第34話 玉折
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「そんなことない!」
私は大きな声で否定した。
夏油さんは驚いたように目を点にする。
私は構わず続けた。
「悟君には傑君がいなくちゃ駄目。じゃないと、悟君すぐ調子に乗るし、くだらないイタズラばかりするし、甘いものばかり食べてるし!傑君しか悟君を諌められる人がいないもの。それに・・・」
そう言いながら、五条さんと夏油さんが肩を並べて歩く後ろ姿が脳裏に浮かんだ。
「悟君は誰よりも傑君を信じてる」
すると、夏油さんはスッと目を伏せた。
そう言われる方が辛いというような表情だった。
そんな悲しい顔で、俯いてなんていないで。
「照れ臭いな」なんて言って、いつものように目を細めて笑ってほしい。
「私も傑君がいないと駄目」
思わず、そんなことを口にしていた。
夏油さんは目線を上げると、微笑んでこう言った。
「そんなこと言われたら自惚れてしまうよ」
「あ・・・」
『好きだよ』
そう言われたことを思い出して、私の方が赤面してしまう。
夏油さんは目をすがめて、
「アイス、溶けるよ。早く食べな」
と私に手渡し、すぐ背中を向けて立ち去って行った。
もらったアイスは、夏の夜の生温い空気に既に溶けてしまっていた。
「よぉ」
本堂へ続く石畳の参道を箒で掃き掃除していると声をかけられた。
振り返ると、そこには五条さんがいた。
二日振りに任務から帰って来たのだ。
「おかえりなさい」
私は箒片手に五条さんの前に駆けつける。
「一人で掃除かよ。みんなは?」
「傑君は今朝任務に。七海君と灰原君も昨日から。硝子は・・・サボリかな?」
「ふーん」
そう言いながら、五条さんはズボンのポケットを漁る。
そして、
「ほれ」
と、私の目の前にトンボ玉硝子が付いたストラップを差し出した。
「お土産」
「私に?」
「こないだ物欲しそうな顔してたからよ」
「・・・お土産なんてどうでもいいって言ったと思うんだけど」
「あー、俺が無事に戻ってくることが一番のお土産ってヤツね〜」
と、五条さんはおどける。
そんなこと言ってない。
だけど、
「・・・うん。そうだよ」
私は深く頷いた。
だけどすぐに照れ臭くなって、
「あ、このトンボ玉、中に金魚がいる」
と慌てて話を逸らした。
トンボ玉ガラスは透明で、中には青い目の白い金魚が閉じ込められている。
「この金魚、何だか悟君みたいだね」
「あ?」
「白くて目が青くて」
私はトンボ玉を陽の光に向けて掲げた。
ガラスの輪郭が光に透けて、金魚がまるで空を泳いでいるみたいだ。
「・・・綺麗」
そう呟いて頬を綻ばせていると、
「やっと笑ったな」
と五条さんが言った。
唐突な言葉に、私は目を瞬かせた。
「え・・・」
「オマエ、最近ずーっと不安そうな顔してたからさ」
「・・・・・・」
「人の心配ばっかしてねぇで、自分のことも気にかけろよ」
「心配するよ」
私は言った。
「好きなんだもの」
すると、五条さんはハッとして私を見返した。
てっきりまたおどけて調子に乗ったこと言うと思ったのに、そのまま真面目な顔で黙り込んで私をみつめる。
「あ、あの、悟君だけじゃなくて、皆んな、皆んながってことね!?」
と、私は慌てて言った。
だけど、五条さんは真っ直ぐな眼差しを私に向け続ける。
私はその視線を逸らすように俯きつつ、だけど続けた。
「私は、皆んなのことが好きで大切。悟君も、傑君も、硝子も、七海君も、灰原君も・・・。誰一人、傷ついてほしくない。怪我とかだけじゃなくて、心も元気でいてほしい。笑っていてほしい」
そう言い終えて、五条さんの表情を伺う。
依然として、五条さんは真剣な表情をしてただ私を見つめている。
「・・・な〜んてね、感傷的になっちゃった。ハハッ」
耐えきれず、今度は私がおどけて言った。
「帰ったばかりで疲れてるでしょ。部屋に戻って休んで。私はもう少し掃除するから。あ、お土産ありがとう!」
