第34話 玉折
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再び診療所で男の子を治療して、自宅へ帰るのを見送った後、私はそのままそこで夏油さんを待った。
カチカチカチ・・・
壁に掛けられた振子時計の秒針の音がやけにうるさい。
落ち着かない。
この村には何か違和感がある。
呪霊のことじゃない。
この村は何かを隠している。
でも、それに深入りしてはならない気がする。
(早く帰りたいな)
夏油さんが戻ったら、夜明けを待たずに帰ろうと話してみようか。
そんなことを思っていたら。
ガタッ
扉が開く音がして、私はそちらを振り返った。
開いた扉の向うには、夏油さん、そして見知らぬ二人の女の子が立っていた。
「傑君・・・?」
不審に思いながら、私はそちらへ歩み寄る。
「その子たちは?怪我してるの?」
そして、屈んで女の子たちの背の高さに視線を合わせる。
見てみると、二人とも顔が青黒く変色するほど腫れ上がっていた。
髪の毛も何日も洗っていないようでぐしゃぐしゃでもつれているし、それにひどい悪臭がする。
(虐待・・・?)
そんな言葉が思い浮かんだ。
愕然としていたら、二人は酷く怯えたように身体を震わせ、夏油さんの後ろに隠れてしまった。
「・・・彼女は大丈夫だよ。君達の味方だ」
夏油さんはそう言って、二人の肩にそっと手を添えた。
そして、
「二人を頼む」
と二人を私の前に押し出すと、そのまま踵を返してまた出て行こうとする。
「傑君?」
私は呼びかける。
違和感は、怯えを伴ってより大きくなっていく。
「何があったの?どこに行くの?」
だけど、夏油さんは何も答えずに行ってしまった。
「・・・・・・」
戸惑いながらも、とりあえず私は女の子達を振り向き、怖がらせないように微笑みを作り声をかけた。
「もう大丈夫だからね」
「・・・・・・」
「顔、少し触ってもいい?治したいの。腫れてて痛いでしょ?だから・・・」
「・・・・・・」
女の子達は答えない。
二人身を寄せ合って、私を警戒している。
私は内心溜息を吐き、気を取り直して言った。
「お腹は減ってない?おにぎりか何か作ってもらうようにお願いしようか?」
「・・・・・・」
やはり二人は答えない。
だけど、お腹がグゥ〜ッと鳴ったのが聞こえて、私はフッと笑った。
「わかった。頼んで来るね。少し待ってて・・・」
「頼まなくていい!!」
女の子の一人が突然大きな声で言った。
私は驚いて彼女を見返した。
よくよく見てみると、二人は顔がよく似ている。
髪色が異なるので印象が違って見えるけれど、二人はほぼ同じ顔をしている。
(双子・・・)
さっきから村の人達がしきりに口にするその言葉を思い出した。
「頼まなくていい」
先程大声を出した明るい髪色の方の女の子が言った。
「ここにいる全員、私達が死ねばいいって思ってる」
「え・・・」
「自分の手を汚したくないから殺さないだけ。でも、弱らせようと私達を閉じ込めるの」
「私達は、何も悪くないのに・・・」
すると、暗い髪色の方の女の子も話し始めた。
「さっきも、アイツが私のぬいぐるみにイタズラするからやり返しただけ。それなのに・・・」
二人の話を聞いて、おおよその状況はわかった。
最初に感じたように、二人は村の人達から虐待を受けている。
そして、二人は呪術の能力を持っている。
「・・・・・・」
私は暗澹とした気持ちで溜息を吐いた。
すぐに気持ちを切り替えて、
「私は和紗。二人の名前は?」
と尋ねた。
すると二人は、
「菜々子・・・」
「・・・美々子」
と小さな声で教えてくれた。
「菜々子ちゃん、美々子ちゃん」
私は言った。
「もう大丈夫。もう二人に怖い思いはさせないから」
すると二人は互いに顔を見合わせて、
「そうだね・・・」
「あの人もそう言って守ってくれた・・・」
と囁き合った。
それからの二人は警戒を解いて、私の治療を受け入れた。
そして診療所のシャワーで身体を洗い終わると、安堵したのか二人して同時に眠り始めてしまった。
カチカチカチ・・・
壁に掛けられた振子時計の秒針の音がやけにうるさい。
落ち着かない。
この村には何か違和感がある。
呪霊のことじゃない。
この村は何かを隠している。
でも、それに深入りしてはならない気がする。
(早く帰りたいな)
夏油さんが戻ったら、夜明けを待たずに帰ろうと話してみようか。
そんなことを思っていたら。
ガタッ
扉が開く音がして、私はそちらを振り返った。
開いた扉の向うには、夏油さん、そして見知らぬ二人の女の子が立っていた。
「傑君・・・?」
不審に思いながら、私はそちらへ歩み寄る。
「その子たちは?怪我してるの?」
そして、屈んで女の子たちの背の高さに視線を合わせる。
見てみると、二人とも顔が青黒く変色するほど腫れ上がっていた。
髪の毛も何日も洗っていないようでぐしゃぐしゃでもつれているし、それにひどい悪臭がする。
(虐待・・・?)
