第33話 青が散る
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そうして男子部屋のフロアである2階の廊下を歩いていると、
「「あ」」
五条さんとバッタリ出くわした。
「・・・・・・」
気まずくて、思わず目をそらしてしまう。
すると、意外にも五条さんの方から声を掛けてきた。
「どうしたんだよ」
「・・・・・・」
こうして声を掛けられるのは久しぶりのことで、私は少しホッとしてしまった。
「・・・傑君の部屋に行こうと思って」
と答えると、
「・・・ふぅーん。今度は傑にのりかえたってワケ」
と五条さんは言った。
「・・・は?」
一瞬どういう意味か分からず呆然としていたら、五条さんはハッと鼻で笑ってこう言った。
「べっつにいいんじゃね?心変わりしたって。別に俺はオマエのこと軽蔑したりしねーよ」
「・・・・・・」
「でも、夜蛾せんせーにみつかんないようにしろよ。あの人、不純異性交遊ってのに厳しーからさ」
「・・・・・・」
「じゃあな~」
そして、私の横を通り過ぎていく。
「・・・・・・」
私はスリッパを片方脱いで手に持ち、クルッと後ろを振り返った。
そして、
「違うわよ、馬鹿っ!!しかも今度はってどういう意味よーっ!」
と、五条さんに向けて思い切りスリッパを投げつけた。
スリッパは剛速で五条さんの後頭部に直撃した。
「あ」
自分で投げつけておきながら、まさか本当に当たるとは思わず私は戸惑う。
「・・・オマエなぁ~~~」
五条さんが怒り心頭で振り向く。
「何すんだよ!?」
「ご、ごめん。てっきり無限で弾き飛ばされると思ってたから」
「しょっちゅう術式出しっぱにしてるわけじゃねーよ。まだ無限バリアのオートマ化は成功してねーんだ」
「オートマ化・・・?」
首を傾げる私に、五条さんは説明を始めた。
「術式対象の自動選択化だよ。ま、正確に言うと術式対象は俺だけど」
「・・・・・・」
「呪力の強弱だけでなく、質量・速度。形状から物体の危険度を選別して、最小限のリソースで無下限を出しっぱに出来るようになる」
「・・・・・・」
「だけど、なかなか上手くいかねぇんだよな。もちょっとで掴めそうなんだけど」
と説明する五条さんは目をキラキラとさせている。
その時、さっき直哉さんが言ったことが少しわかった気がした。
バケモノだとは思わないけれど、私は戸惑いを感じていた。
「・・・・・・」
理子ちゃんと黒井さんが死んだあの日。
『伏黒甚爾』との闘いを経て、五条さんの中で新しい力が生まれた。
新しいオモチャを与えられた子どもの様に、五条さんは新しく手に入れたそれを楽しんでいる。
挫折感よりも、喪失感よりも、その高揚感の方がずっと彼の中では勝っていることを。
そんな彼を理解出来ず、少しこわいと思った。
そして、遠くに感じた。
そんなことを考えながら、五条さんの顔を見つめていると、
「何?」
と五条さんが訝しげに言って、私は我に返った。
「べ、別に」
そして、慌ててこう言った。
「とにかく、のりかえるとか人聞きの悪い事言わないで」
「俺は別にいいっていってるじゃん」
「よくない。私はずっと・・・!」
私はずっと・・・・。
ずっと、誰を思っているの?
今、目の前にいるこの人?
