第31話 懐玉ー壱ー
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それから海水浴を切り上げて、次にマングローブカヤックをした。
腹ごしらえにソーキそばを食べた後、いくつか観光地を巡り、最後は美ら海水族館に向かった。
大きな水槽の中を、色とりどりの魚たちがと泳ぐ。
その魚達の群れの中をかき分けるように、二匹のジンベエザメが悠々と泳いでいく。
「・・・・・・」
理子ちゃんは、ずっとジンベエザメの水槽の前から離れようとしない。
そんな彼女から少し距離を開けて、私達はそれぞれの場所で見守っていた。
旅は確実に終わりに近づいている。
(どうにかならないのかな)
ふと、私は考えた。
(同化をしなくても、天元の進化の過程の暴走を抑える方法は他にないのかな)
確かに同化をしても、魂は意志は生き続けるのかもしれない。
だけど、旅は終わってしまうのだ。
色んな物を見ることも、色んな事を経験することも、色んな人に会うことも、色んな場所に行くことも、もう出来ない。
(そんなのって・・・)
どうしようもないことはわかってる。
だけど、沖縄での時間での理子ちゃんの表情を見ていたら、どうしても抗いたい気持ちになるのだ。
だけど、私は無力だった。
力も術も持ちえていない。
「・・・・・・」
俯いていたら、五条さんがツツーッとこちらに歩み寄ってきた。
どうせ、夏油さんに謝って来いと言われてきたのだろう。
私は顔を合わせることなく言った。
「何」
「えーっと、その、なんだ、さっきは悪かったな」
「知らない」
「いや、ほんと、ゴメンナサイ」
「・・・そんなことどうでもいいよ」
人が感傷的になっている時に、何を今更、この人は。
本当はまだ腹が立っているけれど、もうどうだっていい。
あのヌルッとした不愉快な感触でも、自分自身で感じられることは、とても尊いことなんだ。
「・・・綺麗だね」
私は水槽とその前にいる理子ちゃんの姿を見て言った。
すると、五条さんも同じ方向に目を遣って、
「そうだな」
と頷いた。
「うぅ〜〜っ。ヒリヒリするのじゃ〜〜っ」
宿泊するホテルで夕食と入浴屋を済ませて、男子と女子、それぞれの部屋に分かれた。
お風呂から上がると、理子ちゃんが日焼けして赤くなった襟足を黒井さんに見せている。
「あらあら。ここだけ日焼け止めを塗り忘れていたんですかね」
「痛くて痒いのじゃ〜」
「軟膏を塗っておきましょう」
「それで治るのか?」
「マシにはなるでしょう。大丈夫、2、3日も経てば治る・・・」
と言いかけて、黒井さんは言葉を飲み込んだ。
だけど、
「ふふ、はははっ!」
突然、理子ちゃんが笑い出した。
「妾と天元様が同化したら、天元様も日焼けするのかのぉ?」
すると黒井さんは、
「・・・そうだとしたら、面白いですね」
と、泣きそうな顔で笑った。
それから、いつも通りに二人は和気藹々と話を続けた。
「・・・・・・」
二人で積もる話があるだろう。
私はそっと部屋を出た。
部屋を出て自販機でジュースを3人分買って、五条さんと夏油さんの部屋に向かった。
(もしかしたら、もう寝てるかな?)
