・・・!」
「あれは私の呪霊だ」
「は・・・?」
「私があの呪霊達を放った」
夏油さんが言った。
「この村の猿どもを殺す為に」
私は両手に力を込めて、
「・・・っっ!」
夏油さんを突き離した。
「何・・・言ってるの」
「・・・・・・」
「何でこんなこと!!」
「雨の音が」
私の叫びに動じることなく、夏油さんは淡々と話し始めた。
「ずっと止まないんだ。ずっと鳴り響いてる、私の耳の奥で。あの日からずっと」
「何・・・」
「そして、気づいた。これは雨音じゃない」
「・・・・・・」
「拍手の音だ。猿どもが、何も思考せずただ繰り返すだけの拍手の音だと」
「傑君・・・」
「ずっと気が狂いそうだった。この音を止めたい。そう願ってた。その方法が、たった今わかった」
「・・・・・・」
「この世界から非術師を消す。一人残らず。それが、この拍手の音を止める方法だと」
狂ってる。
正気じゃない。
そう思うのに、その穏やかな話し声や眼差しは、どうしていつもの夏油さんのままなの。
「・・・・・・」
私は夏油さんの横をすり抜けて、外に出るべく扉に手をかけた。