第31話 懐玉ー壱ー
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『星漿体』としてしか見えていなかったのが、ひとりの普通の女の子としての理子ちゃんの実像が窺い知れて、少し感傷的な雰囲気になっていたところでにわかに緊張感が走った。
夏油さんが監視に出していた呪霊が2体祓われたからだ。
私達4人はすぐさま駆け出した。
「悟は礼拝堂。和紗と黒井さんは音楽室。私は正体不明 2人を」
夏油さんの言葉に頷き、私達は三手に分かれてそれぞれの場所に向かった。
私と黒井さんは音楽室まで駆けつける。
しかし、音楽室には誰の姿もなかった。
「ということは、礼拝堂に・・・」
と私が呟いていると、黒井さんは掃除用具のロッカーを開けて、モップブラシを取り出していた。
「黒井さん?」
私が不思議に思いながら呼びかけても、
「参りましょう」
とだけ言って、黒井さんは音楽室を駆け出して行った。
その目はすわっていて、さっきまでのどこかオロオロしていた黒井さんとは別人のようだ。
その変貌に戸惑いながらも、私は黒井さんの後に続いた。
「あれは・・・」
礼拝堂に向かう途中で、五条さんが理子ちゃんを連れて校舎の屋根を走って行くのが見えた。
おそらく、このまま高専へ向かうのだろう。
五条さんがいるなら、一安心だ。
私と黒井さんは立ち止まり、二人が遠ざかって行くのを見送った。
「黒井さん、私達も高専へ・・・」
と言いかけたところで、ハッと息を飲み込んだ。
五条さんと理子ちゃんを見送っていたのは私達だけじゃなかった。
不審な人影が、少し離れた場所にあった。
(『Q』?それとも『盤星教』の刺客?)
向こうはまだ私達に気づいていない、
私は息を潜めて、相手を窺った。
筋骨隆々の大きな体格に、頭から紙袋を被っている。
刺客じゃなくても、じゅうぶん怪しい。
そうして注意深く様子を窺っていたのに、
「盤星教の人でしょうか?」
黒井さんはモップブラシ片手に紙袋の男に近づいていく。
「『Q』の人達はもっと変な格好してますもんね」
これでもじゅうぶん変な格好だと思うけど・・・と思いつつ、
「く、黒井さん」
と慌てて止めた。
紙袋の男は小首を傾げつつ、
「素人か?殺る気なら黙って殺れよ」
と言った。
すると黒井さんは、私の制止を振り切って紙袋の男の方へ突進するように走り出した。
「遅・・・」
と紙袋の男は右拳を黒井さんに向かって降り下ろす。
が、右拳がとらえたのは黒井さんの顔面ではなく、モップブラシの柄の部分だった。
そのまま黒井さんは柄で紙袋男の腕を絡め取ると、
キンッ
モップの根元部分で急所を殴打した。
すると紙袋の男は「ゔっ」と唸り急所を押さえながら膝をついた。
「お嬢様から何も奪うな」
黒井さんは凄んで言った。
「殺すぞ」
その一連の流れを唖然として見ていたら、
「なんだ、強いじゃないですか」
背後から声がして、私は振り返った。
そこには、携帯電話片手に夏油さんが立っていた。
「傑君。正体不明 は?やっつけたの?」
「ああ、やっつけたよ。問い詰めて情報も聞きだせた」
「情報・・・?」
「理子ちゃんは?」
「五条様と一緒に学校を出ました」
と言ったのは黒井さんだ。
「じゃあ私達も向かいましょう」
夏油さんは言った。
「少し面倒なことになっています」
「面倒なこと・・・」
何があったの、と尋ねようとしたその時。
「クックッ」
膝をついてへたり込んでいた紙袋の男が急に笑い出した。
「やっぱさっきのが300万か」
そして突如、
「!!」
ドプンッと溶けるようにその姿が消えた。
「式神?」
「いや、式神とは少し違う」
黒井さんの言葉にそう返しながら、夏油さんは電話で通話を始めた。
「悟」
相手は五条さんのようだ。
「正体不明 は、『Q』でも『盤星教』でもなかった。金狙いの呪詛師だった。理子ちゃんの首には300万円の懸賞金が懸けられている」
