第34話 玉折
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その合間に、雨が降り始める。
雨音がパラパラと室内まで響く。
「どちらも本音じゃないよ。まだその段階じゃない」
彼女が語りかける。
「非術師を見下す君。それを否定する君。これらはただ思考された可能性だ」
だけど、それは私が夏油さんにかけてほしいと望む言葉ではなかった。
「どちらを本音にするのかは、君がこれから選択するんだよ」
「・・・どうしてそんなけしかけるようなことを言うんですか!?」
彼女が話し終えたと同時に、私は物陰から二人の前に躍り出た。
「非術師を見下すだなんて、そんなことしていいわけない。非術師も呪術師も同じ人間なのに・・・!どうしてそう言って窘めないんですか!?ずっと今まで信じてきたことを信じ続けろって、どうして励ましてあげないんですか!?」
しかし反応はなく、夏油さんとその隣の女性は突然の乱入者に目を点にしている。
そして、
「誰?」
と女性が首を傾げた。
「和紗」
少し狼狽えながら、夏油さんは言った。
「いつからそこに」
「・・・・・・」
言うべきかどうか迷ったけれど。
「・・・『非術師を皆殺しにすればいい』ってとこから・・・」
と言うと、夏油さんの表情が強張った。
そして、そのまま俯いた後、話の先を変えるべく言葉を紡ぐ。
「・・・紹介するよ。彼女は九十九由基さん。特級呪術師だ」
「特級・・・」
私はハッとして、改めて彼女の方を見た。
九十九さんは長身で大柄で、一般的な日本女性とはかけ離れた体格をしている。
長く明るい色の髪と大きな瞳が、よりその風貌を際立たせている。
特級だと聞いていなくても、その佇まいには気圧されるような迫力があった。
「あの・・・」
今更になって怖気づいていると、
「Hi♡」
九十九さんはすこぶるフレンドリーな笑顔を私に向けた。
「ご紹介賜ったように、私の名は九十九由基。よろしく、Girl。君の名前は?」
「鶴來和紗、です・・・」
「和紗。何君、夏油君のガールフレンドなのかい?」
「違いますよ」
そう言ったのは夏油さんだ。
「和紗は私と同学年の学友です」
だけど、九十九さんはニヤリと夏油さんに笑いかけて言った。
「でも、ずいぶんと君のことを心配しているみたいだけど」
そして、また私の方へ向き直り続けた。
「誤解させてしまったようだけど、別にけしかけたつもりはないんだ。ただ、沸き上がる感情や思考を認めないことは苦しい。だから、どんな感情や思考であれ、一度は自分の中にある事を認めるべきなんだ。それがどんなにネガティブなものであってもね。そうすることで楽になれるし、向かうべき方向もわかる。見て見ぬふりが一番苦しいのさ」
「・・・・・・」
「彼が悩み苦しんでいるように見えたからね。少しでも気が楽になる様にああ話したまでさ」
「・・・・・・」
「彼なら君が心配してるようなことにはならないさ」
わかってる。
非術師を見殺しになど馬鹿げた考えだ。
夏油さんが本気で考えている訳ない。
「・・・・・・」
でも、この人は信用ならない。
警戒して睨みつけるけれど、
「っていうか、何か甘い匂いがする〜。それ何?」
と、九十九さんは気にすることなくズイズイと私に近づいてきた。
私はうろたえつつも、手にしていたどら焼きを差し出した。
「・・・どら焼きです。よかったらどうぞ」
「えっ、いいのぉ?やったぁ!いっただき〜」
と言いながら、九十九さんはヒョイヒョイと私の手元からどら焼きを取っていく。そして、
「で、ふぇふぁいふぉふぇぐってふぁふぁっふぁのふぁ(世界を巡ってわかったのは)、ふゅほふふぁひふぉんふぉふひゅうふぉふぉのふぁんふぁよ(呪力は日本特有のものだったんだよ)」
と口いっぱいに頬張りながら、世界を巡って見てきたもの知り得たものについて話してくれた(ほとんど何言ってるかわからないけれど)。
九十九さんの目的は、呪霊の生まれない世界を作ること。
悪い人じゃないのかもしれない。
