第31話 懐玉ー壱ー
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「はい。ただ、意識が戻らなくて・・・」
それを聞いて、私はハッとした。
治療しなければ。
それだけで、私がここに来たことに意味がある。
「黒井さん、私達も行きましょう!」
「はい!」
そうして、私と黒井さんはエレベーターで階下へ向かった。
目的のフロアに到着し扉が開いた瞬間、
「ぃいやーーーーー!不敬ぞー!」
おさげ髪にセーラー服の女の子が、悟君と傑君に両手足を引っ張られ雑巾絞りにされていた。
「おっ、おやめ下さい!!」
すかさず黒井さんが止めにかかる。
すると、おさげ髪の女の子は安堵したように黒井さんの名前を呼んだ。
中学生だろうか。
思っていたよりも幼い。
「お嬢様、その方達は味方です」
と黒井さんが言った。
その黒井さんの隣にちょこんといる私の姿を見て、五条さんと夏油さんは眉をひそめた。
「和紗?」
「オマエ、どうしてここにいんだよ」
そう問われ私は、
「偶然通りかかって」
と誤魔化すように笑った。
しかし二人に通用するはずはなく、シラーッとした顔をしている。そして、
「そんなに俺と離れがたいのか。いやー、俺って罪づくりなオトコー」
「悟、そういう自意識過剰な発言は嫌われるよ」
とおちゃらけ始めた。
「ち、違うよ!」
私は言った。
「護衛が人相の悪い男子二人じゃ、いたいけな彼女が逆に不安になると思って・・・!」
「「あ?」」
しかし、そんな私の想像に反して、理子ちゃんはいたいけとは正反対の性格だった。
「いいか。天元様は妾で、妾は天元様なのだ!!」
理子ちゃんは誇らしげに語り始めた。
「同化により妾は天元様になるが、天元様もまた妾となる!!」
長い語りに五条さんも夏油さんは、
「待ち受け変えた?」
「井上和香」
途中から聞いていなかったけれど、私は感心していた。
同化は死ではない。
理子ちゃんは、はっきりとそう言い切った。
それを聞くまで、私は無意識に理子ちゃんのことを憐れんでいた。
そして、そんな自分が失礼なことに気づいた。
(本心はまた違うのかもしれないけれど・・・)
運命を受け入れる彼女の姿に、私は心を打たれた。
「はぁ!?」
携帯電話をかけながら、五条さんが不満げに声を上げる。
「さっさと高専戻った方が安全でしょ!!」
ここは、廉直女学院中等部。
理子ちゃんが通う学校だ。
あの後、学校に行くと言い張って聞かない理子ちゃんに渋々付き従うことになったのだ。
なので、夜蛾さんに高専への到着が少し遅れることを電話で報告しているのだが。
「ん」
と不機嫌な様子で、五条さんが私に携帯電話を押し付けた。
何だろうと思いつつ、私は電話に出た。
「も、もしもし?」
「和紗、オマエをこの任務に任命した覚えは無いんだがな」
夜蛾さんのドスの効いた声に、ヒッと肩をすくめる。
「すみません!」
「まぁ、いい。そのままオマエも天内理子の護衛にあたれ。オマエがいる方が、彼女の警戒心も緩むだろう」
「はい・・・」
「悟にも話したが、天内理子の要望には全て応えるようにするように」
「え、でも・・・」
「同化までには少し時間はある。高専にはそれまでに戻れば良い」
「・・・・・・」
その言葉の真意を考えるうちに、電話は切れた。
「チッ。ゆとり極まれりだな」
「そう言うな、悟」
夏油さんが苛立つ五条さんを諌める。
「ああは言っていたが、同化後、彼女は天元様として高専最下層で結界の基となる。友人、家族、大切な人達とはもう会えなくなるんだ」
それは、夜蛾さんの真意も同じなのだろう。
おそらくは、天元とも。
「好きにさせよう。それが私達の任務だ」
夏油さんが言い終わると、五条さんはもう文句を言わなかった。
「理子様に家族はおりません」
黒井さんが口を開いた。
「幼い頃事故で・・・それ以来、私がお世話して参りました。ですからせめて、ご友人とは少しでも」
そう言って頭を下げる黒井さんに、
「それじゃあアナタが家族だ」
