第31話 懐玉ー壱ー
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気になって、私はせっつく。
「何?気になるんだけど」
「んー・・・」
「だから何なの」
「オマエさぁ」
「私?」
すると、五条さんは真剣な眼差しでこちらを見据えて言った。
「オマエ、意外と胸デカいんだな」
そう言い終わった瞬間、私は五条さんに向かって思い切り振りかぶってクッションを投げつけた。
だけど、やはり無下限のバリアで弾かれてしまう。
私は悔しくて地団駄を踏んだ。
「もーっ!また無下限〜!」
「へへっ」
「いつもそれ出しっぱなしな、の・・・」
と言いながら、気づく。
「ひょっとして、ずっと術式解いてないの?」
「・・・・・・」
「もしかして昨日からずっと・・・?」
きっと睡眠もだ。
心配でジッと見つめると、五条さんはスッと視線を逸らして、
「こんなの屁でもねーよ」
と言った。
だけど、目元に疲労がありありと見て取れる。
「見張りなら、私代わるよ」
「非術師にやられて人質にされたヤツに任せられるかよ」
「でも・・・」
「大丈夫だって」
と五条さんは言い張って聞かない。
なので私は、
「・・・ありがとう」
そう言うしかなかった。
ううん、それだけじゃない。
「帰るのを明日にしてくれたことも。理子ちゃんのことを考えてそうしてくれたんだよね」
「・・・・・・」
「なんか感心しちゃった」
「感心しただけ?」
「え?」
「実は、惚れちゃったんじゃないの?」
「・・・・・・」
せっかく感心したって言ってるのに。
私は呆れて溜息を吐いた。
「だから、そんなこと有り得ないから」
「会いに行けない男がいるから?」
「・・・・・・」
「オマエが会いたいって思ってんのに、会いに来ない男がいるからか」
「・・・彼にだって、事情があるんだよ」
「事情、ね」
と呟いて、五条さんはひとつ大きな欠伸をした。
その様子を見て、私は肩をすくめた。
「やせ我慢して。やっぱり眠いんじゃない」
「んー・・・」
と五条さんは瞼を手で擦る。
私は改めて申し出た。
「1時間くらい眠ったら?その間くらい私でも・・・」
「だから大丈夫だって」
「・・・・・・」
「あー、でも」
「ん?」
「井上和香がここに来て、ほっぺにチューでもしてくれたらもっと頑張れんのにな〜」
「・・・・・・」
私は呆れて、立ち上がった。
「空想の井上和香にチューしてもらって頑張んなさいよ。私、そろそろ部屋に戻るから」
「へーへー。応援どうも」
「じゃ、おやすみなさい」
そうして、私はドアの方へ歩いていく。
ドアノブに手を掛けたところで、
「・・・・・・」
踵を返し、再び窓際のローチェアのところへ戻った。
「んだよ」
五条さんが驚いて私を見上げる。
「・・・・・・」
私はそんな五条さんを見下ろした後、五条さんの前にしゃがみ込んだ。
「・・・井上和香じゃないけど」
そして、五条さんの顔を覗き込んで、唇を頬に近づけた。
だけど。
ピタッ
「「!」」
唇は無下限のバリアに弾かれて、頬に届かなかった。
「あ・・・」
途端に恥ずかしくなって、私は逃げるように急いで立ち上がる、が。
「!」
五条さんに右手首を掴まれて、引き留められた。
「・・・今の」
どこか呆然とした様子で、五条さんは言った。
私は判決を待つような面持ちで続きを待つ。
「もう一回・・・」
「で、出来るわけないでしょ!」
と私は後ろを向いて、五条さんの手を振り解こうとするけれど、
「!?」
五条さんが立ち上がり、私の両肩を掴むと向き合うように身体を半転させた。
そして、キスをした。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
唇はすぐ離れて、至近距離で五条さんが私の目を覗き込むように見つめる。
蒼い瞳に、私の顔が映っている。
「〜〜〜い"ぃや"あぁあぁぁぁ〜〜〜っ!!」
夜の静寂を私の悲鳴が突き破った。
すると奥の部屋から、慌てた様子で夏油さんが飛び出して来た。
「悟、どうした?」
と言った後、私の姿を見つけて目を点にする。
「和紗?来てたのか。どうした?大丈夫か」
「・・・・・・」
「和紗?」
夏油さんが心配して呼びかけるけれど、私には答える余裕がない。
頬が熱い。胸の鼓動が早い。
すると、五条さんがすっとぼけるように言った。
「またナマコでもいたんじゃね〜の〜?」
「って、悟、また何か和紗にイタズラしたんだろ。いい加減に・・・」
会話の途中で、私は部屋を飛び出した。
「和紗?」
夏油さんが呼び止めるのも気づかずに。
(馬鹿・・・!馬鹿馬鹿馬鹿!)