だけど、その手段をどう考えているのか。
警戒はまだ解けなかった。
雨音がパラパラと室内まで響く。
「どちらも本音じゃないよ。まだその段階じゃない」
彼女が語りかける。
「非術師を見下す君。それを否定する君。これらはただ思考された可能性だ」
だけど、それは私が夏油さんにかけてほしいと望む言葉ではなかった。
「どちらを本音にするのかは、君がこれから選択するんだよ」
「・・・どうしてそんなけしかけるようなことを言うんですか!?」
彼女が話し終えたと同時に、私は物陰から二人の前に躍り出た。
「非術師を見下すだなんて、そんなことしていいわけない。非術師も呪術師も同じ人間なのに・・・!どうしてそう言って窘めないんですか!?ずっと今まで信じてきたことを信じ続けろって、どうして励ましてあげないんですか!?」
しかし反応はなく、夏油さんとその隣の女性は突然の乱入者に目を点にしている。
そして、
「誰?」
と女性が首を傾げた。
「和紗」
少し狼狽えながら、夏油さんは言った。
「いつからそこに」
「・・・・・・」
言うべきかどうか迷ったけれど。
「・・・『非術師を皆殺しにすればいい』ってとこから・・・」
と言うと、夏油さんの表情が強張った。
そして、そのまま俯いた後、話の先を変えるべく言葉を紡ぐ。
「・・・紹介するよ。彼女は九十九由基さん。特級呪術師だ」
「特級・・・」
私はハッとして、改めて彼女の方を見た。
九十九さんは長身で大柄で、一般的な日本女性とはかけ離れた体格をしている。
長く明るい色の髪と大きな瞳が、よりその風貌を際立たせている。
特級だと聞いていなくても、その佇まいには気圧されるような迫力があった。
「あの・・・」
今更になって怖気づいていると、
「Hi♡」
九十九さんはすこぶるフレンドリーな笑顔を私に向けた。
「ご紹介賜ったように、私の名は九十九由基。よろしく、Girl。君の名前は?」
「鶴來和紗、です・・・」
「和紗。何君、夏油君のガールフレンドなのかい?」
「違いますよ」
そう言ったのは夏油さんだ。
「和紗は私と同学年の学友です」
だけど、九十九さんはニヤリと夏油さんに笑いかけて言った。
「でも、ずいぶんと君のことを心配しているみたいだけど」
そして、また私の方へ向き直り続けた。
「誤解させてしまったようだけど、別にけしかけたつもりはないんだ。ただ、沸き上がる感情や思考を認めないことは苦しい。だから、どんな感情や思考であれ、一度は自分の中にある事を認めるべきなんだ。それがどんなにネガティブなものであってもね。そうすることで楽になれるし、向かうべき方向もわかる。見て見ぬふりが一番苦しいのさ」
「・・・・・・」
「彼が悩み苦しんでいるように見えたからね。少しでも気が楽になる様にああ話したまでさ」
「・・・・・・」
「彼なら君が心配してるようなことにはならないさ」
わかってる。
非術師を見殺しになど馬鹿げた考えだ。
夏油さんが本気で考えている訳ない。
「・・・・・・」
でも、この人は信用ならない。
警戒して睨みつけるけれど、
「っていうか、何か甘い匂いがする〜。それ何?」
と、九十九さんは気にすることなくズイズイと私に近づいてきた。
私はうろたえつつも、手にしていたどら焼きを差し出した。
「・・・どら焼きです。よかったらどうぞ」
「えっ、いいのぉ?やったぁ!いっただき〜」
と言いながら、九十九さんはヒョイヒョイと私の手元からどら焼きを取っていく。そして、
「で、ふぇふぁいふぉふぇぐってふぁふぁっふぁのふぁ(世界を巡ってわかったのは)、ふゅほふふぁひふぉんふぉふひゅうふぉふぉのふぁんふぁよ(呪力は日本特有のものだったんだよ)」
と口いっぱいに頬張りながら、世界を巡って見てきたもの知り得たものについて話してくれた(ほとんど何言ってるかわからないけれど)。
九十九さんの目的は、呪霊の生まれない世界を作ること。
悪い人じゃないのかもしれない。
だけど、その手段をどう考えているのか。
警戒はまだ解けなかった。