第32話 懐玉ー弐ー
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「・・・・ッ」
私はキリッと唇を噛み締めて、その場から走り去った。
それからほどなくして、
ドゴォッ
激しい破壊音と震動が響いた。
(どうして今になって懸賞金狙いの呪詛師が)
いや、でもあれを呪詛師と呼んでもいいのだろうか。
だって、あの男には呪力を感じ取れなかった。
そして、そのこと以上に、あの顔をどこかで見たことがあるような気がした。
「和紗」
名前を呼ばれて我に返る。
ふと顔を上げると、建物の陰に潜むようにして夏油さん達がいた。
「悟は」
夏油さんの問いかけに私は俯きながら、
「まだ・・・」
とだけ言った。
すると夏油さんは思案するように一瞬だけ目を伏せた後、
「このまま直接『薨星宮』へ行く」
と言った。
「薨星宮・・・」
と理子ちゃんか呟くと、夏油さんはコクリと頷いた。
「高専最下層の参道をさらに降りたところにある本殿、そこに天元様がいる。本来、その入口は日々配置を変え侵入者を拒み見つけ出すのは困難だが、理子ちゃんがいるから天元様が導いてくれるはずだ」
「・・・・・・」
「本殿まで辿りつければ、理子ちゃんは天元様が守ってくれる」
その言葉通り、理子ちゃんを導く様に薨星宮への入り口はすぐに見つかり、そこから昇降機で最下層へ向かった。
ゴウン・・・ゴウン・・・
最下層に辿り着き、昇降機から降りる。
「理子様」
そこで黒井さんは立ち止まり、深々と頭を下げて言った。
「私はここまでです」
その続きは、言葉にならない。
そんな黒井さんを、理子ちゃんは抱き締めた。
「黒井、大好きだよ」
「・・・・・・」
「ずっと・・・!!これからもずっと!!」
「私も・・・!!大好きです・・・」
少し離れた場所で、私と夏油さんは二人を挟む様に立ち見守っていた。
「・・・・・」
私の目からは止めどなく涙が溢れ、夏油さんは優しさと哀れみが内混ぜになった眼差しで二人の別れを見届けていた。
それから、夏油さんは理子ちゃんを連れて参道を進み本殿へと向かった。
私と黒井さんは、そのままその場で待機していた。
「・・・これから黒井さんはどうされるんですか」
「え・・・」
私の問いかけに、黒井さんは一瞬戸惑いを見せた後、
「就職活動します」
と冗談めかしながらも、現実的なことを話し始めた。
「私の世話係としての役目は終わりました。明日からは、一般人の生活です」
「・・・・・・」
「そして、理子様の分まで色んな場所に行って色んな物を見たいと思います」
「・・・・・・」
「そして可能なら、それをここに来て報告したいです」
「・・・うん」
それを聞いて、私は少し安堵した。
黒井さんは前を向いて歩き出そうとしている。
私は微笑んで言った。
「きっと、理子ちゃんも喜び・・・」
ドサッ・・・
言葉の途中で、黒井さんが地面に倒れ込んだ。
突然のことに、私は驚き戸惑う。
「・・・黒井さん?」
と呼びかけた時、
バスッ
背後から背中を斬られて、血を吹き出しながら、私も地面にうつ伏せに倒れ込んだ。
「あ・・・ぁ」
倒れながらも私は顔を上げた。
すると、先程奇襲を仕掛けて来たあの男が私を見下ろしていた。
「オマエ等のことは、生かすつもりも殺すつもりもないけどな」
私達を斬った刀の峰でポンポンと肩を叩きながら男は言った。
「賭けみたいなもんだ。運が良けりゃ、生き延びる」
そして、傷痕のある口元をニッと吊り上げて笑った。
剣のある目元と、釣り上がった細い眉。
「・・・伏黒君?」
そうだ。この男、伏黒君に似ているんだ。
すると、男は驚いた様に目を丸めた。
「どうして俺の名を知ってる」
それを聞いて、私も驚く。
(伏黒君の血縁者・・・?)