そう言って、離れようとした時だった。
私は大きな声で否定した。
夏油さんは驚いたように目を点にする。
私は構わず続けた。
「悟君には傑君がいなくちゃ駄目。じゃないと、悟君すぐ調子に乗るし、くだらないイタズラばかりするし、甘いものばかり食べてるし!傑君しか悟君を諌められる人がいないもの。それに・・・」
そう言いながら、五条さんと夏油さんが肩を並べて歩く後ろ姿が脳裏に浮かんだ。
「悟君は誰よりも傑君を信じてる」
すると、夏油さんはスッと目を伏せた。
そう言われる方が辛いというような表情だった。
そんな悲しい顔で、俯いてなんていないで。
「照れ臭いな」なんて言って、いつものように目を細めて笑ってほしい。
「私も傑君がいないと駄目」
思わず、そんなことを口にしていた。
夏油さんは目線を上げると、微笑んでこう言った。
「そんなこと言われたら自惚れてしまうよ」
「あ・・・」
『好きだよ』
そう言われたことを思い出して、私の方が赤面してしまう。
夏油さんは目をすがめて、
「アイス、溶けるよ。早く食べな」
と私に手渡し、すぐ背中を向けて立ち去って行った。
もらったアイスは、夏の夜の生温い空気に既に溶けてしまっていた。
「よぉ」
本堂へ続く石畳の参道を箒で掃き掃除していると声をかけられた。
振り返ると、そこには五条さんがいた。
二日振りに任務から帰って来たのだ。
「おかえりなさい」
私は箒片手に五条さんの前に駆けつける。
「一人で掃除かよ。みんなは?」
「傑君は今朝任務に。七海君と灰原君も昨日から。硝子は・・・サボリかな?」
「ふーん」
そう言いながら、五条さんはズボンのポケットを漁る。
そして、
「ほれ」
と、私の目の前にトンボ玉硝子が付いたストラップを差し出した。
「お土産」
「私に?」
「こないだ物欲しそうな顔してたからよ」
「・・・お土産なんてどうでもいいって言ったと思うんだけど」
「あー、俺が無事に戻ってくることが一番のお土産ってヤツね〜」
と、五条さんはおどける。
そんなこと言ってない。
だけど、
「・・・うん。そうだよ」
私は深く頷いた。
だけどすぐに照れ臭くなって、
「あ、このトンボ玉、中に金魚がいる」
と慌てて話を逸らした。
トンボ玉ガラスは透明で、中には青い目の白い金魚が閉じ込められている。
「この金魚、何だか悟君みたいだね」
「あ?」
「白くて目が青くて」
私はトンボ玉を陽の光に向けて掲げた。
ガラスの輪郭が光に透けて、金魚がまるで空を泳いでいるみたいだ。
「・・・綺麗」
そう呟いて頬を綻ばせていると、
「やっと笑ったな」
と五条さんが言った。
唐突な言葉に、私は目を瞬かせた。
「え・・・」
「オマエ、最近ずーっと不安そうな顔してたからさ」
「・・・・・・」
「人の心配ばっかしてねぇで、自分のことも気にかけろよ」
「心配するよ」
私は言った。
「好きなんだもの」
すると、五条さんはハッとして私を見返した。
てっきりまたおどけて調子に乗ったこと言うと思ったのに、そのまま真面目な顔で黙り込んで私をみつめる。
「あ、あの、悟君だけじゃなくて、皆んな、皆んながってことね!?」
と、私は慌てて言った。
だけど、五条さんは真っ直ぐな眼差しを私に向け続ける。
私はその視線を逸らすように俯きつつ、だけど続けた。
「私は、皆んなのことが好きで大切。悟君も、傑君も、硝子も、七海君も、灰原君も・・・。誰一人、傷ついてほしくない。怪我とかだけじゃなくて、心も元気でいてほしい。笑っていてほしい」
そう言い終えて、五条さんの表情を伺う。
依然として、五条さんは真剣な表情をしてただ私を見つめている。
「・・・な〜んてね、感傷的になっちゃった。ハハッ」
耐えきれず、今度は私がおどけて言った。
「帰ったばかりで疲れてるでしょ。部屋に戻って休んで。私はもう少し掃除するから。あ、お土産ありがとう!」
そう言って、離れようとした時だった。