第34話 玉折
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その夏は忙しかった。
「領域を試そうと思ったんだよ」
食堂で久しぶりに皆んな揃ってご飯を食べている時、五条さんが言った。
「なのに、展開する前に呪霊のヤツがへばっちまってさ。特級仮想怨霊だから少しはホネのあるヤツだと思ってたのに。こうなると、特級呪霊相手じゃねぇとダメだな」
そう話しながらご飯を頬張る。
「どっかいねぇかなぁ、特級」
私達は皆、その話を聞いて呆気に取られ黙り込んだ。
「特級仮想怨霊相手に腕試しですか!すごすぎて言葉が出ませんね!」
と、灰原君だけが目をキラキラさせて反応する。
その夏は忙しかった。
昨年災害が頻発した影響なのか、各地に沢山の呪霊が発生した。
五条さんはひとり各地を飛び回り、呪霊を祓っている。
しかし疲労するどころか、任務をこなす度に新たな力を身につけ生き生きとしている。
今が楽しくて仕方がない、といった感じだ。
それは、調子に乗り過ぎているとも言える態度だった。
このままでは危ういなと、この場にいる本人以外の誰もが感じ取っていた。
こんな時、五条さんを窘めるのは夏油さんなのだけれど。
「・・・・・・」
夏油さんはずっと黙ったままゆっくりと箸を口元に運んでいるだけだった。
「・・・特級呪霊なんて物騒なこと言わないで」
私は言った。
「それに無茶したらダメだからね。敵わないって思ったら引くことも大事だからね」
「大丈夫だって」
だけど、五条さんは聞く耳を持たない。
「俺最強だから」
五条さんがそう言うと、
「・・・・・・」
夏油さんは席を立ちトレイを下げると、そのまま食堂を後にした。
それから少し後に私達も食事を終えて、それぞれ食堂を後にした。
「悟君」
部屋に戻ろうとする五条さんに声をかける。
すると五条さんは立ち止まり、こちらを振り返った。
「何だよ」
「明日も任務なんでしょう」
「あー、うん。でも土産は期待すんなよ」
「お土産なんてどうでもいいから」
私は言った。
「だからさっき言ったこと、ちゃんとわかって」
すると五条さんは目を瞬かせた後、
「つか、俺より傑の心配しろよ」
と言った。
「え・・・」
「アイツ、また痩せたんじゃない?ちゃんと食ってんの?ソーメンばっか食ってんじゃねぇの?」
「心配ならさっき本人に訊けばよかったのに」
「野郎に心配されてもうれしくないだろ」
「もう・・・」
でも、確かに心配だ。
現に夏油さんはさっき食堂でもほとんど食べ残していた。
春からまた更に痩せた気がする。
「何か和菓子作ってやれば?甘くてハイカロリーなの」
と五条さんに言われて、私は我に返った。
「ハイカロリーって言われても・・・」
「和菓子屋の娘だろ。作ってやれよ」
そう言って、五条さんは身を翻して歩き出した。
そんな五条さんの背中に声をかける。
「気をつけてね!」
すると五条さんは後ろ姿のままヒラヒラと手を振るだけだった。
翌朝。
五条さんと夏油さんはそれぞれ任務先に向かった。
私はその間、五条さんに言われたように夏油さんに食べてもらうため、あんバターどら焼きを作った。
(あんことバターのギルティな組み合わせ!)
夕方。
頃合いを見て夏油さんの部屋のドアをノックする。
しかし、何の反応もない。
(まだ帰ってきてないのかな?)
