第32話 懐玉ー弐ー
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飛行機の中は五条さんが乗客一人一人を調べて、更に外は夏油さんの呪霊で見張り(行きもこうして来たのか・・・)、東京までのフライトは無事に終わった。
空港に迎えに来ていた補助監督の車に乗り込み、筵山麓まで着くと、補助監督に荷物運びを任せて、先に私達は筵山の鳥居が連なる参道を登って行き・・・。
「皆、お疲れ様」
ついに高専まで辿り着いた。
「高専の結界内だ」
夏油さんの言葉に、ほうっと一息吐いた後。
「これで一安心じゃな!!」
と、理子ちゃんが言った。
それに黒井さんが呼応する。
「・・・ですね」
その表情は安堵感だけではない、他の感情も滲み出ていた。
「悟、本当にお疲れ」
夏油さんが五条さんに声を掛けて、私は五条さんの方へ視線を向けた。
「・・・・・・」
五条さんは疲れ切って憮然とした表情で、
「二度とごめんだ。ガキのお守りは」
と言いながら術式を解いた。
「お?」
ガキ呼ばわりされて、理子ちゃんがムッとして声を上げた。
そんな様子にクスリとしながら、私も労いの言葉をかけようとした時だった。
トスッ
五条さんの身体を刃が貫通した。
何の前触れもなく。
忍び寄る気配もなく。
何が起きたのか、その場にいた全員が理解出来なかった。
おそらく、刺された五条さんさえも。
「・・・っ」
五条さんがゆっくりと背後を振り返る。
するとそこには、刀を突き立てる一人の男の姿があった。
「アンタ、どっかで会ったか?」
五条さんの問いかけに、男は依然として刀を突き立てたまま口を開いた。
「気にすんな、俺も苦手だ。男の名前を覚えんのは」
その刹那。
ぐんっ
五条さんの術式で男を弾き飛ばすのと同時に、夏油さんが芋虫型の呪霊を出現させ、
バグンッ
弾き飛ばされた男を丸呑みさせた。
「・・・っ」
その間、私はぴくりとも身体を動かせなかった。
得体の知れない男の不気味さと恐ろしさに。
突然起きた予想にもしていない出来事の衝撃に。
「悟!!」
夏油さんが叫んで、私は我に返った。
治療しなくては。
そして、夏油さんと共に私も五条さんの元へ駆け寄ろうとした時だった。
「問題ない」
五条さんがそれを制した。
「術式は間に合わなかったけど、内臓は避けたし、その後呪力で強化して刃をどこにも引かせなかった」
ニットのセーターに安全ピンを通したみたいなもんだよ、と五条さんは言った。
(でも・・・)
全く問題ないはずはない。
治療しようと近づこうとしたら、男を飲み込んだ呪霊の腹が内側からモゾモゾと蠢き始めた。
まだ、あの男は生きている。
それを五条さんも察したのだろう。
「天内優先。アイツの相手は俺がする。傑達は先に天元様の所へ行ってくれ」
と言った。
やや間があった後、
「油断するなよ」
夏油さんは言った。
そして、理子ちゃんと黒井さんを引き連れてこの場を離れていく。
五条さんはその様子には視線を向けることなく、
「誰に言ってんだよ」
と言いながらサングラスを外した。
私は、そんな五条さんの手を引いた。
すると、五条さんはこちらを振り向いた。
「オマエにも言ったんだけど、天内優先って」
「でも、治療を・・・」
そう言った矢先、
バスッ
男が呪霊の腹を掻っ捌いて出て来た。
呪霊の黒い血と臓物に塗れながら笑みを浮かべて、さっきとは違う一振りの刀を手にしている。
身体には奇妙な形の呪霊を巻き付けながら。
その異様な姿に、私の肩はビクッと震えた後、身体は動かなくなってしまった。
(あれが人間・・・?)