と夏油さんが笑いかけた。
その言葉に黒井さんは、
「・・・はい」
噛み締めるように、頷いた。
それを聞いて、私はハッとした。
治療しなければ。
それだけで、私がここに来たことに意味がある。
「黒井さん、私達も行きましょう!」
「はい!」
そうして、私と黒井さんはエレベーターで階下へ向かった。
目的のフロアに到着し扉が開いた瞬間、
「ぃいやーーーーー!不敬ぞー!」
おさげ髪にセーラー服の女の子が、悟君と傑君に両手足を引っ張られ雑巾絞りにされていた。
「おっ、おやめ下さい!!」
すかさず黒井さんが止めにかかる。
すると、おさげ髪の女の子は安堵したように黒井さんの名前を呼んだ。
中学生だろうか。
思っていたよりも幼い。
「お嬢様、その方達は味方です」
と黒井さんが言った。
その黒井さんの隣にちょこんといる私の姿を見て、五条さんと夏油さんは眉をひそめた。
「和紗?」
「オマエ、どうしてここにいんだよ」
そう問われ私は、
「偶然通りかかって」
と誤魔化すように笑った。
しかし二人に通用するはずはなく、シラーッとした顔をしている。そして、
「そんなに俺と離れがたいのか。いやー、俺って罪づくりなオトコー」
「悟、そういう自意識過剰な発言は嫌われるよ」
とおちゃらけ始めた。
「ち、違うよ!」
私は言った。
「護衛が人相の悪い男子二人じゃ、いたいけな彼女が逆に不安になると思って・・・!」
「「あ?」」
しかし、そんな私の想像に反して、理子ちゃんはいたいけとは正反対の性格だった。
「いいか。天元様は妾で、妾は天元様なのだ!!」
理子ちゃんは誇らしげに語り始めた。
「同化により妾は天元様になるが、天元様もまた妾となる!!」
長い語りに五条さんも夏油さんは、
「待ち受け変えた?」
「井上和香」
途中から聞いていなかったけれど、私は感心していた。
同化は死ではない。
理子ちゃんは、はっきりとそう言い切った。
それを聞くまで、私は無意識に理子ちゃんのことを憐れんでいた。
そして、そんな自分が失礼なことに気づいた。
(本心はまた違うのかもしれないけれど・・・)
運命を受け入れる彼女の姿に、私は心を打たれた。
「はぁ!?」
携帯電話をかけながら、五条さんが不満げに声を上げる。
「さっさと高専戻った方が安全でしょ!!」
ここは、廉直女学院中等部。
理子ちゃんが通う学校だ。
あの後、学校に行くと言い張って聞かない理子ちゃんに渋々付き従うことになったのだ。
なので、夜蛾さんに高専への到着が少し遅れることを電話で報告しているのだが。
「ん」
と不機嫌な様子で、五条さんが私に携帯電話を押し付けた。
何だろうと思いつつ、私は電話に出た。
「も、もしもし?」
「和紗、オマエをこの任務に任命した覚えは無いんだがな」
夜蛾さんのドスの効いた声に、ヒッと肩をすくめる。
「すみません!」
「まぁ、いい。そのままオマエも天内理子の護衛にあたれ。オマエがいる方が、彼女の警戒心も緩むだろう」
「はい・・・」
「悟にも話したが、天内理子の要望には全て応えるようにするように」
「え、でも・・・」
「同化までには少し時間はある。高専にはそれまでに戻れば良い」
「・・・・・・」
その言葉の真意を考えるうちに、電話は切れた。
「チッ。ゆとり極まれりだな」
「そう言うな、悟」
夏油さんが苛立つ五条さんを諌める。
「ああは言っていたが、同化後、彼女は天元様として高専最下層で結界の基となる。友人、家族、大切な人達とはもう会えなくなるんだ」
それは、夜蛾さんの真意も同じなのだろう。
おそらくは、天元とも。
「好きにさせよう。それが私達の任務だ」
夏油さんが言い終わると、五条さんはもう文句を言わなかった。
「理子様に家族はおりません」
黒井さんが口を開いた。
「幼い頃事故で・・・それ以来、私がお世話して参りました。ですからせめて、ご友人とは少しでも」
そう言って頭を下げる黒井さんに、
「それじゃあアナタが家族だ」
と夏油さんが笑いかけた。
その言葉に黒井さんは、
「・・・はい」
噛み締めるように、頷いた。