いったん引き返そうと廊下を歩いていると、向かい側から灰原君がやって来た。
「鶴來さん!」
灰原君は私に気づくと目の前まで駆けつけてきた。
「どうしたんですか?」
私が男子部屋のフロアにいるのでそう尋ねたのだろう。
その言葉に私は頷く。
「うん。傑君を訪ねたんだけど部屋にいなくて」
「夏油さんなら自販機コーナーにいましたよ。今は女性の方と話されています」
「女性?」
一体誰だろうと目を瞬かせる私に、灰原君は話を続けた。
「自分は初めて会う人でした。背が高くて髪の長い女の人です」
「そう・・・」
「でも、夏油さんも初対面みたいでした。女の人の方は夏油さんを知っているようでしたけど」
「領域を試そうと思ったんだよ」
食堂で久しぶりに皆んな揃ってご飯を食べている時、五条さんが言った。
「なのに、展開する前に呪霊のヤツがへばっちまってさ。特級仮想怨霊だから少しはホネのあるヤツだと思ってたのに。こうなると、特級呪霊相手じゃねぇとダメだな」
そう話しながらご飯を頬張る。
「どっかいねぇかなぁ、特級」
私達は皆、その話を聞いて呆気に取られ黙り込んだ。
「特級仮想怨霊相手に腕試しですか!すごすぎて言葉が出ませんね!」
と、灰原君だけが目をキラキラさせて反応する。
その夏は忙しかった。
昨年災害が頻発した影響なのか、各地に沢山の呪霊が発生した。
五条さんはひとり各地を飛び回り、呪霊を祓っている。
しかし疲労するどころか、任務をこなす度に新たな力を身につけ生き生きとしている。
今が楽しくて仕方がない、といった感じだ。
それは、調子に乗り過ぎているとも言える態度だった。
このままでは危ういなと、この場にいる本人以外の誰もが感じ取っていた。
こんな時、五条さんを窘めるのは夏油さんなのだけれど。
「・・・・・・」
夏油さんはずっと黙ったままゆっくりと箸を口元に運んでいるだけだった。
「・・・特級呪霊なんて物騒なこと言わないで」
私は言った。
「それに無茶したらダメだからね。敵わないって思ったら引くことも大事だからね」
「大丈夫だって」
だけど、五条さんは聞く耳を持たない。
「俺最強だから」
五条さんがそう言うと、
「・・・・・・」
夏油さんは席を立ちトレイを下げると、そのまま食堂を後にした。
それから少し後に私達も食事を終えて、それぞれ食堂を後にした。
「悟君」
部屋に戻ろうとする五条さんに声をかける。
すると五条さんは立ち止まり、こちらを振り返った。
「何だよ」
「明日も任務なんでしょう」
「あー、うん。でも土産は期待すんなよ」
「お土産なんてどうでもいいから」
私は言った。
「だからさっき言ったこと、ちゃんとわかって」
すると五条さんは目を瞬かせた後、
「つか、俺より傑の心配しろよ」
と言った。
「え・・・」
「アイツ、また痩せたんじゃない?ちゃんと食ってんの?ソーメンばっか食ってんじゃねぇの?」
「心配ならさっき本人に訊けばよかったのに」
「野郎に心配されてもうれしくないだろ」
「もう・・・」
でも、確かに心配だ。
現に夏油さんはさっき食堂でもほとんど食べ残していた。
春からまた更に痩せた気がする。
「何か和菓子作ってやれば?甘くてハイカロリーなの」
と五条さんに言われて、私は我に返った。
「ハイカロリーって言われても・・・」
「和菓子屋の娘だろ。作ってやれよ」
そう言って、五条さんは身を翻して歩き出した。
そんな五条さんの背中に声をかける。
「気をつけてね!」
すると五条さんは後ろ姿のままヒラヒラと手を振るだけだった。
翌朝。
五条さんと夏油さんはそれぞれ任務先に向かった。
私はその間、五条さんに言われたように夏油さんに食べてもらうため、あんバターどら焼きを作った。
(あんことバターのギルティな組み合わせ!)
夕方。
頃合いを見て夏油さんの部屋のドアをノックする。
しかし、何の反応もない。
(まだ帰ってきてないのかな?)
いったん引き返そうと廊下を歩いていると、向かい側から灰原君がやって来た。
「鶴來さん!」
灰原君は私に気づくと目の前まで駆けつけてきた。
「どうしたんですか?」
私が男子部屋のフロアにいるのでそう尋ねたのだろう。
その言葉に私は頷く。
「うん。傑君を訪ねたんだけど部屋にいなくて」
「夏油さんなら自販機コーナーにいましたよ。今は女性の方と話されています」
「女性?」
一体誰だろうと目を瞬かせる私に、灰原君は話を続けた。
「自分は初めて会う人でした。背が高くて髪の長い女の人です」
「そう・・・」
「でも、夏油さんも初対面みたいでした。女の人の方は夏油さんを知っているようでしたけど」
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