そう怯えると同時に、ある違和感に気づく。
(この人、呪力が・・・)
「邪魔だ」
五条さんが私を突き飛ばし、言った。
「さっさと行けよ」
そう言った五条さんの眼中には、あの男しか捉えていない。
それほど、これまでの『Q』や『盤星教』、懸賞金狙いの呪詛師とは、比較にならないほどの強い相手なのだと感じているのだ。
空港に迎えに来ていた補助監督の車に乗り込み、筵山麓まで着くと、補助監督に荷物運びを任せて、先に私達は筵山の鳥居が連なる参道を登って行き・・・。
「皆、お疲れ様」
ついに高専まで辿り着いた。
「高専の結界内だ」
夏油さんの言葉に、ほうっと一息吐いた後。
「これで一安心じゃな!!」
と、理子ちゃんが言った。
それに黒井さんが呼応する。
「・・・ですね」
その表情は安堵感だけではない、他の感情も滲み出ていた。
「悟、本当にお疲れ」
夏油さんが五条さんに声を掛けて、私は五条さんの方へ視線を向けた。
「・・・・・・」
五条さんは疲れ切って憮然とした表情で、
「二度とごめんだ。ガキのお守りは」
と言いながら術式を解いた。
「お?」
ガキ呼ばわりされて、理子ちゃんがムッとして声を上げた。
そんな様子にクスリとしながら、私も労いの言葉をかけようとした時だった。
トスッ
五条さんの身体を刃が貫通した。
何の前触れもなく。
忍び寄る気配もなく。
何が起きたのか、その場にいた全員が理解出来なかった。
おそらく、刺された五条さんさえも。
「・・・っ」
五条さんがゆっくりと背後を振り返る。
するとそこには、刀を突き立てる一人の男の姿があった。
「アンタ、どっかで会ったか?」
五条さんの問いかけに、男は依然として刀を突き立てたまま口を開いた。
「気にすんな、俺も苦手だ。男の名前を覚えんのは」
その刹那。
ぐんっ
五条さんの術式で男を弾き飛ばすのと同時に、夏油さんが芋虫型の呪霊を出現させ、
バグンッ
弾き飛ばされた男を丸呑みさせた。
「・・・っ」
その間、私はぴくりとも身体を動かせなかった。
得体の知れない男の不気味さと恐ろしさに。
突然起きた予想にもしていない出来事の衝撃に。
「悟!!」
夏油さんが叫んで、私は我に返った。
治療しなくては。
そして、夏油さんと共に私も五条さんの元へ駆け寄ろうとした時だった。
「問題ない」
五条さんがそれを制した。
「術式は間に合わなかったけど、内臓は避けたし、その後呪力で強化して刃をどこにも引かせなかった」
ニットのセーターに安全ピンを通したみたいなもんだよ、と五条さんは言った。
(でも・・・)
全く問題ないはずはない。
治療しようと近づこうとしたら、男を飲み込んだ呪霊の腹が内側からモゾモゾと蠢き始めた。
まだ、あの男は生きている。
それを五条さんも察したのだろう。
「天内優先。アイツの相手は俺がする。傑達は先に天元様の所へ行ってくれ」
と言った。
やや間があった後、
「油断するなよ」
夏油さんは言った。
そして、理子ちゃんと黒井さんを引き連れてこの場を離れていく。
五条さんはその様子には視線を向けることなく、
「誰に言ってんだよ」
と言いながらサングラスを外した。
私は、そんな五条さんの手を引いた。
すると、五条さんはこちらを振り向いた。
「オマエにも言ったんだけど、天内優先って」
「でも、治療を・・・」
そう言った矢先、
バスッ
男が呪霊の腹を掻っ捌いて出て来た。
呪霊の黒い血と臓物に塗れながら笑みを浮かべて、さっきとは違う一振りの刀を手にしている。
身体には奇妙な形の呪霊を巻き付けながら。
その異様な姿に、私の肩はビクッと震えた後、身体は動かなくなってしまった。
(あれが人間・・・?)
そう怯えると同時に、ある違和感に気づく。
(この人、呪力が・・・)
「邪魔だ」
五条さんが私を突き飛ばし、言った。
「さっさと行けよ」
そう言った五条さんの眼中には、あの男しか捉えていない。
それほど、これまでの『Q』や『盤星教』、懸賞金狙いの呪詛師とは、比較にならないほどの強い相手なのだと感じているのだ。