遠慮がちに小さくドアをノックする。
やや間があってから、
「・・・どうしたんだよ」
ドアが開いて、五条さんが顔を覗かせた。
なんだか目がドンヨリしている。
「あ、あの」
私は躊躇しながら言った。
「部屋におじゃましてもいい?理子ちゃんと黒井さん、しばらく二人きりにしてあげたくて」
「あぁ」
すると五条さんはドアを大きく開いて、私を招き入れてくれた。
「入れよ。でも、傑もう寝てるから静かにな」
「ありがとう。ごめんね、急に」
「別に」
そう言って、五条さんは窓際のローチェアに座った。
そして私はその向かいに座り、さっき買ったジュースを間のローテーブルに置いた。
「好きなの選んでね」
「んー・・・」
と頷くものの、五条さんは足を組み頬杖をついて深刻な顔をして選ぼうとしない。
「どうしたの、深刻な顔して」
「んー・・・」
「何なの」
「以前からなんとなくわかってはいたんだけどさー。俺は今日、確信したことがある」
「・・・何を?」
「・・・・・・」
五条さんは勿体つけるように黙り込んでしまった。
腹ごしらえにソーキそばを食べた後、いくつか観光地を巡り、最後は美ら海水族館に向かった。
大きな水槽の中を、色とりどりの魚たちがと泳ぐ。
その魚達の群れの中をかき分けるように、二匹のジンベエザメが悠々と泳いでいく。
「・・・・・・」
理子ちゃんは、ずっとジンベエザメの水槽の前から離れようとしない。
そんな彼女から少し距離を開けて、私達はそれぞれの場所で見守っていた。
旅は確実に終わりに近づいている。
(どうにかならないのかな)
ふと、私は考えた。
(同化をしなくても、天元の進化の過程の暴走を抑える方法は他にないのかな)
確かに同化をしても、魂は意志は生き続けるのかもしれない。
だけど、旅は終わってしまうのだ。
色んな物を見ることも、色んな事を経験することも、色んな人に会うことも、色んな場所に行くことも、もう出来ない。
(そんなのって・・・)
どうしようもないことはわかってる。
だけど、沖縄での時間での理子ちゃんの表情を見ていたら、どうしても抗いたい気持ちになるのだ。
だけど、私は無力だった。
力も術も持ちえていない。
「・・・・・・」
俯いていたら、五条さんがツツーッとこちらに歩み寄ってきた。
どうせ、夏油さんに謝って来いと言われてきたのだろう。
私は顔を合わせることなく言った。
「何」
「えーっと、その、なんだ、さっきは悪かったな」
「知らない」
「いや、ほんと、ゴメンナサイ」
「・・・そんなことどうでもいいよ」
人が感傷的になっている時に、何を今更、この人は。
本当はまだ腹が立っているけれど、もうどうだっていい。
あのヌルッとした不愉快な感触でも、自分自身で感じられることは、とても尊いことなんだ。
「・・・綺麗だね」
私は水槽とその前にいる理子ちゃんの姿を見て言った。
すると、五条さんも同じ方向に目を遣って、
「そうだな」
と頷いた。
「うぅ〜〜っ。ヒリヒリするのじゃ〜〜っ」
宿泊するホテルで夕食と入浴屋を済ませて、男子と女子、それぞれの部屋に分かれた。
お風呂から上がると、理子ちゃんが日焼けして赤くなった襟足を黒井さんに見せている。
「あらあら。ここだけ日焼け止めを塗り忘れていたんですかね」
「痛くて痒いのじゃ〜」
「軟膏を塗っておきましょう」
「それで治るのか?」
「マシにはなるでしょう。大丈夫、2、3日も経てば治る・・・」
と言いかけて、黒井さんは言葉を飲み込んだ。
だけど、
「ふふ、はははっ!」
突然、理子ちゃんが笑い出した。
「妾と天元様が同化したら、天元様も日焼けするのかのぉ?」
すると黒井さんは、
「・・・そうだとしたら、面白いですね」
と、泣きそうな顔で笑った。
それから、いつも通りに二人は和気藹々と話を続けた。
「・・・・・・」
二人で積もる話があるだろう。
私はそっと部屋を出た。
部屋を出て自販機でジュースを3人分買って、五条さんと夏油さんの部屋に向かった。
(もしかしたら、もう寝てるかな?)
遠慮がちに小さくドアをノックする。
やや間があってから、
「・・・どうしたんだよ」
ドアが開いて、五条さんが顔を覗かせた。
なんだか目がドンヨリしている。
「あ、あの」
私は躊躇しながら言った。
「部屋におじゃましてもいい?理子ちゃんと黒井さん、しばらく二人きりにしてあげたくて」
「あぁ」
すると五条さんはドアを大きく開いて、私を招き入れてくれた。
「入れよ。でも、傑もう寝てるから静かにな」
「ありがとう。ごめんね、急に」
「別に」
そう言って、五条さんは窓際のローチェアに座った。
そして私はその向かいに座り、さっき買ったジュースを間のローテーブルに置いた。
「好きなの選んでね」
「んー・・・」
と頷くものの、五条さんは足を組み頬杖をついて深刻な顔をして選ぼうとしない。
「どうしたの、深刻な顔して」
「んー・・・」
「何なの」
「以前からなんとなくわかってはいたんだけどさー。俺は今日、確信したことがある」
「・・・何を?」
「・・・・・・」
五条さんは勿体つけるように黙り込んでしまった。