そんな言葉が思い浮かんだ。
愕然としていたら、二人は酷く怯えたように身体を震わせ、夏油さんの後ろに隠れてしまった。
「・・・彼女は大丈夫だよ。君達の味方だ」
夏油さんはそう言って、二人の肩にそっと手を添えた。
そして、
「二人を頼む」
と二人を私の前に押し出すと、そのまま踵を返してまた出て行こうとする。
「傑君?」
私は呼びかける。
違和感は、怯えを伴ってより大きくなっていく。
「何があったの?どこに行くの?」
だけど、夏油さんは何も答えずに行ってしまった。
「・・・・・・」
戸惑いながらも、とりあえず私は女の子達を振り向き、怖がらせないように微笑みを作り声をかけた。
「もう大丈夫だからね」
「・・・・・・」
「顔、少し触ってもいい?治したいの。腫れてて痛いでしょ?だから・・・」
「・・・・・・」
女の子達は答えない。
二人身を寄せ合って、私を警戒している。
私は内心溜息を吐き、気を取り直して言った。
「お腹は減ってない?おにぎりか何か作ってもらうようにお願いしようか?」
「・・・・・・」
やはり二人は答えない。
だけど、お腹がグゥ〜ッと鳴ったのが聞こえて、私はフッと笑った。
「わかった。頼んで来るね。少し待ってて・・・」
「頼まなくていい!!」
女の子の一人が突然大きな声で言った。
私は驚いて彼女を見返した。
よくよく見てみると、二人は顔がよく似ている。
髪色が異なるので印象が違って見えるけれど、二人はほぼ同じ顔をしている。
(双子・・・)
さっきから村の人達がしきりに口にするその言葉を思い出した。
「頼まなくていい」
先程大声を出した明るい髪色の方の女の子が言った。
「ここにいる全員、私達が死ねばいいって思ってる」
「え・・・」
「自分の手を汚したくないから殺さないだけ。でも、弱らせようと私達を閉じ込めるの」
「私達は、何も悪くないのに・・・」
すると、暗い髪色の方の女の子も話し始めた。
「さっきも、アイツが私のぬいぐるみにイタズラするからやり返しただけ。それなのに・・・」
二人の話を聞いて、おおよその状況はわかった。
最初に感じたように、二人は村の人達から虐待を受けている。
そして、二人は呪術の能力を持っている。
「・・・・・・」
私は暗澹とした気持ちで溜息を吐いた。
すぐに気持ちを切り替えて、
「私は和紗。二人の名前は?」
と尋ねた。
すると二人は、
「菜々子・・・」
「・・・美々子」
と小さな声で教えてくれた。
「菜々子ちゃん、美々子ちゃん」
私は言った。
「もう大丈夫。もう二人に怖い思いはさせないから」
すると二人は互いに顔を見合わせて、
「そうだね・・・」
「あの人もそう言って守ってくれた・・・」
と囁き合った。
それからの二人は警戒を解いて、私の治療を受け入れた。
そして診療所のシャワーで身体を洗い終わると、安堵したのか二人して同時に眠り始めてしまった。