第33話 青が散る
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私がそう言い終えると、少し間があってから、
「・・・わかるよ」
と、夏油さんは聞き取れない小さな声で言った。
「・・・え?」
私はもう一度聞き返そうと視線を向けるけれど、
「こっちへ行ってみようか」
夏油さんは答えることなく先へ進んでいった。
標的となる二級呪霊はなかなか見つからず、低級の呪霊ばかりを祓いながら森の奥へ進む。
「あ」
すると途中で直哉さんと出くわした。
私達の姿を見て初めは目を丸くしていた直哉さんだったけど、すぐにあの底意地悪そうな笑みを浮かべてこう言った。
「ごくろーさん。どうや?みつかった?二級呪霊」
その足元には煙草の吸い殻が落ちている。
「いや・・・」
それを見遣りながら夏油さんが言う。
「でも、君は必死に探してるって感じじゃないみたいだけど」
「お見通しやね」
直哉さんは吸い殻を踏みつけながら言った。
「他の連中が張り切っとるからやらせてやってんねん。京都校でも東京校でもどっちでもええわ。さっさと見つけて祓ってくれへんかな」
「ずいぶんとやる気がないんだな」
「ないね。高専で優秀な成績修めようと落第点取ろうと、俺は将来の禪院家当主やし」
「その当主が落ちこぼれじゃ、一族はついて来ないんじゃないか」
「ハッ。誰が落ちこぼれやねん」
夏油さんを軽く睨んだ後、直哉さんはふと思い出しように続けた。
「まぁ、確かにウチの一族に落ちこぼれはおるなぁ。ほとんど呪力のないクソガキとかな」
その言葉に私は眉を顰める。
真希ちゃんが禪院家で蔑ろにされているという話を思い出したからだ。
「哀れよなぁ。呪術師の家系に生まれておきながら呪力がないって。生まれてきた価値ないやん」
その間にも、直哉さんは話を続けている。
「夏油君なんかは、一般人の家庭に生まれつきながら呪力も術式も持ってるってのにな。おまけに特級って。世の中つくづく不公平やで。君にじゃなく、ウチんとこのガキに術式があればよかったのに」
「・・・・・・」
「そしたら、君もあないな大変な目に遭わんでよかったのになぁ」
「何・・・?」
訝しがる夏油さんに、直哉さんは底意地悪い笑みを向けた。
「失敗したんやってね、『星漿体』護衛の任務」
その瞬間、
「・・・!」
夏油さんの表情と取り囲む空気が凍り付くのがわかった。
「直哉さん!」
咎めるように私は言った。
「別に責めてるつもりじゃないんやで。むしろ気の毒やと思って」
だけど、直哉さんは気に留めずしゃあしゃあと続けた。
「特級なんて高すぎる下駄履かされたうえ、身の丈以上の任務まで任されてな」
「・・・・・・」
「『星漿体』は失われたけど、幸い天元様に異変は起きてへんみたいやし。誰も君を責めてへんよ」
「・・・・・・」
「むしろ、ようやったと思てるよ。君が対峙した男は・・・甚爾君いうてな。禪院家の人間やったんやけど」
私と夏油さんはハッと息を飲んだ。
あの男。
私達を強襲し理子ちゃんと黒井さんを殺した、あの男。
あいつが禪院家の人間だったなんて。
「さっき呪力がないもんを落ちこぼれ言うたけど。甚爾君・・・アレは例外や。呪術界の規格から外れた存在や。もっとも俺以外の連中は甚爾君の凄さを解っとらんかったけど。甚爾君とやり合っただけでも尊敬すんで。まあ、それ言うたら」
そう言いながら、直哉さんは軽く瞼を伏せた。
「それを倒した悟君は、バケモンってことになるけどな」
その時だった。
森の木々の影から、何かがこちらに近づいて来る気配を感じた。
「!」
私達は身構えてそちらを振り向く。
するとそこには、
『キ’'ョキ''ョッ!!』
金魚に手足が生えたような姿をした大型の呪霊がいた。
「三級以下・・・では無さそうやね」
と、言葉とは裏腹に呑気な口調で直哉さんが言った。
直哉さんが言ったように、これは二級呪霊なのだろう。
警戒する私の隣で、
「・・・・・・」
夏油さんが構える。
この呪霊を取り込むつもりらしい。
しかし。
バギッッ!!