五条さんが私を見下ろす。
急に私が黙り込んだので、不思議そうに目を丸めている。
「・・・私はただ、明日の劇の練習しようと思って」
と私は目を逸らして言った。
すると五条さんは、
「へーへー。せいぜい頑張れよ。っていうか、いっそ棒読みで京都校の連中笑い殺してやれよ」
と言った。
「もう!」
と、私はもう片方のスリッパも投げつけた。
今度は無限に弾かれた。
「へへっ。じゃあな」
とイタズラな笑みを残して、五条さんは自分の部屋に入っていった。
「・・・・・・」
こわい。
理解出来ない。
それなのに、五条さんのいたずらっ子の様な笑みは変わらない。
そして、少しだけ以前のふたりに戻れたような気がして、私は安堵していた。
「「あ」」
五条さんとバッタリ出くわした。
「・・・・・・」
気まずくて、思わず目をそらしてしまう。
すると、意外にも五条さんの方から声を掛けてきた。
「どうしたんだよ」
「・・・・・・」
こうして声を掛けられるのは久しぶりのことで、私は少しホッとしてしまった。
「・・・傑君の部屋に行こうと思って」
と答えると、
「・・・ふぅーん。今度は傑にのりかえたってワケ」
と五条さんは言った。
「・・・は?」
一瞬どういう意味か分からず呆然としていたら、五条さんはハッと鼻で笑ってこう言った。
「べっつにいいんじゃね?心変わりしたって。別に俺はオマエのこと軽蔑したりしねーよ」
「・・・・・・」
「でも、夜蛾せんせーにみつかんないようにしろよ。あの人、不純異性交遊ってのに厳しーからさ」
「・・・・・・」
「じゃあな~」
そして、私の横を通り過ぎていく。
「・・・・・・」
私はスリッパを片方脱いで手に持ち、クルッと後ろを振り返った。
そして、
「違うわよ、馬鹿っ!!しかも今度はってどういう意味よーっ!」
と、五条さんに向けて思い切りスリッパを投げつけた。
スリッパは剛速で五条さんの後頭部に直撃した。
「あ」
自分で投げつけておきながら、まさか本当に当たるとは思わず私は戸惑う。
「・・・オマエなぁ~~~」
五条さんが怒り心頭で振り向く。
「何すんだよ!?」
「ご、ごめん。てっきり無限で弾き飛ばされると思ってたから」
「しょっちゅう術式出しっぱにしてるわけじゃねーよ。まだ無限バリアのオートマ化は成功してねーんだ」
「オートマ化・・・?」
首を傾げる私に、五条さんは説明を始めた。
「術式対象の自動選択化だよ。ま、正確に言うと術式対象は俺だけど」
「・・・・・・」
「呪力の強弱だけでなく、質量・速度。形状から物体の危険度を選別して、最小限のリソースで無下限を出しっぱに出来るようになる」
「・・・・・・」
「だけど、なかなか上手くいかねぇんだよな。もちょっとで掴めそうなんだけど」
と説明する五条さんは目をキラキラとさせている。
その時、さっき直哉さんが言ったことが少しわかった気がした。
バケモノだとは思わないけれど、私は戸惑いを感じていた。
「・・・・・・」
理子ちゃんと黒井さんが死んだあの日。
『伏黒甚爾』との闘いを経て、五条さんの中で新しい力が生まれた。
新しいオモチャを与えられた子どもの様に、五条さんは新しく手に入れたそれを楽しんでいる。
挫折感よりも、喪失感よりも、その高揚感の方がずっと彼の中では勝っていることを。
そんな彼を理解出来ず、少しこわいと思った。
そして、遠くに感じた。
そんなことを考えながら、五条さんの顔を見つめていると、
「何?」
と五条さんが訝しげに言って、私は我に返った。
「べ、別に」
そして、慌ててこう言った。
「とにかく、のりかえるとか人聞きの悪い事言わないで」
「俺は別にいいっていってるじゃん」
「よくない。私はずっと・・・!」
私はずっと・・・・。
ずっと、誰を思っているの?
今、目の前にいるこの人?
五条さんが私を見下ろす。
急に私が黙り込んだので、不思議そうに目を丸めている。
「・・・私はただ、明日の劇の練習しようと思って」
と私は目を逸らして言った。
すると五条さんは、
「へーへー。せいぜい頑張れよ。っていうか、いっそ棒読みで京都校の連中笑い殺してやれよ」
と言った。
「もう!」
と、私はもう片方のスリッパも投げつけた。
今度は無限に弾かれた。
「へへっ。じゃあな」
とイタズラな笑みを残して、五条さんは自分の部屋に入っていった。
「・・・・・・」
こわい。
理解出来ない。
それなのに、五条さんのいたずらっ子の様な笑みは変わらない。
そして、少しだけ以前のふたりに戻れたような気がして、私は安堵していた。