走って部屋まで戻っても、頬の火照りと胸の動悸はおさまらない。
その夜は、私も眠らなかった。
つづく
「何?気になるんだけど」
「んー・・・」
「だから何なの」
「オマエさぁ」
「私?」
すると、五条さんは真剣な眼差しでこちらを見据えて言った。
「オマエ、意外と胸デカいんだな」
そう言い終わった瞬間、私は五条さんに向かって思い切り振りかぶってクッションを投げつけた。
だけど、やはり無下限のバリアで弾かれてしまう。
私は悔しくて地団駄を踏んだ。
「もーっ!また無下限〜!」
「へへっ」
「いつもそれ出しっぱなしな、の・・・」
と言いながら、気づく。
「ひょっとして、ずっと術式解いてないの?」
「・・・・・・」
「もしかして昨日からずっと・・・?」
きっと睡眠もだ。
心配でジッと見つめると、五条さんはスッと視線を逸らして、
「こんなの屁でもねーよ」
と言った。
だけど、目元に疲労がありありと見て取れる。
「見張りなら、私代わるよ」
「非術師にやられて人質にされたヤツに任せられるかよ」
「でも・・・」
「大丈夫だって」
と五条さんは言い張って聞かない。
なので私は、
「・・・ありがとう」
そう言うしかなかった。
ううん、それだけじゃない。
「帰るのを明日にしてくれたことも。理子ちゃんのことを考えてそうしてくれたんだよね」
「・・・・・・」
「なんか感心しちゃった」
「感心しただけ?」
「え?」
「実は、惚れちゃったんじゃないの?」
「・・・・・・」
せっかく感心したって言ってるのに。
私は呆れて溜息を吐いた。
「だから、そんなこと有り得ないから」
「会いに行けない男がいるから?」
「・・・・・・」
「オマエが会いたいって思ってんのに、会いに来ない男がいるからか」
「・・・彼にだって、事情があるんだよ」
「事情、ね」
と呟いて、五条さんはひとつ大きな欠伸をした。
その様子を見て、私は肩をすくめた。
「やせ我慢して。やっぱり眠いんじゃない」
「んー・・・」
と五条さんは瞼を手で擦る。
私は改めて申し出た。
「1時間くらい眠ったら?その間くらい私でも・・・」
「だから大丈夫だって」
「・・・・・・」
「あー、でも」
「ん?」
「井上和香がここに来て、ほっぺにチューでもしてくれたらもっと頑張れんのにな〜」
「・・・・・・」
私は呆れて、立ち上がった。
「空想の井上和香にチューしてもらって頑張んなさいよ。私、そろそろ部屋に戻るから」
「へーへー。応援どうも」
「じゃ、おやすみなさい」
そうして、私はドアの方へ歩いていく。
ドアノブに手を掛けたところで、
「・・・・・・」
踵を返し、再び窓際のローチェアのところへ戻った。
「んだよ」
五条さんが驚いて私を見上げる。
「・・・・・・」
私はそんな五条さんを見下ろした後、五条さんの前にしゃがみ込んだ。
「・・・井上和香じゃないけど」
そして、五条さんの顔を覗き込んで、唇を頬に近づけた。
だけど。
ピタッ
「「!」」
唇は無下限のバリアに弾かれて、頬に届かなかった。
「あ・・・」
途端に恥ずかしくなって、私は逃げるように急いで立ち上がる、が。
「!」
五条さんに右手首を掴まれて、引き留められた。
「・・・今の」
どこか呆然とした様子で、五条さんは言った。
私は判決を待つような面持ちで続きを待つ。
「もう一回・・・」
「で、出来るわけないでしょ!」
と私は後ろを向いて、五条さんの手を振り解こうとするけれど、
「!?」
五条さんが立ち上がり、私の両肩を掴むと向き合うように身体を半転させた。
そして、キスをした。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
唇はすぐ離れて、至近距離で五条さんが私の目を覗き込むように見つめる。
蒼い瞳に、私の顔が映っている。
「〜〜〜い"ぃや"あぁあぁぁぁ〜〜〜っ!!」
夜の静寂を私の悲鳴が突き破った。
すると奥の部屋から、慌てた様子で夏油さんが飛び出して来た。
「悟、どうした?」
と言った後、私の姿を見つけて目を点にする。
「和紗?来てたのか。どうした?大丈夫か」
「・・・・・・」
「和紗?」
夏油さんが心配して呼びかけるけれど、私には答える余裕がない。
頬が熱い。胸の鼓動が早い。
すると、五条さんがすっとぼけるように言った。
「またナマコでもいたんじゃね〜の〜?」
「って、悟、また何か和紗にイタズラしたんだろ。いい加減に・・・」
会話の途中で、私は部屋を飛び出した。
「和紗?」
夏油さんが呼び止めるのも気づかずに。
(馬鹿・・・!馬鹿馬鹿馬鹿!)
走って部屋まで戻っても、頬の火照りと胸の動悸はおさまらない。
その夜は、私も眠らなかった。
つづく
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