第33話 青が散る
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目を覚ましたジュリエットは、自分の傍で息絶えているロミオの手に握られた空瓶に気づく。
「毒がこの人の早すぎる死を招いたのね。ああ、意地悪、すっかり飲み干して、一滴も残してくれなかったの?あとが追えないわ」
そして、ロミオの顔に顔を近づける。
「唇にキスを。まだここに少しついているかもしれない」
口づけするふりをする。
「これで死ねるかしら、あの世の妙薬で。あなたの唇、まだこんなに温かい」
そう、唇は暖かかった。
動揺する気持ちを押し殺しながら、私は芝居を続けた。
「ああ、嬉しい、短剣が。ここがお前の鞘」
ロミオが持つ短剣を引き出し、自分の胸に刺す。
「ここで錆びて、私を死なせて」
そして、ジュリエットはロミオの身体に倒れかかる。
抱き合うようにして死を迎えた二人だけを照明が照らしたまま、静かにゆっくりと幕は降り始めた。
完全に幕が下がりきると、
「お疲れ」
夏油さんが身体を起こして、私に笑いかけた。
そして立ち上がり、私に手を差し伸べる。
「・・・・・・」
私は戸惑いながらも、その手を取った。
すると、夏油さんは私を引っ張って立たせてくれた。
「・・・あ、ありがとう」
「すごいよ、和紗。台詞、完ぺきだったね」
「うん・・・」
「私は一ヶ所台詞噛んでしまったよ」
「そうなの?気づかなかった・・・」
なんでもないフリをしているけれど、まだ動揺は続いていた。
無理矢理気持ちを切り替えようとしていると、
「いやぁ〜、お疲れお疲れ」
舞台袖から五条さん達が出てきた。
「はぁ、やっと終わったー」
と、硝子さん。
「夏油さん、鶴來さん、素晴らしかったです!」
と、感動の面持ちで灰原君が言った。
「最期のシーンには涙が出ました!」
「熱演でしたね」
と、七海さんも言う。
「練習の時はひどい棒演技でどうなることかと思いましたが。鶴來さんは本番に強いタイプなんですね」
「ハハ・・・。いやぁ〜・・・」
と苦笑いしていると、再び幕が上がり始めた。
「カーテンコールだ」
夏油さんが言った。
「一列に並ぼう。観客に一礼するんだ」
幕が上がると、上演中は暗くてわからなかったけれど、客席には沢山の観客がいた。
パチパチパチパチ・・・
拍手の音が舞台にいる私達に向けて降ってくる。
こんな称賛を受けるとは思わず、戸惑いながらも一礼しようとした時だった。
「・・・傑君?」
夏油さんの異変に気づいた。
身体を強張ったように立ち尽くして、客席の方を見ている。
顔色が真っ青になっていて、呼吸が乱れている。
「傑?」
五条さんも夏油さんの異変に気づいて、軽く肩を揺らした。
「おい、大丈夫か?」
すると夏油さんは我に返り、五条さんの方を見返した。
それでも尚、心配そうに五条さんは尋ねた。
「大丈夫かよ。顔色悪いぞ」
「・・・大丈夫」
夏油さんは微笑んで言った。
「客席の照明が眩しくて、目が眩んだだけさ」
そして一歩前に出て、客席に向かって一礼した。
それに倣って、私達も一礼をする。
カーテンコールも終えて、東京校の演目『ロミオとジュリエット』は終演した。
その後は、京都校の演目『金色夜叉』が上演された(ちなみに貫一役は直哉さん)。
そうして迎えた結果発表の時。
「勝者、東京校!」
夜蛾さんが言った。
「よって、本年度の姉妹校交流会は東京校の優勝とする!」
その言葉にワッと沸き立った。
「あれ?」
・・・のは私と灰原君だけで、他の皆はいたってクールだ。
「みんな、もっと喜ぼうよ~」
「そうですよ!勝利を祝うスクラムを組みましょう!」
と私と灰原君が言っても、
「だって優勝したところで景品とかもらえるわけじゃねぇしなぁ。ハーゲンダッツ一年分とかくれたらいいのに」
「しかも、勝っちゃったから来年の交流会も東京だし」