その言葉を聞いて、私と黒井さんは息を飲んだ。
そして、黒井さんは怒り心頭とばかりにギリギリとモップブラシの柄を握りしめた。
やや間があってから、夏油さんは言葉を続けた。
「ああ、呪詛師御用達の闇サイトで期限付き。明後日の御前11時までだそうだ」
夏油さんが監視に出していた呪霊が2体祓われたからだ。
私達4人はすぐさま駆け出した。
「悟は礼拝堂。和紗と黒井さんは音楽室。私は
夏油さんの言葉に頷き、私達は三手に分かれてそれぞれの場所に向かった。
私と黒井さんは音楽室まで駆けつける。
しかし、音楽室には誰の姿もなかった。
「ということは、礼拝堂に・・・」
と私が呟いていると、黒井さんは掃除用具のロッカーを開けて、モップブラシを取り出していた。
「黒井さん?」
私が不思議に思いながら呼びかけても、
「参りましょう」
とだけ言って、黒井さんは音楽室を駆け出して行った。
その目はすわっていて、さっきまでのどこかオロオロしていた黒井さんとは別人のようだ。
その変貌に戸惑いながらも、私は黒井さんの後に続いた。
「あれは・・・」
礼拝堂に向かう途中で、五条さんが理子ちゃんを連れて校舎の屋根を走って行くのが見えた。
おそらく、このまま高専へ向かうのだろう。
五条さんがいるなら、一安心だ。
私と黒井さんは立ち止まり、二人が遠ざかって行くのを見送った。
「黒井さん、私達も高専へ・・・」
と言いかけたところで、ハッと息を飲み込んだ。
五条さんと理子ちゃんを見送っていたのは私達だけじゃなかった。
不審な人影が、少し離れた場所にあった。
(『Q』?それとも『盤星教』の刺客?)
向こうはまだ私達に気づいていない、
私は息を潜めて、相手を窺った。
筋骨隆々の大きな体格に、頭から紙袋を被っている。
刺客じゃなくても、じゅうぶん怪しい。
そうして注意深く様子を窺っていたのに、
「盤星教の人でしょうか?」
黒井さんはモップブラシ片手に紙袋の男に近づいていく。
「『Q』の人達はもっと変な格好してますもんね」
これでもじゅうぶん変な格好だと思うけど・・・と思いつつ、
「く、黒井さん」
と慌てて止めた。
紙袋の男は小首を傾げつつ、
「素人か?殺る気なら黙って殺れよ」
と言った。
すると黒井さんは、私の制止を振り切って紙袋の男の方へ突進するように走り出した。
「遅・・・」
と紙袋の男は右拳を黒井さんに向かって降り下ろす。
が、右拳がとらえたのは黒井さんの顔面ではなく、モップブラシの柄の部分だった。
そのまま黒井さんは柄で紙袋男の腕を絡め取ると、
キンッ
モップの根元部分で急所を殴打した。
すると紙袋の男は「ゔっ」と唸り急所を押さえながら膝をついた。
「お嬢様から何も奪うな」
黒井さんは凄んで言った。
「殺すぞ」
その一連の流れを唖然として見ていたら、
「なんだ、強いじゃないですか」
背後から声がして、私は振り返った。
そこには、携帯電話片手に夏油さんが立っていた。
「傑君。
「ああ、やっつけたよ。問い詰めて情報も聞きだせた」
「情報・・・?」
「理子ちゃんは?」
「五条様と一緒に学校を出ました」
と言ったのは黒井さんだ。
「じゃあ私達も向かいましょう」
夏油さんは言った。
「少し面倒なことになっています」
「面倒なこと・・・」
何があったの、と尋ねようとしたその時。
「クックッ」
膝をついてへたり込んでいた紙袋の男が急に笑い出した。
「やっぱさっきのが300万か」
そして突如、
「!!」
ドプンッと溶けるようにその姿が消えた。
「式神?」
「いや、式神とは少し違う」
黒井さんの言葉にそう返しながら、夏油さんは電話で通話を始めた。
「悟」
相手は五条さんのようだ。
「
その言葉を聞いて、私と黒井さんは息を飲んだ。
そして、黒井さんは怒り心頭とばかりにギリギリとモップブラシの柄を握りしめた。
やや間があってから、夏油さんは言葉を続けた。
「ああ、呪詛師御用達の闇サイトで期限付き。明後日の御前11時までだそうだ」