だけど、この男の問いかけに私は答えない。
朦朧とする意識をどうにか留め、反転術式に集中していた。
『治療の優先度は、まず和紗』
夏油さんにそう言われたことを思い出したから。
私はキリッと唇を噛み締めて、その場から走り去った。
それからほどなくして、
ドゴォッ
激しい破壊音と震動が響いた。
(どうして今になって懸賞金狙いの呪詛師が)
いや、でもあれを呪詛師と呼んでもいいのだろうか。
だって、あの男には呪力を感じ取れなかった。
そして、そのこと以上に、あの顔をどこかで見たことがあるような気がした。
「和紗」
名前を呼ばれて我に返る。
ふと顔を上げると、建物の陰に潜むようにして夏油さん達がいた。
「悟は」
夏油さんの問いかけに私は俯きながら、
「まだ・・・」
とだけ言った。
すると夏油さんは思案するように一瞬だけ目を伏せた後、
「このまま直接『薨星宮』へ行く」
と言った。
「薨星宮・・・」
と理子ちゃんか呟くと、夏油さんはコクリと頷いた。
「高専最下層の参道をさらに降りたところにある本殿、そこに天元様がいる。本来、その入口は日々配置を変え侵入者を拒み見つけ出すのは困難だが、理子ちゃんがいるから天元様が導いてくれるはずだ」
「・・・・・・」
「本殿まで辿りつければ、理子ちゃんは天元様が守ってくれる」
その言葉通り、理子ちゃんを導く様に薨星宮への入り口はすぐに見つかり、そこから昇降機で最下層へ向かった。
ゴウン・・・ゴウン・・・
最下層に辿り着き、昇降機から降りる。
「理子様」
そこで黒井さんは立ち止まり、深々と頭を下げて言った。
「私はここまでです」
その続きは、言葉にならない。
そんな黒井さんを、理子ちゃんは抱き締めた。
「黒井、大好きだよ」
「・・・・・・」
「ずっと・・・!!これからもずっと!!」
「私も・・・!!大好きです・・・」
少し離れた場所で、私と夏油さんは二人を挟む様に立ち見守っていた。
「・・・・・」
私の目からは止めどなく涙が溢れ、夏油さんは優しさと哀れみが内混ぜになった眼差しで二人の別れを見届けていた。
それから、夏油さんは理子ちゃんを連れて参道を進み本殿へと向かった。
私と黒井さんは、そのままその場で待機していた。
「・・・これから黒井さんはどうされるんですか」
「え・・・」
私の問いかけに、黒井さんは一瞬戸惑いを見せた後、
「就職活動します」
と冗談めかしながらも、現実的なことを話し始めた。
「私の世話係としての役目は終わりました。明日からは、一般人の生活です」
「・・・・・・」
「そして、理子様の分まで色んな場所に行って色んな物を見たいと思います」
「・・・・・・」
「そして可能なら、それをここに来て報告したいです」
「・・・うん」
それを聞いて、私は少し安堵した。
黒井さんは前を向いて歩き出そうとしている。
私は微笑んで言った。
「きっと、理子ちゃんも喜び・・・」
ドサッ・・・
言葉の途中で、黒井さんが地面に倒れ込んだ。
突然のことに、私は驚き戸惑う。
「・・・黒井さん?」
と呼びかけた時、
バスッ
背後から背中を斬られて、血を吹き出しながら、私も地面にうつ伏せに倒れ込んだ。
「あ・・・ぁ」
倒れながらも私は顔を上げた。
すると、先程奇襲を仕掛けて来たあの男が私を見下ろしていた。
「オマエ等のことは、生かすつもりも殺すつもりもないけどな」
私達を斬った刀の峰でポンポンと肩を叩きながら男は言った。
「賭けみたいなもんだ。運が良けりゃ、生き延びる」
そして、傷痕のある口元をニッと吊り上げて笑った。
剣のある目元と、釣り上がった細い眉。
「・・・伏黒君?」
そうだ。この男、伏黒君に似ているんだ。
すると、男は驚いた様に目を丸めた。
「どうして俺の名を知ってる」
それを聞いて、私も驚く。
(伏黒君の血縁者・・・?)
だけど、この男の問いかけに私は答えない。
朦朧とする意識をどうにか留め、反転術式に集中していた。
『治療の優先度は、まず和紗』
夏油さんにそう言われたことを思い出したから。