「どうせなら来年は京都に行きたかったです」
と、五条さん・硝子さん・七海さんが口々に不満げに零す。
「毒がこの人の早すぎる死を招いたのね。ああ、意地悪、すっかり飲み干して、一滴も残してくれなかったの?あとが追えないわ」
そして、ロミオの顔に顔を近づける。
「唇にキスを。まだここに少しついているかもしれない」
口づけするふりをする。
「これで死ねるかしら、あの世の妙薬で。あなたの唇、まだこんなに温かい」
そう、唇は暖かかった。
動揺する気持ちを押し殺しながら、私は芝居を続けた。
「ああ、嬉しい、短剣が。ここがお前の鞘」
ロミオが持つ短剣を引き出し、自分の胸に刺す。
「ここで錆びて、私を死なせて」
そして、ジュリエットはロミオの身体に倒れかかる。
抱き合うようにして死を迎えた二人だけを照明が照らしたまま、静かにゆっくりと幕は降り始めた。
完全に幕が下がりきると、
「お疲れ」
夏油さんが身体を起こして、私に笑いかけた。
そして立ち上がり、私に手を差し伸べる。
「・・・・・・」
私は戸惑いながらも、その手を取った。
すると、夏油さんは私を引っ張って立たせてくれた。
「・・・あ、ありがとう」
「すごいよ、和紗。台詞、完ぺきだったね」
「うん・・・」
「私は一ヶ所台詞噛んでしまったよ」
「そうなの?気づかなかった・・・」
なんでもないフリをしているけれど、まだ動揺は続いていた。
無理矢理気持ちを切り替えようとしていると、
「いやぁ〜、お疲れお疲れ」
舞台袖から五条さん達が出てきた。
「はぁ、やっと終わったー」
と、硝子さん。
「夏油さん、鶴來さん、素晴らしかったです!」
と、感動の面持ちで灰原君が言った。
「最期のシーンには涙が出ました!」
「熱演でしたね」
と、七海さんも言う。
「練習の時はひどい棒演技でどうなることかと思いましたが。鶴來さんは本番に強いタイプなんですね」
「ハハ・・・。いやぁ〜・・・」
と苦笑いしていると、再び幕が上がり始めた。
「カーテンコールだ」
夏油さんが言った。
「一列に並ぼう。観客に一礼するんだ」
幕が上がると、上演中は暗くてわからなかったけれど、客席には沢山の観客がいた。
パチパチパチパチ・・・
拍手の音が舞台にいる私達に向けて降ってくる。
こんな称賛を受けるとは思わず、戸惑いながらも一礼しようとした時だった。
「・・・傑君?」
夏油さんの異変に気づいた。
身体を強張ったように立ち尽くして、客席の方を見ている。
顔色が真っ青になっていて、呼吸が乱れている。
「傑?」
五条さんも夏油さんの異変に気づいて、軽く肩を揺らした。
「おい、大丈夫か?」
すると夏油さんは我に返り、五条さんの方を見返した。
それでも尚、心配そうに五条さんは尋ねた。
「大丈夫かよ。顔色悪いぞ」
「・・・大丈夫」
夏油さんは微笑んで言った。
「客席の照明が眩しくて、目が眩んだだけさ」
そして一歩前に出て、客席に向かって一礼した。
それに倣って、私達も一礼をする。
カーテンコールも終えて、東京校の演目『ロミオとジュリエット』は終演した。
その後は、京都校の演目『金色夜叉』が上演された(ちなみに貫一役は直哉さん)。
そうして迎えた結果発表の時。
「勝者、東京校!」
夜蛾さんが言った。
「よって、本年度の姉妹校交流会は東京校の優勝とする!」
その言葉にワッと沸き立った。
「あれ?」
・・・のは私と灰原君だけで、他の皆はいたってクールだ。
「みんな、もっと喜ぼうよ~」
「そうですよ!勝利を祝うスクラムを組みましょう!」
と私と灰原君が言っても、
「だって優勝したところで景品とかもらえるわけじゃねぇしなぁ。ハーゲンダッツ一年分とかくれたらいいのに」
「しかも、勝っちゃったから来年の交流会も東京だし」
「どうせなら来年は京都に行きたかったです」
と、五条さん・硝子さん・七海さんが口々に不満げに零す。