それよりも早く、直哉さんに蹴り飛ばしされて、呪霊は地面に打ち付けるように転がっていた。
「・・・わかるよ」
と、夏油さんは聞き取れない小さな声で言った。
「・・・え?」
私はもう一度聞き返そうと視線を向けるけれど、
「こっちへ行ってみようか」
夏油さんは答えることなく先へ進んでいった。
標的となる二級呪霊はなかなか見つからず、低級の呪霊ばかりを祓いながら森の奥へ進む。
「あ」
すると途中で直哉さんと出くわした。
私達の姿を見て初めは目を丸くしていた直哉さんだったけど、すぐにあの底意地悪そうな笑みを浮かべてこう言った。
「ごくろーさん。どうや?みつかった?二級呪霊」
その足元には煙草の吸い殻が落ちている。
「いや・・・」
それを見遣りながら夏油さんが言う。
「でも、君は必死に探してるって感じじゃないみたいだけど」
「お見通しやね」
直哉さんは吸い殻を踏みつけながら言った。
「他の連中が張り切っとるからやらせてやってんねん。京都校でも東京校でもどっちでもええわ。さっさと見つけて祓ってくれへんかな」
「ずいぶんとやる気がないんだな」
「ないね。高専で優秀な成績修めようと落第点取ろうと、俺は将来の禪院家当主やし」
「その当主が落ちこぼれじゃ、一族はついて来ないんじゃないか」
「ハッ。誰が落ちこぼれやねん」
夏油さんを軽く睨んだ後、直哉さんはふと思い出しように続けた。
「まぁ、確かにウチの一族に落ちこぼれはおるなぁ。ほとんど呪力のないクソガキとかな」
その言葉に私は眉を顰める。
真希ちゃんが禪院家で蔑ろにされているという話を思い出したからだ。
「哀れよなぁ。呪術師の家系に生まれておきながら呪力がないって。生まれてきた価値ないやん」
その間にも、直哉さんは話を続けている。
「夏油君なんかは、一般人の家庭に生まれつきながら呪力も術式も持ってるってのにな。おまけに特級って。世の中つくづく不公平やで。君にじゃなく、ウチんとこのガキに術式があればよかったのに」
「・・・・・・」
「そしたら、君もあないな大変な目に遭わんでよかったのになぁ」
「何・・・?」
訝しがる夏油さんに、直哉さんは底意地悪い笑みを向けた。
「失敗したんやってね、『星漿体』護衛の任務」
その瞬間、
「・・・!」
夏油さんの表情と取り囲む空気が凍り付くのがわかった。
「直哉さん!」
咎めるように私は言った。
「別に責めてるつもりじゃないんやで。むしろ気の毒やと思って」
だけど、直哉さんは気に留めずしゃあしゃあと続けた。
「特級なんて高すぎる下駄履かされたうえ、身の丈以上の任務まで任されてな」
「・・・・・・」
「『星漿体』は失われたけど、幸い天元様に異変は起きてへんみたいやし。誰も君を責めてへんよ」
「・・・・・・」
「むしろ、ようやったと思てるよ。君が対峙した男は・・・甚爾君いうてな。禪院家の人間やったんやけど」
私と夏油さんはハッと息を飲んだ。
あの男。
私達を強襲し理子ちゃんと黒井さんを殺した、あの男。
あいつが禪院家の人間だったなんて。
「さっき呪力がないもんを落ちこぼれ言うたけど。甚爾君・・・アレは例外や。呪術界の規格から外れた存在や。もっとも俺以外の連中は甚爾君の凄さを解っとらんかったけど。甚爾君とやり合っただけでも尊敬すんで。まあ、それ言うたら」
そう言いながら、直哉さんは軽く瞼を伏せた。
「それを倒した悟君は、バケモンってことになるけどな」
その時だった。
森の木々の影から、何かがこちらに近づいて来る気配を感じた。
「!」
私達は身構えてそちらを振り向く。
するとそこには、
『キ’'ョキ''ョッ!!』
金魚に手足が生えたような姿をした大型の呪霊がいた。
「三級以下・・・では無さそうやね」
と、言葉とは裏腹に呑気な口調で直哉さんが言った。
直哉さんが言ったように、これは二級呪霊なのだろう。
警戒する私の隣で、
「・・・・・・」
夏油さんが構える。
この呪霊を取り込むつもりらしい。
しかし。
バギッッ!!
それよりも早く、直哉さんに蹴り飛ばしされて、呪霊は地面に打ち付けるように転がっていた。